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第五章 竜族との戦い
第188話 瓦解 三人称視点
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「ふんぬ!」
《ひぐう!!》
メレットの一撃がハルスの腑に直撃する。想定外の存在である古天鳥ウィナの登場により戦意を削がれたか、声の一つ一つに力が無かった。亜竜根源種と言う至高の存在であるハルスの現時点の思考はと言えば…
(何で、こうなっちゃうのかなぁ!?)
などど、自身の不遇さを嘆きつつ絶望も入り混じった気持ちを抱いていた。
結論から言うと、ハルスは神王竜封印に全くと言っていい程関与していない。強いて言うならば残りの三尾竜で脚竜の根源種であるヴァズオルと一緒で静観を貫いたと言う位だ。マセイタやデルガなど封印事件に全力で対抗した竜達とも元は良好な関係を保っていた。
と言うより、封印事件において最も活発に動いたのはライクルツとバリエド、ベルオムリである。他の竜達は彼らと敵対するか、下に着くかを半ば強制的に迫られ、7割方の竜たちは後者を選んだ。何故なら、敵対する事は即ち神王竜を超える素質とそれに見合った力を持った最強の竜と普通の竜からして届く筈の無い格上の竜を相手にする必要があるからである。
初めはハルスもヴァズオルと同じく『どちらかと言うと神王竜側の中立』の立場だったのだが、ライクルツの止まるところを知らない力の上昇により自身の身を案じたハルスは体裁上ライクルツ側に付いたのだ。
つまるところ、ハルスにとってこの戦いは大変不本意なものなのである。
(神王竜の力と衝突を避ける為に入ったのに…何で古天鳥と戦う羽目にい~~!)
かと言って、この話をした所でメレットがどこまで話を聞くかと言う懸念もあった。メレット視点からすれば、さっきから戦意を削がれまくっているハルスに対し『やる気が無いなら一気に決着付けるわ』としか考えていないからハルスの推測は外れていないのも問題なのだが。
「ほらほらどうしたの?最初の余裕はどこ行っちゃったのさ?」
「メレット…言い方…」
珍しく怒ったウィナも今は元の調子に戻り、背中に乗るメレットに声を掛ける。彼女は主人より冷静にハルスが抱いている感情を僅かな攻撃の乱れや口使い、呼吸、瞬きの数などから割り出しており、とうの昔に勝敗が決まっている事を察していた。しかし、彼女の性格故に主人に内緒にすべきかどうかで悩んでいる。
「早くこっから出ないとセドリック君達が困っちゃうから…時間掛けれないのだけど?ねえアンタ、さっさと諦めた方が良いと思うわよ?」
先程の発言ついでに空間を槌で叩いて崩壊寸前まで弱めた彼女は破壊を球状に収束させる。彼女自身の闇属性と合わさり引力を持ったそれは周りの空間ごと大規模な破壊を起こす。
「崩れの誘引」
《うっ…やあっ!》
6枚の翼をはためかせ回避しつつ不安定になった空間をその場で補強した彼はこれ以上伸ばしても自身に待ち構えるのは死だけであると悟り、文字通り命懸けで会話を試みる。反撃という選択肢が存在しないのは言うまでも無い。
(まかり間違っても攻撃なんて出来ないよ!古天鳥に何されるか…)
彼からしたらメレット1人だけなら大した弊害になり得無く、『攻撃を封じつつじっくり取引する』『その場で命令に従って滅する』位幾らでも選択できたのだが…
《ま、参った!参ったから一度攻撃を辞めてぇぇぇ!!》
…結果的にこんな情けない叫びを上げるハメになったのだ。
ようやくメレットはハルスの精神状態が異常である事を勘付いたが、良い意味でも悪い意味でも搦め手の可能性を考え無い彼女の判断はこうである。
異常な状態
↓
隙が大きい
↓
攻撃チャンス
↓
よし、攻撃!
メレットは戦闘狂と称して問題ない凶悪な笑みを浮かべ、着地していた小惑星を粉砕しつつ蹴った反動で飛び出す。
「問答無用ゥゥ!」
《聞いてない!!》
ウィナの置いて単身突っ込んできたメレットに対しハルスは攻撃を弾き続ける。先述の通り、幾らビビり散らかしている竜であっても人間1人の攻撃をいなす位ならどうと言うことは無かった。
…反撃する勇気が起きないのは言うに及ばない。
と、そこにハルスの最大の恐怖の相手であるウィナが動く。
「そこまで…」
コツン!
翼の骨の部分で軽くメレットの頭を叩いたウィナは意を決した様にそう言った。
「メレット…一度攻撃…ダメ」
想定外の攻撃(?)を入れられたメレットは目をパチクリさせてウィナを見る。因みに、この間にもハルスに向ける意識は切らさない。ウィナの上に乗っかったメレットは武器をハルスに向ける。
「ハルス…話…したいって。聞いて…あげて?」
「…ん?」
メレットはまるで言っている意味が分からないと言う風に頭の上に特大の疑問符を作る。
「ええと…話?」
未だ武器を突き付けつつそう言うメレットにハルスは猛烈に首を上下に振る。
《こ、降参です!一度話をさせて下さいぃぃ!》
ウィナに視線を向けられたハルスはいっその事同情を引く程可哀想に縮み上がる。
「んと…話…ね」
ウィナはそう言って念の為距離を取りつつ、目線で続きを促した。
《ひぐう!!》
メレットの一撃がハルスの腑に直撃する。想定外の存在である古天鳥ウィナの登場により戦意を削がれたか、声の一つ一つに力が無かった。亜竜根源種と言う至高の存在であるハルスの現時点の思考はと言えば…
(何で、こうなっちゃうのかなぁ!?)
などど、自身の不遇さを嘆きつつ絶望も入り混じった気持ちを抱いていた。
結論から言うと、ハルスは神王竜封印に全くと言っていい程関与していない。強いて言うならば残りの三尾竜で脚竜の根源種であるヴァズオルと一緒で静観を貫いたと言う位だ。マセイタやデルガなど封印事件に全力で対抗した竜達とも元は良好な関係を保っていた。
と言うより、封印事件において最も活発に動いたのはライクルツとバリエド、ベルオムリである。他の竜達は彼らと敵対するか、下に着くかを半ば強制的に迫られ、7割方の竜たちは後者を選んだ。何故なら、敵対する事は即ち神王竜を超える素質とそれに見合った力を持った最強の竜と普通の竜からして届く筈の無い格上の竜を相手にする必要があるからである。
初めはハルスもヴァズオルと同じく『どちらかと言うと神王竜側の中立』の立場だったのだが、ライクルツの止まるところを知らない力の上昇により自身の身を案じたハルスは体裁上ライクルツ側に付いたのだ。
つまるところ、ハルスにとってこの戦いは大変不本意なものなのである。
(神王竜の力と衝突を避ける為に入ったのに…何で古天鳥と戦う羽目にい~~!)
かと言って、この話をした所でメレットがどこまで話を聞くかと言う懸念もあった。メレット視点からすれば、さっきから戦意を削がれまくっているハルスに対し『やる気が無いなら一気に決着付けるわ』としか考えていないからハルスの推測は外れていないのも問題なのだが。
「ほらほらどうしたの?最初の余裕はどこ行っちゃったのさ?」
「メレット…言い方…」
珍しく怒ったウィナも今は元の調子に戻り、背中に乗るメレットに声を掛ける。彼女は主人より冷静にハルスが抱いている感情を僅かな攻撃の乱れや口使い、呼吸、瞬きの数などから割り出しており、とうの昔に勝敗が決まっている事を察していた。しかし、彼女の性格故に主人に内緒にすべきかどうかで悩んでいる。
「早くこっから出ないとセドリック君達が困っちゃうから…時間掛けれないのだけど?ねえアンタ、さっさと諦めた方が良いと思うわよ?」
先程の発言ついでに空間を槌で叩いて崩壊寸前まで弱めた彼女は破壊を球状に収束させる。彼女自身の闇属性と合わさり引力を持ったそれは周りの空間ごと大規模な破壊を起こす。
「崩れの誘引」
《うっ…やあっ!》
6枚の翼をはためかせ回避しつつ不安定になった空間をその場で補強した彼はこれ以上伸ばしても自身に待ち構えるのは死だけであると悟り、文字通り命懸けで会話を試みる。反撃という選択肢が存在しないのは言うまでも無い。
(まかり間違っても攻撃なんて出来ないよ!古天鳥に何されるか…)
彼からしたらメレット1人だけなら大した弊害になり得無く、『攻撃を封じつつじっくり取引する』『その場で命令に従って滅する』位幾らでも選択できたのだが…
《ま、参った!参ったから一度攻撃を辞めてぇぇぇ!!》
…結果的にこんな情けない叫びを上げるハメになったのだ。
ようやくメレットはハルスの精神状態が異常である事を勘付いたが、良い意味でも悪い意味でも搦め手の可能性を考え無い彼女の判断はこうである。
異常な状態
↓
隙が大きい
↓
攻撃チャンス
↓
よし、攻撃!
メレットは戦闘狂と称して問題ない凶悪な笑みを浮かべ、着地していた小惑星を粉砕しつつ蹴った反動で飛び出す。
「問答無用ゥゥ!」
《聞いてない!!》
ウィナの置いて単身突っ込んできたメレットに対しハルスは攻撃を弾き続ける。先述の通り、幾らビビり散らかしている竜であっても人間1人の攻撃をいなす位ならどうと言うことは無かった。
…反撃する勇気が起きないのは言うに及ばない。
と、そこにハルスの最大の恐怖の相手であるウィナが動く。
「そこまで…」
コツン!
翼の骨の部分で軽くメレットの頭を叩いたウィナは意を決した様にそう言った。
「メレット…一度攻撃…ダメ」
想定外の攻撃(?)を入れられたメレットは目をパチクリさせてウィナを見る。因みに、この間にもハルスに向ける意識は切らさない。ウィナの上に乗っかったメレットは武器をハルスに向ける。
「ハルス…話…したいって。聞いて…あげて?」
「…ん?」
メレットはまるで言っている意味が分からないと言う風に頭の上に特大の疑問符を作る。
「ええと…話?」
未だ武器を突き付けつつそう言うメレットにハルスは猛烈に首を上下に振る。
《こ、降参です!一度話をさせて下さいぃぃ!》
ウィナに視線を向けられたハルスはいっその事同情を引く程可哀想に縮み上がる。
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