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第五章 竜族との戦い

第191話 擦れ違い セドリックside

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動揺した声でそう言ったレシアルドの瞳は、まるで意味が理解出来ないと語っていた。僕は今ある情報を一度洗い、今ここで何が起こっているのかを検討し直す。

(期待、肩入れ無しで単純に考えてレシアルドがライクルツに何かしらの危害を加えたと考えるのが自然だけど…レシアルドには丸で覚えていると言う風がない。物忘れ?他の追随を許さない程長寿の竜種に限って、そこまで印象に残る事をそう簡単に忘れるかな?それにもしそうなら恐らく側近の方々がこうも尊敬して慕っているのに疑問が残るし…)

僕はこの瞬間にも来る1500と少しの攻撃の軌道を逸らして、上空から無数の槍を落とす。着弾と同時に超質量の槍は地面を接触だけで割り、同時に爆発四散した。

(もしくはライクルツの被害妄想が異常?それはそれでここまで兵備を用意して綻びの一つも出ていないのもおかしいなぁ。仮にも元王を倒そうとしているのに…)

レシアルドが悪政を敷いていたと言う事も考え難い。となると…

(ライクルツ、及びその他竜種に何かしらの認識阻害を掛けた?)

フッと頭の中に浮かんだ考えに僕は思わず苦笑いを零した。

(無い無い。一体誰が、何の為に?仮にレシアルドの力を奪う前に掛けたとしても、相手は竜種の最高峰。加えて都市中の竜種に掛けて回るなんてそれこそ無茶苦茶だし)

可能性としては限り無く低いが、一応案として浮かんだ以上考えに留めて置いた方が良いと判断した僕は再び戦闘に集中する。

古竜、翼竜、脚竜、飛竜、亜竜の全ての長所を兼ね備えた肢体から放たれる一撃は一才の容赦無しに僕の体を抉る。僕にとっては一回の被弾で体勢を崩される位には強力な一撃だ。余りの質量がゆえに攻撃いなしの魔法も意味を成さない。因みに、これだけの攻撃を受けたお陰で僕の剣は斬る機能をほぼほぼ失っている。もはや細長い盾である。

『何を、言っている!ライクルツ!?』

レシアルドが言う。

…話が食い違っている。本当に何なのだろうか。鑑定ジャッジには何も引っ掛かってない。過去に何があったんだろう?

『お前が虐げられていたと言う話も聞いていないし、周りの笑い物にしていたと言う話も誤解だ!』
『いつもほったらかしにしていたから偶に帰った時だけでも甘えてさせてくれと言ったのはお前だろう、忘れたのか?』

埒が開かない。その結論を纏めたのと、レシアルドが言葉を放ったのは同時だった。

「最悪の場合も考えなくちゃな…」

僕は呟く。そのまま次の攻撃を回避し、星々を凝縮した超高密度物体を出現させ、そこにライクルツの攻撃を吸い込ませようとする。

その時、不意に僕に対する攻撃が止んだ。ついさっきまでライクルツの姿を認識出来ないほどに織り込まれた殺意の塊が一斉に止んだことに、僕の自身に対する警戒値は高ぶりを見せる。しかし、次の瞬間目に飛び込んで来た膨大な魔力の塊に目を見開いた。

口を大きく開け、ブレスの構えを取ったライクルツは6属性とその他の現象全てを内包する…僕であっても直撃を貰えば命が危うい程の魔力を放出しようとしていた。

確かに、ライクルツは今の今まで純粋なブレスを一回も使っていない。全てはこの一撃で僕達を滅する為だったんだ!

「マズい!!」

僕は常時展開の障壁に加え即時展開の障壁を加え、神としての権能を今使える限りで全開放し、ライクルツとの間に無数の空間と物体を押し込み、これに備える。




永遠、有れヒューチャー・キーパー
謎だらけの黒き砲ミステリー・キャノン
破壊者の一墜ブレイクワンタッチ!!」

ドゴバアアアアアアンン!!

聞き慣れたその声と共に、ライクルツの左右と上から、この場に居る誰のものでも無い攻撃が加わる。それにより溜めに溜め続けたライクルツの魔力はその場で爆ぜ、全方向に拡散し竜都市の建物と外にいた竜を独楽こまの様に吹き飛ばした。

重力に逆らって浮き続ける地面をタッ、タッと踏みしめながら、粉塵の中の彼ら彼女らは声を発した。

「全く…親にどう言う教育を受けたかは知らないけど、相手の話はちゃんと聞かないと」

空中を闊歩して若干呆れた様にその男は言う。

「間違い無いね。セドリック、レシアルド。遅れてごめん」

若干申し訳無さそうに、頭を掻いてその男は言う。

「あ~あ。ようやっっと御対面よ?早くしないと私の腕がイカれてしまうわ」

身の丈の2倍はあろう武器を軽々と振り回してその女は言う。僕は小さく微笑み、それを迎えた。

「お疲れ、ブレア、アラン、メレット。早速だけど、もう一度疲れてもらうよ?」
「おう。言うに及ばないよ」

体勢を整えたライクルツと対峙する。

「んじゃま、全員揃った所で…行こうか!」
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