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くらげ

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カワイクじゃんぷあっぷ4

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圭介さんのおうちで姫ロリに着替えた僕は電車を乗り継いで、ロリータファッションのブランド、ピーチメルバ・ドリーマーのショップに来た。
ここまでは予定通り。心配されたナンパにもあってない。

平日の昼下がり。
空いているお店で可愛いアイテムに囲まながら、ゆっくりにんじんリュックを購入するつもりだったのに。
僕がお店に入ったところで、まさかのサプライズ。

「いらっしゃいませ、お嬢様」

甘くハスキーな男の人の声。
このお店の店員さんは皆、ロリータの似合う可愛い女の子のはずなのに。
おかしいなと声のする方を見れば。
キラキラエフェクトを背負った(あまりの格好よさに本当にキラキラが見えたんだ)Roi君。

Roi君はファッション誌等で活躍しているモデルさん。
雑誌やSNSの写真でしか見たことがなかったけど。
ゴシックなスリーピースを着こなすRoi君はバンパイアの皇子様みたいに麗しい。
ってか本物はとっても神々しい!
公称185センチの見上げる程の長身は首疲れそうだけど、ずっと見ていたい!

金ボタンのベストに燕尾服風のジャケット。
ボリュームのあるバルーンショートパンツがペンギンの尻尾みたいなジャケットの裾を持ち上げて。
Roi君が動く度に揺れるその尻尾がカッコかわいい。
白いフリルブラウスの襟元には黒くて大きなビジューが輝くリボンタイ。
羽飾りのついたシルクハット。
膝丈のショートパンツにあわせたビクトリアン調の総柄タイツはモノトーンで甘さを抑えたデザイン。
幅広ベルトがカッコいいごつめの厚底ブーツにアッシュブロンドの髪。
何もかもが僕の理想の皇子様過ぎてツラい。

そんな理想の皇子様が! いま! 僕に! 微笑んでくれています!
爽やかな笑顔が眩しくて直視できません!
金色猫目のカラコンが世界で1番似合うのはRoi君だと僕は自信をもって言える!

「とっても可愛らしいお嬢様だったから説明もなく声かけちゃった。ビックリした? ごめんね」

Roi君が言っている“お嬢様”って僕のことだよね!?
いま、お店にいるお客さんは僕だけ。
うそ! どうしよう!

ビックリしすぎると人間って声も出ないんだね。
いまの僕は女の子になりきってるから下手に悲鳴をあげなくて良かったんだけど。

「大丈夫?」

黙ったままフリーズしている僕のことを心配してRoi君が優しく聞いてくれるけど。
背を屈めて顔を覗き込むのは駄目だよ。
そんな仕草、いまの僕には毒だから。
胸があり得ないぐらいドキドキ高鳴って苦しい。
大丈夫だと伝えたくて、ブンブン音がしそうな勢いで何度も頷いた。

「そんなに緊張しないで。可愛いウサギちゃん。今日は“ロリータ×ロリータ”っていう雑誌の企画で店員さんしにきただけ。ウサギちゃんがボクの最初のお客様だよ」

その季刊誌“ロリータ×ロリータ”は僕の教科書だ。
バックナンバーも手に入る全てを取り寄せたぐらいに愛読書。
Roi君のことを知ったのもこの雑誌で。
僕は作り物みたいに作り込まれた世界観のグラビアで、お人形のように美しいRoi君を見てから彼のファンなんだ。

「お嬢様はボクのこと、知ってる?」

もちろん存じ上げております! と言えない僕は何度も頷きながら、うっかり大好きのサインを手で作ってしまった。
中指と薬指を曲げたこのサインは英語で“I LOVE YOU”を意味するものなんだけど。
とっさに、いつもの癖でハンドサインしちゃったけど、どうしよう。
変な子だと思われちゃったかも。

「えっと……。その手ってアレだよね……。ラブ&ピースのやつ……」

僕の手の形を見ながら、首を傾げるRoi君もカッコいいよ。
サインの意味も合ってる。伝わってよかった。
真っ赤な顔して“I LOVE YOU”のサインを送る挙動不審な僕にもRoi君は優しい。
Roi君は本物の皇子様なんだ。
って、感動していたら。

「ボクもウサギちゃんのこと大好き」

Roi君も“I LOVE YOU”のサインをしてくれて。
さらに、さらにだよ。
立てている人差し指と小指を「チュッ」って言いながら僕の人差し指と小指にくっつけてきた。
指と指でキスの真似事なんて僕のキャパシティーは完全にオーバー。
頭のなかが芯まで茹で上がっちゃう。
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