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第五章 竜族との戦い
第173話 これからの話
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翌日。
レシアルドを除く俺含むメンバー全員はレシアルドの頼みにより創作空間の部屋に備え付けられているテーブルに座っていた。集合してからどれ程時間が経ったか定かでは無いが、目測5分程か?この状況を作ったレシアルド本人もどう話を切り出すべきか図りあぐねているらしく、悲しい程の沈黙が辺りを支配していた。
「…逃げてばかりはいかんな。今日は我の頼みに応じて貰い、感謝の限りだ」
「うん、それは良いよ…それで?」
レシアルドは続きを促され、瞬時躊躇った後続ける。
「アラン殿、ブレア殿、メレット殿、そして主。申し訳ない、我はどうやら自分の蒔いた種を回収しなければならないらしい。今までは再び地上に出れた喜びによりこれを無視していたが…此度の一件で分かった。この問題は放置出来ぬ。我なりの落とし前をつけなければならないと言う事を。…主よ、すまない。我に3週間の暇をくれぬか。年の締めには必ず戻る、主達は何も心配しなくて良い…頼む、この通りだ」
レシアルドは机に顔を伏せ懇願する。
俺は一つため息を吐いた。セドリックは苦笑いを零した。ブレアは一度天井を仰いだ。メレットは顎に手をやりフンと声を出した。しかし、皆の心は一様だった。
「ま、I'll be back立ってる奴をほっとく訳が無いわな。丁度新技が出来たし、それの試しとでも行くか」
俺は軽くストレッチをする。
「しょうが無いよねぇ。僕としては折角契約までしたのに直ぐ手放す羽目になるのはゴメンだし」
セドリックは苦笑いを浮かべたままコーヒーを口に運ぶ。
「レシアルドは何か勘違いをしてるね。俺の体が竜如きに傷付けられると思う?」
ブレアは左手で右腕を軽く叩きながら言う。
「私も舐められたものね。たかだが竜に私が遅れを取るとでも?軽く首を引きちぎってやるわよ」
メレットは破壊の概念を手に纏わせ、雑巾を絞る真似をする。破壊の波が周囲に拡散し、キッチンの皿入れの蝶番が軋んだのを見て、俺は魔力を回して破壊の波を相殺する。ううむ、これはその内魔力抑制の魔道具でも作ってあげようかな。
レシアルドに取って、この言葉は予想してなく、そしてこれ以上無い程心強い言葉だったのだろう。
「…良いのか?主らが我の問題に態々介入する必要など無いのだぞ?」
「いや?必要大有りだよ?何せ、彼らが自ら侵攻して来たんだから、事情くらいは聞かせて貰わないと割に合わないからね」
「本当に…すまない、恩に切る」
レシアルドはこの上無い申し訳なさと、それを遥かに上回る安堵感からの息を吐き出した。俺はヒラヒラと手を振ってわざとおどけて見せる。
「いやいや、レシアルドも俺たちの仲間でしょ?仲間の間に遠慮とか恩とか、そう言うのは関係無いでしょ。大いに頼ってよ。逆も然りだけど」
他の皆んなもそれに同調する。レシアルドは目を見開き、そして吹っ切れた様に笑った。
「そうであったな。我は根本的な前提を忘れていた様だ。『持ちつ持たれつ』であったか?」
「そう、それ!」
俺はコップの緑茶風ティオを一息に飲み干した。もう温くなっていたと思っていたそれは、未だ活気に満ちた熱を帯びていた。
数時間後、俺はとある作品の最終チェックとメンバーへのお披露目を兼ねたテストを行っていた。リビングのローテーブルの上には円形の台座が置かれている。黒光りする基礎に質素に酸化防止の効果を施した鉄をあしらったそれの上に、俺の作品が浮かんでいる。
2層に分かれて中心にある物を保護する様に取り囲むそれは外側の淡青色の層から光を放ち、内側の赤色の層には定期的に赤色の雷の様な物が走っている。随分と物々しい雰囲気を放つそれの中で鎮座する半透明の青色のガラス片の様な物が今回の作品である。
レシアルドが早速それを見て考察を始める。
「ううむ、見る限り…中心の物は非常に不安定な物質と見る。外界の影響をこれでもかと言う程断ち切る保護を受けているせいで分かり辛いが、ガラス片の中に一つの変形する物が封じられているな。それと、波動を分析する限り…僅かながら我の力と似て非なる力を感じる。前に我の鱗をあげた事があったが、それで何かしたのか?」
「半分正解だね。正直俺もこれが出来るとは思って無かったんだけど…このガラス片の中の物質は、細胞。霊魂は当然無くて、今は仮死状態で保存されてる」
レシアルドの変質する細胞から着想を得た『五臓六腑に変形出来る人工細胞』が入ったガラス片を俺は取り出す。セドリックはそれを凝視して、そして複雑な表情を浮かべる。
「うわあ…本物の細胞だね、これ。もしかして、テレッド君の一件はこれのデータを取る為?」
「うん、ちょっと申し訳なかったけど。これから何処かに変装して潜入する機会が全く無いとも言い切れないじゃん?それにこれがあれば治癒魔法より魔力を支払わずに回復が出来るし」
事実、こうして役に立つ機会が来たのだから。と俺は付け加えた。セドリックは『ま、これくらいならいいか』と微笑んだ。
レシアルドを除く俺含むメンバー全員はレシアルドの頼みにより創作空間の部屋に備え付けられているテーブルに座っていた。集合してからどれ程時間が経ったか定かでは無いが、目測5分程か?この状況を作ったレシアルド本人もどう話を切り出すべきか図りあぐねているらしく、悲しい程の沈黙が辺りを支配していた。
「…逃げてばかりはいかんな。今日は我の頼みに応じて貰い、感謝の限りだ」
「うん、それは良いよ…それで?」
レシアルドは続きを促され、瞬時躊躇った後続ける。
「アラン殿、ブレア殿、メレット殿、そして主。申し訳ない、我はどうやら自分の蒔いた種を回収しなければならないらしい。今までは再び地上に出れた喜びによりこれを無視していたが…此度の一件で分かった。この問題は放置出来ぬ。我なりの落とし前をつけなければならないと言う事を。…主よ、すまない。我に3週間の暇をくれぬか。年の締めには必ず戻る、主達は何も心配しなくて良い…頼む、この通りだ」
レシアルドは机に顔を伏せ懇願する。
俺は一つため息を吐いた。セドリックは苦笑いを零した。ブレアは一度天井を仰いだ。メレットは顎に手をやりフンと声を出した。しかし、皆の心は一様だった。
「ま、I'll be back立ってる奴をほっとく訳が無いわな。丁度新技が出来たし、それの試しとでも行くか」
俺は軽くストレッチをする。
「しょうが無いよねぇ。僕としては折角契約までしたのに直ぐ手放す羽目になるのはゴメンだし」
セドリックは苦笑いを浮かべたままコーヒーを口に運ぶ。
「レシアルドは何か勘違いをしてるね。俺の体が竜如きに傷付けられると思う?」
ブレアは左手で右腕を軽く叩きながら言う。
「私も舐められたものね。たかだが竜に私が遅れを取るとでも?軽く首を引きちぎってやるわよ」
メレットは破壊の概念を手に纏わせ、雑巾を絞る真似をする。破壊の波が周囲に拡散し、キッチンの皿入れの蝶番が軋んだのを見て、俺は魔力を回して破壊の波を相殺する。ううむ、これはその内魔力抑制の魔道具でも作ってあげようかな。
レシアルドに取って、この言葉は予想してなく、そしてこれ以上無い程心強い言葉だったのだろう。
「…良いのか?主らが我の問題に態々介入する必要など無いのだぞ?」
「いや?必要大有りだよ?何せ、彼らが自ら侵攻して来たんだから、事情くらいは聞かせて貰わないと割に合わないからね」
「本当に…すまない、恩に切る」
レシアルドはこの上無い申し訳なさと、それを遥かに上回る安堵感からの息を吐き出した。俺はヒラヒラと手を振ってわざとおどけて見せる。
「いやいや、レシアルドも俺たちの仲間でしょ?仲間の間に遠慮とか恩とか、そう言うのは関係無いでしょ。大いに頼ってよ。逆も然りだけど」
他の皆んなもそれに同調する。レシアルドは目を見開き、そして吹っ切れた様に笑った。
「そうであったな。我は根本的な前提を忘れていた様だ。『持ちつ持たれつ』であったか?」
「そう、それ!」
俺はコップの緑茶風ティオを一息に飲み干した。もう温くなっていたと思っていたそれは、未だ活気に満ちた熱を帯びていた。
数時間後、俺はとある作品の最終チェックとメンバーへのお披露目を兼ねたテストを行っていた。リビングのローテーブルの上には円形の台座が置かれている。黒光りする基礎に質素に酸化防止の効果を施した鉄をあしらったそれの上に、俺の作品が浮かんでいる。
2層に分かれて中心にある物を保護する様に取り囲むそれは外側の淡青色の層から光を放ち、内側の赤色の層には定期的に赤色の雷の様な物が走っている。随分と物々しい雰囲気を放つそれの中で鎮座する半透明の青色のガラス片の様な物が今回の作品である。
レシアルドが早速それを見て考察を始める。
「ううむ、見る限り…中心の物は非常に不安定な物質と見る。外界の影響をこれでもかと言う程断ち切る保護を受けているせいで分かり辛いが、ガラス片の中に一つの変形する物が封じられているな。それと、波動を分析する限り…僅かながら我の力と似て非なる力を感じる。前に我の鱗をあげた事があったが、それで何かしたのか?」
「半分正解だね。正直俺もこれが出来るとは思って無かったんだけど…このガラス片の中の物質は、細胞。霊魂は当然無くて、今は仮死状態で保存されてる」
レシアルドの変質する細胞から着想を得た『五臓六腑に変形出来る人工細胞』が入ったガラス片を俺は取り出す。セドリックはそれを凝視して、そして複雑な表情を浮かべる。
「うわあ…本物の細胞だね、これ。もしかして、テレッド君の一件はこれのデータを取る為?」
「うん、ちょっと申し訳なかったけど。これから何処かに変装して潜入する機会が全く無いとも言い切れないじゃん?それにこれがあれば治癒魔法より魔力を支払わずに回復が出来るし」
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