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2章
サイカイ
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「ここ、どこよ?」
戸惑いながら手を引かれやってきた二階堂凛奈は自身のことを連れ出した那須太一に対してそう言って自身の腹立ちをぶつけた。
「ただの空き工場だよ。」
「いきなり連れ出しといてなんで工場なのよ!」
「まあ、魔獣を召喚するわけだ。もし見つかったりしたら騒ぎになるかもしれないだろ?」
太一は子供をなだめるようにそう言った。
「で、どうやって召喚するの?」
「前も言ったように僕と深雪六花は似ているんだ。だから『傲慢』が現れたときと同じように僕がマナを集めれば良いのさ。」
“同じ”から“似ている”と言いなおす辺りの律儀さに凛奈は太一に好感を持てた。
「じゃあ、魔力のことは任せて良い訳ね。」
「ああ、任された。だから君は心起きなくハゲると良い!」
「だ~か~ら~、ハ・ゲ言うな~!!!」
凛奈の怒りが太一を襲う。
「ひ、ヒィー。分かった。もうハゲって言わないから。ごめん。ごめんなさーい。」
凛奈の攻撃はとどまることを知らない。終いには太一を押し倒し、首を絞めるほどになっていた。マウントを取っていたのである......
「ギブッ、もうギブだって。あ、ごめんなさい。本当すいません。もうお金ないです。」
はたからみると男女がからかいあっている微笑ましい状況......という訳でもなく、場所が廃工場であり、凛奈の怒りも相まってとてもアウトレイジしていた。ダン◯カン馬鹿やろぅ。
「はあ、はあ......なのであなた様はその麗しい髪を献上して頂ければ......その~幸いなのですが......」
「ああんっ!」
「ひっ!」
体を乗っ取られるという恐怖体験をけしかけてきた相手をここまで怯え上がらせるとは......凛奈__恐るべし。
「と、とにかく召喚の儀式を始めよう。深雪六花を早く助けたいだろ?」
「え、ええ。と、とにかく始めましょう。」
凛奈は太一の怯えかたを見て先程のダン◯カンプレイを流石に不味く思ったのか少し頰を染めて気恥ずかしそうにそう言った。ほんの少しだけであったが......
「じゃ、じゃあ......その......KAMIを......」
太一君、髪って言えてないよー。
「分かったわ。髪を......どれくらい差し出せばいいの?」
「それは現れてみないと分からないです。」
「ハア、まあ六花を助けるためだし......仕方ないわよね。」
「そう思ってもらうとこちらも助かります。」
落ち着きを取り戻した二人だが......太一君、さっきから敬語だよ?
「じゃああんた死ぬ気で頑張りなさい!」
頑張るとは?一体何を頑張れば良いのだろうか?太一が頑張れば凛奈はHAGEないのか......理不尽なコトだ。
「は、はい!」
教官の言うことは絶対である。例えカラスでも教官が白と言えば真っ黒でも白なのである。
「じゃあ、始めるね。」
太一がそう言うと場が異様な威圧感で支配される。それが先程の少年から発せられているとはにわかに信じがたい。
『__汝、力を欲するか__』
辺りが光に包まれる。
「『傲慢』っ!」
『すまない召喚者よ。力及ばず......大事ないようで良かった。』
命掛けで自分を守ってくれた「傲慢」との再会に思わず凛奈の目に涙が浮かぶ。
『ムシャ。ムシャ。』
凛奈の銀髪は首辺りまで無くなっていた。
「こっちこそごめんなさいね。貴方のこと、見捨てたように去ってしまって......」
確かに凛奈はあの時六花に手を引いて救ってもらったが、『傲慢』は取り残されたのである。何度も黒装束達に喰い破られながら彼は何を思ったのだろうか?その罪悪感は凛奈から離れていなかった。
『ああ、気にすることはない。あれは私の力不足だ。寧ろこちらが謝るべきことだ。』
「そう......じゃあ、有難うね!私を救ってくれて。」
彼が体を張って時間を稼いでくれたから今の凛奈がいるのだ。彼もまた、凛奈にとっては救世主であった。
「ところで、髪減ってるんですけど!」
凛奈は髪が減ったことに不満だったのだろうか隣の青年を睨みつけた。
「ご、ごめんなさいっ!」
太一は小さくなってそう言った。
「でもまあ、『傲慢』と再会させて貰えたみたいだし許して......」
太一の顔に光が灯る。
「やるか~!!!」
そう言って凛奈は太一に襲いかかる。
『ふふ。若いとは良いものだなマスターよ。その男はコレか?』
そう言って凛奈をからかう『傲慢』。
『しかし、デートにこのような廃工場を選びそのようなプレイに興じるとは......あまり火遊びをし過ぎない方が良い......』
「お前も一緒だァ!散々人の髪食いやがって!」
そう言って凛奈は「傲慢」にも飛びかかった。その姿は飼い主と戯れる大猫......というものとは程遠く、自分の倍はある怪物に怒りをぶつける飼い主の姿があった。まあ、といってもそれは微笑ましい美しいものだった。
「本当にっ、戻ってきてくれてありがとう......」
凛奈はそう言うと太一を放り投げて『傲慢』の純白の鬣を撫でた。
「そ、それで水をさすようで申し訳ないんだが、深雪六花を助ける為の今後の方針を話合おう。」
起き上がりながら那須太一はそう言った。
戸惑いながら手を引かれやってきた二階堂凛奈は自身のことを連れ出した那須太一に対してそう言って自身の腹立ちをぶつけた。
「ただの空き工場だよ。」
「いきなり連れ出しといてなんで工場なのよ!」
「まあ、魔獣を召喚するわけだ。もし見つかったりしたら騒ぎになるかもしれないだろ?」
太一は子供をなだめるようにそう言った。
「で、どうやって召喚するの?」
「前も言ったように僕と深雪六花は似ているんだ。だから『傲慢』が現れたときと同じように僕がマナを集めれば良いのさ。」
“同じ”から“似ている”と言いなおす辺りの律儀さに凛奈は太一に好感を持てた。
「じゃあ、魔力のことは任せて良い訳ね。」
「ああ、任された。だから君は心起きなくハゲると良い!」
「だ~か~ら~、ハ・ゲ言うな~!!!」
凛奈の怒りが太一を襲う。
「ひ、ヒィー。分かった。もうハゲって言わないから。ごめん。ごめんなさーい。」
凛奈の攻撃はとどまることを知らない。終いには太一を押し倒し、首を絞めるほどになっていた。マウントを取っていたのである......
「ギブッ、もうギブだって。あ、ごめんなさい。本当すいません。もうお金ないです。」
はたからみると男女がからかいあっている微笑ましい状況......という訳でもなく、場所が廃工場であり、凛奈の怒りも相まってとてもアウトレイジしていた。ダン◯カン馬鹿やろぅ。
「はあ、はあ......なのであなた様はその麗しい髪を献上して頂ければ......その~幸いなのですが......」
「ああんっ!」
「ひっ!」
体を乗っ取られるという恐怖体験をけしかけてきた相手をここまで怯え上がらせるとは......凛奈__恐るべし。
「と、とにかく召喚の儀式を始めよう。深雪六花を早く助けたいだろ?」
「え、ええ。と、とにかく始めましょう。」
凛奈は太一の怯えかたを見て先程のダン◯カンプレイを流石に不味く思ったのか少し頰を染めて気恥ずかしそうにそう言った。ほんの少しだけであったが......
「じゃ、じゃあ......その......KAMIを......」
太一君、髪って言えてないよー。
「分かったわ。髪を......どれくらい差し出せばいいの?」
「それは現れてみないと分からないです。」
「ハア、まあ六花を助けるためだし......仕方ないわよね。」
「そう思ってもらうとこちらも助かります。」
落ち着きを取り戻した二人だが......太一君、さっきから敬語だよ?
「じゃああんた死ぬ気で頑張りなさい!」
頑張るとは?一体何を頑張れば良いのだろうか?太一が頑張れば凛奈はHAGEないのか......理不尽なコトだ。
「は、はい!」
教官の言うことは絶対である。例えカラスでも教官が白と言えば真っ黒でも白なのである。
「じゃあ、始めるね。」
太一がそう言うと場が異様な威圧感で支配される。それが先程の少年から発せられているとはにわかに信じがたい。
『__汝、力を欲するか__』
辺りが光に包まれる。
「『傲慢』っ!」
『すまない召喚者よ。力及ばず......大事ないようで良かった。』
命掛けで自分を守ってくれた「傲慢」との再会に思わず凛奈の目に涙が浮かぶ。
『ムシャ。ムシャ。』
凛奈の銀髪は首辺りまで無くなっていた。
「こっちこそごめんなさいね。貴方のこと、見捨てたように去ってしまって......」
確かに凛奈はあの時六花に手を引いて救ってもらったが、『傲慢』は取り残されたのである。何度も黒装束達に喰い破られながら彼は何を思ったのだろうか?その罪悪感は凛奈から離れていなかった。
『ああ、気にすることはない。あれは私の力不足だ。寧ろこちらが謝るべきことだ。』
「そう......じゃあ、有難うね!私を救ってくれて。」
彼が体を張って時間を稼いでくれたから今の凛奈がいるのだ。彼もまた、凛奈にとっては救世主であった。
「ところで、髪減ってるんですけど!」
凛奈は髪が減ったことに不満だったのだろうか隣の青年を睨みつけた。
「ご、ごめんなさいっ!」
太一は小さくなってそう言った。
「でもまあ、『傲慢』と再会させて貰えたみたいだし許して......」
太一の顔に光が灯る。
「やるか~!!!」
そう言って凛奈は太一に襲いかかる。
『ふふ。若いとは良いものだなマスターよ。その男はコレか?』
そう言って凛奈をからかう『傲慢』。
『しかし、デートにこのような廃工場を選びそのようなプレイに興じるとは......あまり火遊びをし過ぎない方が良い......』
「お前も一緒だァ!散々人の髪食いやがって!」
そう言って凛奈は「傲慢」にも飛びかかった。その姿は飼い主と戯れる大猫......というものとは程遠く、自分の倍はある怪物に怒りをぶつける飼い主の姿があった。まあ、といってもそれは微笑ましい美しいものだった。
「本当にっ、戻ってきてくれてありがとう......」
凛奈はそう言うと太一を放り投げて『傲慢』の純白の鬣を撫でた。
「そ、それで水をさすようで申し訳ないんだが、深雪六花を助ける為の今後の方針を話合おう。」
起き上がりながら那須太一はそう言った。
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