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第五章 竜族との戦い
第205話 在りし日の記憶2 レシアルドside
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「…何で今更僕を気に掛ける。いつも通り放浪すれば良いじゃないか」
「暫くあてもない放浪は辞める事にした。この旅が終点に着いたら、ここで生活を始めるだろう。少なくとも400年は」
「それは何だ?僕と今更親子関係を修復したいとでも言うのか?」
レシアルドは少し逡巡する。目を閉じ、数秒の間を開けた後に言葉を続ける。
「勿論、そうだ。我…いや、私もお主を蔑ろにし過ぎてしまった。お主が望むならこの身体を幾ら壊してくれても構わない。私の力が欲しいと言うなら差し出そう。だから何とか…ライクルツ、お主ともう一度『家族』をしたい」
心からの謝罪と、関係の修復を望む彼に言葉に何を見たか、ライクルツはほんの少し眉間の皺を解き応じる。
「お前に『家族』を名乗られるのは気分の良い物ではない…それに、本気でそう考えているのなら何故今すぐ実践しようとしない?」
「それは…今のこの旅が数奇に満ちた物であるからだ。詳しい事情は今は話せないが。この最後の旅は、どれだけ長くてもこの先50年の間に終わるだろう」
ライクルツはこの言葉に嘘がないと悟った。50年と言う数字から、レシアルド自身の話では無く一緒に居た人間の話をしていると考えたからだ。レシアルドは自身の胸元に入れた相手を優先的に考える傾向がある事を彼は知っていたのだ。
だからこそ、それに入れさせて貰えなかったレシアルドに怒りを抱いていた。
「せめて、僕の受けた傷と同じ業を受けてもらわないと釣り合いが取れない。同族に笑われ、自由奔放な親と常に比べられた僕の辛さを」
「…それについては、私も同族に聞いてきた。その結果は…皆お主の事を笑っていたのでは無く、親が居なくても常に楽しそうな表情を浮かべ側仕えと関わるお主を穏やかに見守っていただけだと、そう言っていたよ。敵も味方も皆そう答えた。『神王竜様とよく似ていますね。何があってもへこたれない所とか、そっくりです』…そう言った竜もいたよ」
それを聞いて、ライクルツは大きく目を見開いた。まさか自分の記憶とまったく異なる話を突如され、頭が追い付けていないのだ。
「そんな…まさか、嘘だ!だって、アイツらは…!」
「心の読める頼もしい仲間が居てな、その者も嘘は無いと保証していたよ…間違いない」
彼の中で、バリエドの呪いとも言える能力、自身の勘違い、そしてレシアルドへの確固たる怒り。それらが絡み合って作っていた偽りの記憶が、次々と崩れ去って行く。
(「ライクルツ様、何をお読みで?」)
(「お父様からの書面だ。旅の記録が細かに記されていて、読んでいて楽しいよ」)
(「そうですか。それはよろしゅうございます。お返事は書かれるので?」)
(「おやライクルツ様、どうなされました?」)
(「今度お父様が帰ってくるんだ。盛大に迎えて驚かせたいから、上等な食事を用意しておいてくれるかい?」)
(「勿論、ライクルツ様の御言葉とあれば否の言葉は有りませぬ。間違い無く成功させて見せましょう!」)
(「お父様!!お帰りなさい!」)
(「ライクルツ、また一段と成長したな。先の催しは驚いた。お主が図ったのか?」)
(「はい!」)
(「何と良い子よ。今晩は旅の記録を語り尽くしてあげよう。我が旅路はきっと気にいるぞ」)
「暫くあてもない放浪は辞める事にした。この旅が終点に着いたら、ここで生活を始めるだろう。少なくとも400年は」
「それは何だ?僕と今更親子関係を修復したいとでも言うのか?」
レシアルドは少し逡巡する。目を閉じ、数秒の間を開けた後に言葉を続ける。
「勿論、そうだ。我…いや、私もお主を蔑ろにし過ぎてしまった。お主が望むならこの身体を幾ら壊してくれても構わない。私の力が欲しいと言うなら差し出そう。だから何とか…ライクルツ、お主ともう一度『家族』をしたい」
心からの謝罪と、関係の修復を望む彼に言葉に何を見たか、ライクルツはほんの少し眉間の皺を解き応じる。
「お前に『家族』を名乗られるのは気分の良い物ではない…それに、本気でそう考えているのなら何故今すぐ実践しようとしない?」
「それは…今のこの旅が数奇に満ちた物であるからだ。詳しい事情は今は話せないが。この最後の旅は、どれだけ長くてもこの先50年の間に終わるだろう」
ライクルツはこの言葉に嘘がないと悟った。50年と言う数字から、レシアルド自身の話では無く一緒に居た人間の話をしていると考えたからだ。レシアルドは自身の胸元に入れた相手を優先的に考える傾向がある事を彼は知っていたのだ。
だからこそ、それに入れさせて貰えなかったレシアルドに怒りを抱いていた。
「せめて、僕の受けた傷と同じ業を受けてもらわないと釣り合いが取れない。同族に笑われ、自由奔放な親と常に比べられた僕の辛さを」
「…それについては、私も同族に聞いてきた。その結果は…皆お主の事を笑っていたのでは無く、親が居なくても常に楽しそうな表情を浮かべ側仕えと関わるお主を穏やかに見守っていただけだと、そう言っていたよ。敵も味方も皆そう答えた。『神王竜様とよく似ていますね。何があってもへこたれない所とか、そっくりです』…そう言った竜もいたよ」
それを聞いて、ライクルツは大きく目を見開いた。まさか自分の記憶とまったく異なる話を突如され、頭が追い付けていないのだ。
「そんな…まさか、嘘だ!だって、アイツらは…!」
「心の読める頼もしい仲間が居てな、その者も嘘は無いと保証していたよ…間違いない」
彼の中で、バリエドの呪いとも言える能力、自身の勘違い、そしてレシアルドへの確固たる怒り。それらが絡み合って作っていた偽りの記憶が、次々と崩れ去って行く。
(「ライクルツ様、何をお読みで?」)
(「お父様からの書面だ。旅の記録が細かに記されていて、読んでいて楽しいよ」)
(「そうですか。それはよろしゅうございます。お返事は書かれるので?」)
(「おやライクルツ様、どうなされました?」)
(「今度お父様が帰ってくるんだ。盛大に迎えて驚かせたいから、上等な食事を用意しておいてくれるかい?」)
(「勿論、ライクルツ様の御言葉とあれば否の言葉は有りませぬ。間違い無く成功させて見せましょう!」)
(「お父様!!お帰りなさい!」)
(「ライクルツ、また一段と成長したな。先の催しは驚いた。お主が図ったのか?」)
(「はい!」)
(「何と良い子よ。今晩は旅の記録を語り尽くしてあげよう。我が旅路はきっと気にいるぞ」)
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