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第五章 竜族との戦い

第183話 地上 ブレアside

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体中に吹き付ける熱風に抗い、俺はベルオムリの極長大な体に急接近した。拳を保持でガチガチに固め、文字通りの鉄拳で思い切り殴る。同時に保持で限界まで圧縮した、それこそ辺り一帯を無に還す程の威力を持つ魔法を放つ。

ドバッコオオオオン!!

反動で流れて来る衝撃を使い距離を取りつつ、着弾点を見る。そして俺は…を自分用の魔導空間から取り出した。

魔道空間とは、所謂マジックボックスである。ただ、『マジックボックスじゃ大き過ぎて使い辛いじゃん?取り出す必要もあるし』と言うアランの一言により、所有者の魔力と思念に応じ必要な物を必要な部位に出現させるチート魔道具と化したのが魔道空間である。容量も当然の如くそこらのマジックボックスを上回り、大きさも3デリ四方のキーホルダーサイズである。

(身体の軸を固定して…構えて…撃つ!)

凍らせ、焼き、腐らせる一撃一撃の重さが最高級の弾を込めたライフルを撃つ。未だ黒煙が上がる殴り跡にダメ押しで数十発の弾丸が撃ち込まれ、ベルオムリの体を守る鱗を突き破らんとする。

しかし、粉塵の中から顔を覗かせたのは僅かに傷が走っているものの、光沢一つ失っていない藍色の鱗であった。マジか!と目を見開くより速く、15程の翼が自分に向かってサイクロンを作る。

《邪魔よ!》

俺が気を引きつけている間に、尾の方から接近したマセイタさんが爪を突き立て翼の根元を切る。5回位それを繰り返すと、鱗が砕けブシュ…と鮮血が噴き出た。更に切り続けると、肉が裂けて翼が揺らぎ始める。それを見たマセイタさんは裂けた部分に噛み付き、体をよじらせて翼を根っこから引きちぎった。

《ベルオムリの弱点は翼の根!根気良く千切り続ければダメージが与えられる!》

千切られた翼を首を振って放りながら言ったマセイタさんに従い、移動を開始する。

最寄りの翼に近寄った俺は思い切り殴る。一度や二度ではヒビすら入らないが、30回程一点を殴ると鱗が砕け凹んだ。俺はそこに剣を突き立て、全身で押し込む。大木の様に太い肉の半分程まで剣が入った所で俺は一度離脱する。ベルオムリが抵抗の為に鱗を動かし周囲に無数の斬れる風を起こした為である。仮にも魔剣や聖剣と呼ばれる域に達している俺の剣は呆気なく砕かれ、柄の部分が砂へ落ちて埋もれた。

だがここまで傷付けられたら千切るのは容易。俺は空気を固めた剣を出現させ、回転させて斬る。内側から切り出され、一部の肉で繋ぎ止められている翼を切り落とし、ようやく一枚の翼を落とした。ここまで約30秒。この調子じゃ俺がベルオムリの翼を落とし切る前に痛打を与えられる…

俺は長大な体を見る。今俺が落としたのを合わせ全部で3枚の翼を落としたが、移動速度に変化は見られない。

死線デッドライン

刹那、ベルオムリの若干茶味がかった金と黒の目が俺を捉えた。マズイ…そう感じた時には既に体が遥か遠方へと吹き飛ばされていた。

「ぐ、がはぁ!ゲホオ!!」
(な…!全身の防御を回したのにか!)

何とか思考より先に身体が自らを守る様に全身を硬化させ、手足で防御を重ねたにも関わらず、ベルオムリの飛ばした『視線』はそれらを軽く打ち破りやがった。

(怪我は…内臓は逝って無いか。肋骨位で済んで良かった)
完全回復フルヒール

俺は高等魔法を全身に掛け、直ぐに体を治癒する。幸いにも保持があるお陰で腕がもぎ取られる事態は回避できたので、俺でも回復が可能であった。

…こりゃ一撃でもまともに貰ったら体が肉塊になるな。

レシアルドの助言を甘く見ていたわけでは無いが、自分の防御力を過信していたのも事実である。俺は今までの余裕を悔やみ、同時に自分の力の立ち位置の修正をした。

《カアッ!》

俺が体の治癒を終える前に、ベルオムリはその巨大な口から途方も無く大きいブレスを放った。マズい、避けられない!俺は無我夢中で保持を固め直し、空気と、空気中を流れる魔力を固め何とか軌道を逸らそうと足掻く。

《ハアッ!ガアア!》
「マセイタさん…」

しかしそのブレスは、間に割り込んできたマセイタさんのブレスにより遮られ、俺は何とか一生を得た。

「マセイタさん、すみません。ありがとうございます」
《礼には及ばないわ。ベルオムリの一撃は神王竜様であってもタダでは済まない一撃。それを一撃耐えただけでも貴方、相当よ》

俺は然程面識の無い人に助けられた事に若干恥ずかしさを感じながらも、体を癒し終え攻撃体勢を整えた。俺は別のライフルを取り出して構え直し、今度は目に向かってそれを撃つ。

アランが『弾速は殺せ○せーも真っ青のマッハ80にしちゃえ』とほくそ笑みながら作っているのを見たこのライフルを選んだのが功を成したのかは定かでは無いが、たった一発で見事に目に着弾した。

《ヌガア!?な…何だその武器は!》

俺は都合良く事が運んだ事実に驚愕しつつ、が糸口かも知れんと銃を構え直した。
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