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2章
取引
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「え、深雪君を知ってるの?」
二階堂凛奈は目の前の那須太一に向かってそう言った。
「ああ知っているよ。彼が昨晩何をしたかもね。」
「あんた山本の知り合い?」
「いや、違うよ。僕とあの人達を一緒にしないで欲しいな。」
「じゃあ、何で......」
「すまないけど君にそれは教えられない。ただ、僕は深雪六花を奴等から連れ出したいだけだよ。その点、君と僕とは利害が一致するんじゃない?」
「ふざけないで、こんな風に私を束縛して信用出来る訳ないじゃない。」
「じゃあ君は僕を信用しなければ良い。」
凛奈にとってこのまま信用せずに別れても良いことがない。凛奈一人であの無限に湧き出す黒装束や山本を相手にとって六花を助け出すことは不可能だった。目の前の少年は凛奈に決定権を渡すようにして、凛奈を脅しているのである。
「もっとも、ここで引き下がって平穏に戻っても良いんだよ。」
__凛奈が一位の世界。学校にはソレがあった。
「そんなこと、出来る訳ないじゃない。」
__恐怖に怯える凛奈の手を引いて助けてくれた六花。
あの時、凛奈の中で六花は“特別な存在となっていたのである。
「良い答えだ。もう解放しよう。」
__凛奈の体が軽くなる。
「話の続きをしても?」
「分かったわよ。あんたを利用してあげる。言っとくけど、あんたをまだ信用はしないからね。」
「ああ、それで良いよ。もっとも、僕は君を信用しているけどね。」
「拘束しといて何言ってんだか。」
「いいや、信用しているとも。だって君達は目的のためならなんだって出来るんだろ?
そう青年は蔑むように皮肉を込めて言った。
「おっと、僕の名前を教えていなかったね。僕の名前は那須太一。よろしく。」
太一がそう言って凛奈に手を伸ばす。
「君達が大好きな契約を結ぼう。深雪六花を奪取するという契約を。」
「分かったわ。しょうがないから結んであげる。というかあんたさっきから一体何なの?私のこと複数形で読んだり、どういうつもり?」
「君は何も知らないんだなあ。」
「逆にあんたは何か知ってるのよね?契約って言うんだから私に対価としてあんたの知ってること全部教えなさいよ。」
「君、何か勘違いしてないかい?本来君が頼む立場だろ?」
「あんたはさっき契約を結ぼうって言ったでしょ。じゃあ、あんたが言ってることの方がおかしいんじゃなくて?」
凛奈を六花を奪取するために使うならあのまま凛奈を拘束していれば良かった筈である。凛奈は太一のその矛盾を感じてそこにつけ込んだ。
「なかなか肝がすわってるね。じゃあ、深雪六花を無事奪取できたら教えてあげるよ。」
そう太一ははぐらかした。
「それで問題ないだろ?」
「いいえ、信用できないわ。今、ここで話なさい!」
凛奈はなおも引かない。
「まあ、どのみち少しは教えないと始まらないみたいだしね。良いよ。全てという訳にはいかないが必要最低限の知識は教えてあげようじゃないか。」
そう言う太一の言葉の後半部分には冷たい響きが籠っていた。
「良いわ。それで勘弁してあげる。その代わり、契約の見返りは後で別に貰うことにするわ。」
凛奈はそう言って、渋々納得した。といっても彼女にとって情報の入手と対価の約束を取り付けることが出来たので上々と言えた。
「じゃあ、君に『傲慢』を召喚して貰おうか。」
太一の口から黒装束から凛奈を守ろうとして奴等に食い千切られた『傲慢』の名が出た......
***
「賭け?」
高橋は六花にそう言って賭けを持ちかけた。六花を思いのままに出来る彼女にとって賭けを持ちかけるメリットが思い当たらず六花は疑問で眉を寄せた。
「もしあなたが今から行う実験に耐えられることが出来たらあなたを解放してあげる。」
信じられないような好条件に六花は唾を飲み込む。
「ただし、もしあなたが少しでも不自然な行動を起こしたら...あの娘、殺すわよ。」
六花に釘を刺すように彼女はそう言った。
「この賭け、する?」
六花にとって好条件過ぎるこの状況を逆に怪しく思い六花は決断出来ずにいた。ただ、六花がこの状況から抜け出すことは不可能っぽいので、釘を刺した条件は問題にならない。
「おっと、ごめ~ん言い忘れてたけどこの賭け時間制限があるから。」
「時間制限?」
「実験をするんだから結論は出来るだけ早く出した方が良いでしょう。それに正確な実験結果を取りたいじゃない。それで、この賭け受ける?まあ、あんたに選択肢はないんだけどね。」
嘲笑うかのようにそう高橋が言った。六花には彼女がどうしてこのような賭けを持ちかけたのか未だに分からないでいた。
「肯定ってことで良いのよね。」
しばらく考えていた六花に高橋はそう言って六花を拘束具から解放したのだった。
六花の体を久々の解放感が突き抜ける。
「じゃあ、情報収集頑張って。さっきも言ったようにくれぐれもおかしなことは考えないことね。」
そう言って高橋美沙は六花の元を去っていった。
二階堂凛奈は目の前の那須太一に向かってそう言った。
「ああ知っているよ。彼が昨晩何をしたかもね。」
「あんた山本の知り合い?」
「いや、違うよ。僕とあの人達を一緒にしないで欲しいな。」
「じゃあ、何で......」
「すまないけど君にそれは教えられない。ただ、僕は深雪六花を奴等から連れ出したいだけだよ。その点、君と僕とは利害が一致するんじゃない?」
「ふざけないで、こんな風に私を束縛して信用出来る訳ないじゃない。」
「じゃあ君は僕を信用しなければ良い。」
凛奈にとってこのまま信用せずに別れても良いことがない。凛奈一人であの無限に湧き出す黒装束や山本を相手にとって六花を助け出すことは不可能だった。目の前の少年は凛奈に決定権を渡すようにして、凛奈を脅しているのである。
「もっとも、ここで引き下がって平穏に戻っても良いんだよ。」
__凛奈が一位の世界。学校にはソレがあった。
「そんなこと、出来る訳ないじゃない。」
__恐怖に怯える凛奈の手を引いて助けてくれた六花。
あの時、凛奈の中で六花は“特別な存在となっていたのである。
「良い答えだ。もう解放しよう。」
__凛奈の体が軽くなる。
「話の続きをしても?」
「分かったわよ。あんたを利用してあげる。言っとくけど、あんたをまだ信用はしないからね。」
「ああ、それで良いよ。もっとも、僕は君を信用しているけどね。」
「拘束しといて何言ってんだか。」
「いいや、信用しているとも。だって君達は目的のためならなんだって出来るんだろ?
そう青年は蔑むように皮肉を込めて言った。
「おっと、僕の名前を教えていなかったね。僕の名前は那須太一。よろしく。」
太一がそう言って凛奈に手を伸ばす。
「君達が大好きな契約を結ぼう。深雪六花を奪取するという契約を。」
「分かったわ。しょうがないから結んであげる。というかあんたさっきから一体何なの?私のこと複数形で読んだり、どういうつもり?」
「君は何も知らないんだなあ。」
「逆にあんたは何か知ってるのよね?契約って言うんだから私に対価としてあんたの知ってること全部教えなさいよ。」
「君、何か勘違いしてないかい?本来君が頼む立場だろ?」
「あんたはさっき契約を結ぼうって言ったでしょ。じゃあ、あんたが言ってることの方がおかしいんじゃなくて?」
凛奈を六花を奪取するために使うならあのまま凛奈を拘束していれば良かった筈である。凛奈は太一のその矛盾を感じてそこにつけ込んだ。
「なかなか肝がすわってるね。じゃあ、深雪六花を無事奪取できたら教えてあげるよ。」
そう太一ははぐらかした。
「それで問題ないだろ?」
「いいえ、信用できないわ。今、ここで話なさい!」
凛奈はなおも引かない。
「まあ、どのみち少しは教えないと始まらないみたいだしね。良いよ。全てという訳にはいかないが必要最低限の知識は教えてあげようじゃないか。」
そう言う太一の言葉の後半部分には冷たい響きが籠っていた。
「良いわ。それで勘弁してあげる。その代わり、契約の見返りは後で別に貰うことにするわ。」
凛奈はそう言って、渋々納得した。といっても彼女にとって情報の入手と対価の約束を取り付けることが出来たので上々と言えた。
「じゃあ、君に『傲慢』を召喚して貰おうか。」
太一の口から黒装束から凛奈を守ろうとして奴等に食い千切られた『傲慢』の名が出た......
***
「賭け?」
高橋は六花にそう言って賭けを持ちかけた。六花を思いのままに出来る彼女にとって賭けを持ちかけるメリットが思い当たらず六花は疑問で眉を寄せた。
「もしあなたが今から行う実験に耐えられることが出来たらあなたを解放してあげる。」
信じられないような好条件に六花は唾を飲み込む。
「ただし、もしあなたが少しでも不自然な行動を起こしたら...あの娘、殺すわよ。」
六花に釘を刺すように彼女はそう言った。
「この賭け、する?」
六花にとって好条件過ぎるこの状況を逆に怪しく思い六花は決断出来ずにいた。ただ、六花がこの状況から抜け出すことは不可能っぽいので、釘を刺した条件は問題にならない。
「おっと、ごめ~ん言い忘れてたけどこの賭け時間制限があるから。」
「時間制限?」
「実験をするんだから結論は出来るだけ早く出した方が良いでしょう。それに正確な実験結果を取りたいじゃない。それで、この賭け受ける?まあ、あんたに選択肢はないんだけどね。」
嘲笑うかのようにそう高橋が言った。六花には彼女がどうしてこのような賭けを持ちかけたのか未だに分からないでいた。
「肯定ってことで良いのよね。」
しばらく考えていた六花に高橋はそう言って六花を拘束具から解放したのだった。
六花の体を久々の解放感が突き抜ける。
「じゃあ、情報収集頑張って。さっきも言ったようにくれぐれもおかしなことは考えないことね。」
そう言って高橋美沙は六花の元を去っていった。
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