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2章
お父さん
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「今、今今今今今今今今今今今今今今今今今今今今、すぐに迎えに行くから……だから、もう少し、もう少しだけ待っててね、お父さんっ。」
高橋美沙は不敵に高笑いをしながら六花をその元へと引き寄せていった。
「アンタの事情なんてものはこっちとしちゃあ何にも知らないが、そこをどいてもらうぜ。」
六花は下方に魔力の壁を展開する。
___強烈な衝撃波が地面を伝い、六花の周りの地面が捲れる。
しかし、その地面の一部は再生し始めていた……
「迎えに……」
狂ったかの様に高橋は六花を攻撃して来る。
「チィ……」
月光が次第に弱まり、六花の視界が暗くなっていく。
そう、実験場の天井が再生し始めていたのだ。
「アハ、あはははははははははははははははははははははははは……」
高橋のその甲高い不気味な笑い声が反響する。
___刹那、六花の周りにあった物が溶解し始める。
「お父さんっ……お父さんっ!」
少女の悲痛な叫び声が響き渡る。
___刹那、彼女は六花に対して魔力を飛ばす。
超速で飛んで来たソレはいとも容易く六花の腕を吹き飛ばした。否、その身を溶かした。
「お前が何に拘って、なんでこんな事をしているかは俺には分からない……」
六花の腕は再生していた。
「五月蝿いっ、五月蝿いっ……」
怯えた様に彼女はそう言ってその手で自身の顔を覆った。
「そして、俺は何も知らない……お前が誰にどうして会いたがっているのかも……」
___刹那、高説を説く六花の首が飛ぶ。
“『けどよ……その人と再会して、せめて恥じない様に生きろよっ!』”
深雪六花は高橋美沙の腕を掴んでいた。といっても、その手はドロドロと溶けていってしまうのだけれども、その手は握っていた。彼女の腕をしっかりと。
「お父……さん……?」
上擦った声で彼女はそう言って六花を見上げた。
「ああ、待たせて悪かったな……ミサ。」
六花は彼女を抱き寄せ、そして、彼女を自身の手によって刺し殺した。
「良かった……これでやっと……お母さんと……」
実験場の崩壊と共に、高橋美沙達の人生はそうして幕を閉じた。
「ああ、早く終わらせないとな……」
六花は頬を伝う涙の跡を拭く事は無く、そう小さな、小さな声でただ呟くばかりであった。
その手には溶解した魔力の塊が握られていた______
***
「くっ……」
二階堂凛奈と那須太一は今、猛烈に佳境に立っている途中であった。
「コロ……ス……。」
彼女達の周りには無数の黒装束達の姿があった。
___飛び交う魔力。ソレ等を弾く太一の一閃、そしてロジャーも雷鳴、凛奈の銃口。
全力をもってして彼女達はソレ等を迎撃していた。
「?!」
しかし、太一の動きが一瞬止まる。
「どうした……」
彼女達の周りにいる黒装束達はその動きを止め、次々と墜落していくのであった。
その光景はまるで、その時を長い間待ち望み、やっと解放された死刑囚の様なものであった。
ソレはどうしょうもなく遣る瀬無く、そして安堵の表情に満ち溢れた光景であった。
長い長い、高橋純也の懲役が今、深雪六花の手によって、最愛の娘の死と共に、儚く、そして……
「アリ……ガト……やっとみんなで、あの続きが……。」
どうしょうもなく、美しいものであった。
***
「もうおやめください、山本様。」
実験場を抜け、その先にある森の中で、グレートヒェンはそう言った。
「律儀にまだ様付けなんかしているのか……」
からかう様に山本はそう言った。
「いいか、俺達は腐ってもホムンクルス___道具でしか無いんだ。もしかしてお前、その事をまさか忘れたりしてはいないよな?」
道具___自身がソレである事は彼女自身が良く理解していた。
「お前は中心には立てない……いいか、だから俺達はただ忠実に命令を順守していれば良いんだよ。」
自身に悟す様に山本はそう言った。
「しかし、例えその物語の主役となれなかったとしても、私には誇りがあります。」
「そんなモノ、語るに及ばない。どうでも良い事だ。俺達はただ、言われた通りに人間様を不老不死にすれば良いんだよ。」
彼は吐き捨てる様にそう言った。それは、その姿はかつて彼の言葉に嫌悪を抱いていた彼女そのものであった。
「チャンスをやろう。今すぐ深雪六花を回収してこい。幸いアイツは お前の事を信用しているみたいだし、すんなりと事は進むだろ?」
確かに六花は彼女を信用していた。
「それに、アイツが高橋を殺ったんなら大人しく俺達に協力する筈だぜ。」
不敵に彼はそう笑った。
「そうですね……確かに、お客様ならば協力を惜しまない事でしょう……ですが、ソレは出来ません。私は誓ったのですから……道具としての誇りを忘れ無い、と。」
そう言って彼女は拳を構える。
「そうか……実に残念な事だよ。まさか実の妹を殺す事になるなんて……」
二人___一人と一体の拳がそうして交わった。
高橋美沙は不敵に高笑いをしながら六花をその元へと引き寄せていった。
「アンタの事情なんてものはこっちとしちゃあ何にも知らないが、そこをどいてもらうぜ。」
六花は下方に魔力の壁を展開する。
___強烈な衝撃波が地面を伝い、六花の周りの地面が捲れる。
しかし、その地面の一部は再生し始めていた……
「迎えに……」
狂ったかの様に高橋は六花を攻撃して来る。
「チィ……」
月光が次第に弱まり、六花の視界が暗くなっていく。
そう、実験場の天井が再生し始めていたのだ。
「アハ、あはははははははははははははははははははははははは……」
高橋のその甲高い不気味な笑い声が反響する。
___刹那、六花の周りにあった物が溶解し始める。
「お父さんっ……お父さんっ!」
少女の悲痛な叫び声が響き渡る。
___刹那、彼女は六花に対して魔力を飛ばす。
超速で飛んで来たソレはいとも容易く六花の腕を吹き飛ばした。否、その身を溶かした。
「お前が何に拘って、なんでこんな事をしているかは俺には分からない……」
六花の腕は再生していた。
「五月蝿いっ、五月蝿いっ……」
怯えた様に彼女はそう言ってその手で自身の顔を覆った。
「そして、俺は何も知らない……お前が誰にどうして会いたがっているのかも……」
___刹那、高説を説く六花の首が飛ぶ。
“『けどよ……その人と再会して、せめて恥じない様に生きろよっ!』”
深雪六花は高橋美沙の腕を掴んでいた。といっても、その手はドロドロと溶けていってしまうのだけれども、その手は握っていた。彼女の腕をしっかりと。
「お父……さん……?」
上擦った声で彼女はそう言って六花を見上げた。
「ああ、待たせて悪かったな……ミサ。」
六花は彼女を抱き寄せ、そして、彼女を自身の手によって刺し殺した。
「良かった……これでやっと……お母さんと……」
実験場の崩壊と共に、高橋美沙達の人生はそうして幕を閉じた。
「ああ、早く終わらせないとな……」
六花は頬を伝う涙の跡を拭く事は無く、そう小さな、小さな声でただ呟くばかりであった。
その手には溶解した魔力の塊が握られていた______
***
「くっ……」
二階堂凛奈と那須太一は今、猛烈に佳境に立っている途中であった。
「コロ……ス……。」
彼女達の周りには無数の黒装束達の姿があった。
___飛び交う魔力。ソレ等を弾く太一の一閃、そしてロジャーも雷鳴、凛奈の銃口。
全力をもってして彼女達はソレ等を迎撃していた。
「?!」
しかし、太一の動きが一瞬止まる。
「どうした……」
彼女達の周りにいる黒装束達はその動きを止め、次々と墜落していくのであった。
その光景はまるで、その時を長い間待ち望み、やっと解放された死刑囚の様なものであった。
ソレはどうしょうもなく遣る瀬無く、そして安堵の表情に満ち溢れた光景であった。
長い長い、高橋純也の懲役が今、深雪六花の手によって、最愛の娘の死と共に、儚く、そして……
「アリ……ガト……やっとみんなで、あの続きが……。」
どうしょうもなく、美しいものであった。
***
「もうおやめください、山本様。」
実験場を抜け、その先にある森の中で、グレートヒェンはそう言った。
「律儀にまだ様付けなんかしているのか……」
からかう様に山本はそう言った。
「いいか、俺達は腐ってもホムンクルス___道具でしか無いんだ。もしかしてお前、その事をまさか忘れたりしてはいないよな?」
道具___自身がソレである事は彼女自身が良く理解していた。
「お前は中心には立てない……いいか、だから俺達はただ忠実に命令を順守していれば良いんだよ。」
自身に悟す様に山本はそう言った。
「しかし、例えその物語の主役となれなかったとしても、私には誇りがあります。」
「そんなモノ、語るに及ばない。どうでも良い事だ。俺達はただ、言われた通りに人間様を不老不死にすれば良いんだよ。」
彼は吐き捨てる様にそう言った。それは、その姿はかつて彼の言葉に嫌悪を抱いていた彼女そのものであった。
「チャンスをやろう。今すぐ深雪六花を回収してこい。幸いアイツは お前の事を信用しているみたいだし、すんなりと事は進むだろ?」
確かに六花は彼女を信用していた。
「それに、アイツが高橋を殺ったんなら大人しく俺達に協力する筈だぜ。」
不敵に彼はそう笑った。
「そうですね……確かに、お客様ならば協力を惜しまない事でしょう……ですが、ソレは出来ません。私は誓ったのですから……道具としての誇りを忘れ無い、と。」
そう言って彼女は拳を構える。
「そうか……実に残念な事だよ。まさか実の妹を殺す事になるなんて……」
二人___一人と一体の拳がそうして交わった。
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