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2章
プライド
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「媒体?」
「そうさ。『傲慢』が君の前に現れた時、何か君に求めた物があるだろ?」
「それって私の髪のこと......?」
「傲慢」はかつて凛奈の髪を食べていたことから凛奈を自身が丸坊主になった姿が襲う。
「いやいや、い~や~だ~。」
「?!どうした?」
ただでさえ昨日に食われたばかりである。毛先もボロボロだった。
「私、また髪短くなるの?」
「ああ、『傲慢』が求めたのは君の髪だったのか。納得できるね。古代から女性の髪の毛は魔力を蓄えやすいって聞くしね。」
と能天気なことを言う太一。
「あんたはいいわよね!」
「だ、大丈夫だよ。一回召喚してる筈だからそれ以上ハゲることはないと思うよ。」
「ハゲって言うな~!」
ちくりとすることを言う太一。確かに凛奈は髪こそ短くなったがハゲてはいない。そこは安心して欲しい!
「ごめん、ごめん。少しからかい過ぎたね。それじゃあ本題に入ろうか。」
場の空気が変わったことを感じて凛奈は身構える。
「それで、どうやって召喚するの?」
「それが大変でね。君はどうやって『傲慢』と出会ったの?」
「どうやってって言われても......」
凛奈は『傲慢』との出会いのときを思い出した。
「なんかいきなり現れたわよ?」
「そうか......」
太一はそう言って少し考え込むと、
「なるほど。そうか!『傲慢』は深雪六花の魔力に惹かれて召喚したのか!」
答えを見つけたようにそう言った。
「よし。早速準備に取り掛かろう。ついて来てくれ。」
「ちょ、ちょっと!どこに連れてくつもり?」
そう言って凛奈を喫茶店から連れ出した。
***
「実験って一体何をするんだ?」
「はい、お客様。まずは現在のお客様の状態を説明させていただきますね。」
グレートヒェンは六花に粒子のこと、六花が特殊体質であることを教えた。
「なるほど......俺はそのマナって言うのを変換させることが出来る特殊体質なのか。」
「はい、お客様。ですので私達はお客様のことを人ではない存在__“魔人”と位置づけます。」
「その位置づけは心外なんだが、おおよそ自分の状態は分かったよ。ありがとう。」
「アリ......ガト......?」
「ん?どうした?」
「いいえ、なんでもありませんお客様。ただ聞き慣れない単語を耳にしましたので。」
「お前......もしかして今まで誰かに感謝されたことがないっていうのか?」
「はい、お客様。物に感謝の言葉を伝える必要はないでしょう?」
まるで当然だ、と言わんばかりに彼女はそう言った。
「そんなのあんまり過ぎる......」
六花は彼女を取り巻くその環境に対して憤怒した。
「おや?今お客様の魔力が上昇しましたね。」
隣にあるバイタルのようなものを見て彼女はそういった。
「流石です、お客様。もう魔力の増幅の方法をマスターしたのですね。」
「そんなんじゃないだろっ!お前は......お前達は何でそんなに自分を大切にしないんだ!」
自身が死ぬことを恐れずに六花に向かって来た黒装束、自身がまだ一度も感謝されたことがなく、初めて感謝されたのにも関わらずそのことを気にもとめない目の前の一人の女性。
「理由は単純です。ネジが捨てられたくないからと言って壊れて事故が起きたら大変でしょう?私もそうなのですよ。」
「違うっ!お前は......お前は人間だ!ネジなんかじゃないっ!」
六花は憤怒した。彼女をこのようにした何者かに。自身が人間だと認めない彼女に。
「お客様がなんと言おうと私は物であり続けます。それは変えられないことなのですよ。もうお客様が人間ではなく、魔人であることと同じ様に。」
淡々と彼女はそう言った。
「それよりも話を先に進めましょう。時間がありませんよ。」
六花のなかで目の前の議論は大切なものだったが、凛奈の安全の方が大切であった。
「ああ分かったよ。俺もお前も人間じゃない......でも、誇りだけは持って行こうぜ。」
人に認められるために六花が行っていた努力__それは決して忘れてはいけない大切なことだった。
六花が助けようとした芽生はかけがえのないものだった。
生きることは皆、それぞれ全てが尊く、誇りを持っていいことなのだ。少なくとも六花はそう考える。
「それで話が進むのであれば、私は物であることを誇りに思いましょう。」
彼女はまたも自分を顧みない。だが、誇りを持てたのなら一歩幸せに近ずいたのかもしれない。
「ああ、そうしてくれ。」
六花は満足気にそう言った。
「お客様、魔力が下がっております。」
グレートヒェンは不満気にそう言った。
「そうさ。『傲慢』が君の前に現れた時、何か君に求めた物があるだろ?」
「それって私の髪のこと......?」
「傲慢」はかつて凛奈の髪を食べていたことから凛奈を自身が丸坊主になった姿が襲う。
「いやいや、い~や~だ~。」
「?!どうした?」
ただでさえ昨日に食われたばかりである。毛先もボロボロだった。
「私、また髪短くなるの?」
「ああ、『傲慢』が求めたのは君の髪だったのか。納得できるね。古代から女性の髪の毛は魔力を蓄えやすいって聞くしね。」
と能天気なことを言う太一。
「あんたはいいわよね!」
「だ、大丈夫だよ。一回召喚してる筈だからそれ以上ハゲることはないと思うよ。」
「ハゲって言うな~!」
ちくりとすることを言う太一。確かに凛奈は髪こそ短くなったがハゲてはいない。そこは安心して欲しい!
「ごめん、ごめん。少しからかい過ぎたね。それじゃあ本題に入ろうか。」
場の空気が変わったことを感じて凛奈は身構える。
「それで、どうやって召喚するの?」
「それが大変でね。君はどうやって『傲慢』と出会ったの?」
「どうやってって言われても......」
凛奈は『傲慢』との出会いのときを思い出した。
「なんかいきなり現れたわよ?」
「そうか......」
太一はそう言って少し考え込むと、
「なるほど。そうか!『傲慢』は深雪六花の魔力に惹かれて召喚したのか!」
答えを見つけたようにそう言った。
「よし。早速準備に取り掛かろう。ついて来てくれ。」
「ちょ、ちょっと!どこに連れてくつもり?」
そう言って凛奈を喫茶店から連れ出した。
***
「実験って一体何をするんだ?」
「はい、お客様。まずは現在のお客様の状態を説明させていただきますね。」
グレートヒェンは六花に粒子のこと、六花が特殊体質であることを教えた。
「なるほど......俺はそのマナって言うのを変換させることが出来る特殊体質なのか。」
「はい、お客様。ですので私達はお客様のことを人ではない存在__“魔人”と位置づけます。」
「その位置づけは心外なんだが、おおよそ自分の状態は分かったよ。ありがとう。」
「アリ......ガト......?」
「ん?どうした?」
「いいえ、なんでもありませんお客様。ただ聞き慣れない単語を耳にしましたので。」
「お前......もしかして今まで誰かに感謝されたことがないっていうのか?」
「はい、お客様。物に感謝の言葉を伝える必要はないでしょう?」
まるで当然だ、と言わんばかりに彼女はそう言った。
「そんなのあんまり過ぎる......」
六花は彼女を取り巻くその環境に対して憤怒した。
「おや?今お客様の魔力が上昇しましたね。」
隣にあるバイタルのようなものを見て彼女はそういった。
「流石です、お客様。もう魔力の増幅の方法をマスターしたのですね。」
「そんなんじゃないだろっ!お前は......お前達は何でそんなに自分を大切にしないんだ!」
自身が死ぬことを恐れずに六花に向かって来た黒装束、自身がまだ一度も感謝されたことがなく、初めて感謝されたのにも関わらずそのことを気にもとめない目の前の一人の女性。
「理由は単純です。ネジが捨てられたくないからと言って壊れて事故が起きたら大変でしょう?私もそうなのですよ。」
「違うっ!お前は......お前は人間だ!ネジなんかじゃないっ!」
六花は憤怒した。彼女をこのようにした何者かに。自身が人間だと認めない彼女に。
「お客様がなんと言おうと私は物であり続けます。それは変えられないことなのですよ。もうお客様が人間ではなく、魔人であることと同じ様に。」
淡々と彼女はそう言った。
「それよりも話を先に進めましょう。時間がありませんよ。」
六花のなかで目の前の議論は大切なものだったが、凛奈の安全の方が大切であった。
「ああ分かったよ。俺もお前も人間じゃない......でも、誇りだけは持って行こうぜ。」
人に認められるために六花が行っていた努力__それは決して忘れてはいけない大切なことだった。
六花が助けようとした芽生はかけがえのないものだった。
生きることは皆、それぞれ全てが尊く、誇りを持っていいことなのだ。少なくとも六花はそう考える。
「それで話が進むのであれば、私は物であることを誇りに思いましょう。」
彼女はまたも自分を顧みない。だが、誇りを持てたのなら一歩幸せに近ずいたのかもしれない。
「ああ、そうしてくれ。」
六花は満足気にそう言った。
「お客様、魔力が下がっております。」
グレートヒェンは不満気にそう言った。
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