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2章

キミのミカタ

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「あの、何かお困りですか?僕で良ければ助けましょうか?」

彼、那須太一なすたいちにとってその言葉はかけがえのないものだった......

「太一は今日何を食べたい?」

「お母さんの作ってくれるのならなんでも!」

「そう、ありがとうね!」

「その前にちょっと銀行に寄るね。」

__太一がまだ小学生だった頃、太一とその母親は銀行に行っていた。

「オラァ、金を出せ!」

その日、不運なことに太一は銀行強盗に出くわした。

「警察を呼ぶんじゃねぇぞ!」

男の野太い声が銀行に響き渡る。

すると、誰が呼んだのか警察のパトカーの音がした。

「クソォ、誰だ!警察呼びやがったのはっ!」

男は激昂しそう叫んだ。

「よし、そこのガキ俺についてこい。」

太一は男に人質として選ばれた。

「やめて下さい。この子だけはっ!」

太一の母親は泣きそうな声でそう男に叫び縋った。

「五月蝿ぇっ!離れやがれババア!」

「お願いします!あの子の代わりに私を__」

__バンッ。
一つの銃声と共に太一の母が倒れる。

「お母さん、お母さんっ!」

太一は彼の母親に駆け寄り泣き叫ぶ。

「良い気味だぜ。オラァ、こっちに来やがれこのクソガキがっ!」

男によって太一は彼の母親から引き剥がされる。
__嫌だ。
太一は次第に冷たくなって行く彼の母親を見ていることしか出来なかった。

「......太......一......」

「お母さんっ、お母さんっ!」

まだ意識があるようだ。誰か助けを......

「五月蝿ぇっ!」

__バンッ。
男が放った銃弾が太一の母親を襲う。
太一の母親はもう動かない。彼女は男の苛つきのはけ口として殺されたのだった。

「犯人は早く投降しなさい。」

警察の自首を求める声が聞こえてくる。しかし、太一の心はもうここにはなかった。

__憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い......

__何時間。何日経っただろうか?
太一は男と共に過ごした。

「ナァ、お前の母親面白かったよなァ?俺に泣きついて来やがって。」

__憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い......

「俺って優しいよなぁ。こうやってお前を生かしてやってんだから。」

男はそう言って、何度も。何度も何度も何度も何度も何度も、太一を嘲笑った。

__憎い。憎い憎い憎い......?!

『突撃っ!』

その声と共に太一は長い怒りの渦から目を覚まされた。

『大丈夫か?』

大量に押し寄せてきた武装した警官の一人が太一の元に駆け寄る。

『良かった。生きててくれて......』

その警官は安堵してそう言った。まるで自分が救われたかのように優しい声で、そう言った。

「太一、大丈夫かっ?」

会社から駆けつけたであろう。太一は彼の父の汗ばんだスーツに包まれ、泣き叫んでいた__

__那須太一は現在、高校二年生だ。彼は母親を亡くして後、あの警察官のようになるための一歩を進んでいた。
彼は母親を亡くしてしばらくのうちは塞ぎこんでしまった。しかし、そんな彼を前に押してくれたのはあの時の警官と彼の父だった。

__感謝しきれない。
赤の他人にここまで良くしてくれた警官と、男手ひとつでここまで育ててくれた父親に。

『あの、何かお困りですか?僕で良ければ助けましょうか?』

この言葉が表す通り太一は誠実で心優しい少年へと成長していた。

__ある日、太一の耳に不思議な声が聞こえた。最初は耳鳴りだけだった。しかし、そのは次第に大きくなり太一にこう言うのだった。

『__汝、世界を救え。そのために我が力、いざ貸さん。』

__そして、太一の前に使が現れた。

『我が名はミカエル__汝、世界を救え。』

“ミカエル”と名乗るソレはそう言った直後、太一の体を光で包み、それから後太一は様々なを行うことが出来た。

__怪我を治す、治癒の奇跡。
太一は怪我を触れるだけで治すことが出来た。

「あれ、おかしいなぁ?こっちで合ってる筈なのに......」

一人のサラリーマンが道に迷
__人の行動を操れる奇跡。
太一は人を一日に一人だけ操れた。

__バンッ。
圧倒的な破壊。太一は天使からある道具をもらっていた。
それは太一以外には見えないらしく、太一から見て紅蓮の焔に包まれた銃や剣のようなものであった。その道具の威力は凄まじく、コンクリートなど容易く崩壊させるようなものであった。

『__今日、銀行で立て篭もり事件が発生しました。』

ニュースでそのような報道が流れる。

「今の俺なら......」

“救える”かもしれない。その正義感が太一を突き動かす。

__太一は動物に憑依するという奇跡を使えた。
わしに憑依した太一はその銀行へ向かう。

「見つけた。」

太一は銀行に立て籠もっている犯人めがけて飛んでいった。

「な、何だ?!」

犯人は突如現れた鷲にうろたえる。

『突撃っ!』

犯人に隙が出来たことで武装した警官が突入してくる。

『先程の銀行立て篭もり事件ですが、突然現れた鷲によって犯人......』

太一は帰って来てその報道を見てたまらない達成感に包まれた。

「やった......僕、救えた。」

あの時太一は自分の母親を救えなかった。そのことが少なからず太一に罪悪感を与えていたのである。その罪悪感が人を救えたことで拭われた気がした。

「出来る。僕でも出来るんだ......」

それからというもの太一は動物に憑依して犯罪を止めて回った。

__“奇跡の鷲”現る。
そう言った報道が次第に増えた。

「今日はもう少し救える。」

__ありがとうございます。
そう太一に言う人々を見て太一は幸福を覚えた。
太一は人を救う度に達成感を覚えた。そして自分にこの素晴らしい力を与えた“ミカエル”というモノに感謝していた。
太一がその与えられた力に慣れ始め、享受していたある日、

『__汝、人類を導け。』

かつて太一に素晴らしい力を与えたソレが言うには“都立十六夜高校”に行けと言うことだった。
そしてそこで“二階堂凛奈”と言う生徒と接触しろというものだった。

「でも、どうしてですか?」

『__汝、滅ぼせ。人類の敵である“サタン”__を。』

ソレはそう言った。
__人類の敵。
その言葉が太一を動かしていた。

「__深雪六花のことなら僕、知ってるよ。」
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