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第五章 竜族との戦い

第194話 ファイナルラウンド

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刹那の時間で人数分の足場を確保した俺は先制攻撃を仕掛けようと魔力を滾らせる。だが、早速バリエドがそれより早く魔法を行使したことで阻まれた。

冗談みたいな行使速度と威力と速さで放たれた魔法…というより魔力の奔流により一瞬にして陣形を崩され、俺は無意識のうちに歯噛みする。こんなデタラメな威力の魔法を息を吐くように連発してくるとなれば、それこそ負けるのなんて時間の問題……

「みんな、騙されないで!下手に思い込むと一瞬で認識阻害に引っ掛かる!!」

セドリックの叫びに俺たちはハッとする。そうだ、これですら嘘か本当なのか、目の前の光景を鵜吞みにしてはいけないのだから。

「ちぃ、調子狂うわね!!」

急接近して一撃を入れたメレットはそう言って舌打ちする。メレットはもう既に奥の手である時空破壊の攻撃を持ち出してきており渾身の一撃を入れたにもかかわらずその鱗が割れてすらいないのだから、こういう反応をするのも仕方がない気もするが。

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俺の放った攻撃をセドリックが無数のエネルギーで倍加し、一直線にバリエドにぶつける。

「今だ、ブレア!!」
「了解!永遠イタニティ!!」

更にブレアが魔力自体を保持キープして魔力の霧散を無くし、長時間攻撃を与え続ける。

《邪魔だ》

バリエドがそう一言言い、先ほどより強い魔力を放出したことで俺たちの攻撃を何事もないように消す。しかし、俺たちが稼いだ時間で魔力を凝縮したマセイタ、ハルス、レシアルド、ウィナが全力の魔力塊をぶつける。

《ぐうう…》

世界最上位種達の遠慮無しの攻撃を叩き付けられたバリエドは苦しげな声を上げる。俺たちも体勢を整えた後直ぐに攻撃に転じ、少しでも駄目押しをしようと試みる。

(行ける!!)

俺がそう思った瞬間、甘いとばかりにそれを打ち消す言葉が響く。

《笑止…千万ッ!!》

無限とも言える魔力とそれらが形成する混沌とした概念としての力に巻かれていたバリエドの気配が突如として消失したかと思うと、丁度マセイタの背後にバリエドが出現する。

《ああっ!!??》

攻撃状態を即座に解除して防御に瞬間的に魔力を回したマセイタは、正面からバリエドの攻撃を受ける。爪による引っ掻きを受けたマセイタは身体を大きく裂かれ、切り口から血飛沫を噴き出させる。
アッチの攻撃は一撃でこうも酷い致命傷になるって言うのに、コッチの攻撃は見当違いの場所に暴投し放題。クソ、どうする?余裕の無い戦闘中に掛かっているのか掛かっていないのかすら分からない認識阻害に対処するなんて無理ゲーが過ぎる。そもそもどうやって対処するんだ?

自身が洗脳されている事に気付きすらしないと言う状況。似た様な状況なら漫画で読んだことがあるが…

対処したことが無いから解りやしないって言うのが問題過ぎる。現状抜け穴の一つを見つけるのも果てしない苦労がいるだろう。

「アラン、引っ掛かってない!?大丈夫!?」

セドリックの一言で俺の記憶が復活する。ああ危ない、もう既に認識阻害を掛けられてしまっていた!俺は大きく舌打ちをして多分バリエドがいる場所に隠す気も無い殺気を叩きつける。

その時、レシアルドがこの状況を打開する可能性がある案を出した(様な気がする)。

《一度待ってくれ、主!我に策がある!》

それだけ言ってレシアルドは黙り込む。目くばせから意思を察した俺たちは、念話を共有しそれを即座に全員に伝達する。

「了解!」
「分かった!!」
「分かったわ」
「任せろ」
《お任せください、神王竜様》
《解りました》

バリエドが何をする気かと静観している間に、俺たちは全員でレシアルドを守るように取り囲む。その途端、自身にかけられた認識阻害が解かれた。

(解除に策時間が無いって言うなら、十分な時間がある奴を一人作ればいい。単純な話だ!!)

認識阻害が解かれたせいで、バリエドの幻影が消え本体がさらけ出された。本体を目で捉えられたバリエドは何をしたかを察し、高笑いする。

《ハハハ、面白い!!何という他力本願な対処策だよ!笑いしか出てこねぇ!》

そう言ってレシアルドに向かってブレスを放ち、飛翔を開始したバリエドを見据え、俺は飛び出した。
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