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第五章 竜族との戦い

第159話 重力加速度戦闘

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「自衛と…他者を救う為の力と思ってくれれば」
「他者を、ねぇ…まあ、神様に言われると説得力の塊だわね」

セドリックが苦笑混じりにそう言うのに、メレットはフッと笑って槍槌を軽く握る直し、2、3度自身の前で振った。まるでコンバットナイフを振る様に軽々と片手で持ちブオンブオンと振り回す様は中々シュールだ。

「じゃあ、これからは何をするの?昔教わった魔力増強方法…ジュウリョクカソクド訓練だっけ?あれするの?」
「うん、そうだよ。僕が知る限りのどの訓練よりアレは伸び率がいいからね。けどメレットの場合、ただの訓練にはしないよ」

セドリックはニヤッと笑い倉庫用の創作空間に入れられていた自分の剣を取り出す。それを見て、メレットは『まさか…そんな事言わないわよね?』と引き攣った笑みを浮かべる。

「メレット、重力を加速した状態で身体強化ビルドのみで僕に一本打ち込んでみて」
「…無茶苦茶な」

メレットは槍槌の刃を地面に突き刺した。同時に重みで周囲の岩が割れ、少し槍槌が地面に埋まる。俺はその光景を見て、久し振りにセドリックの『悪い一面』を見て背筋に数滴の汗を浮かべるのだった。


「っつあっ!!」
「はい、もっともっと!僕にも重みは掛かってるんだから、条件は平等だよ!」

丁度吹っ飛ばされたメレットにセドリックはパンパンと手を叩き剣を構え直す。メレットは今一時的にセドリックの使う剣と同じ重さの槍を握り挑んでいる。さっきからそれを振り回して何とか一撃を入れようとしているが、自身及び握る槍に掛かる膨大な重力に阻まれ速さが出ない。一方セドリックはいつもと変わらない調子で剣を振っている。

今彼らに掛かっている重力は200G。両者とも耐えるだけなら出来るが、メレットはこの状況で戦いをする事など経験が無い。セドリックは俺と何回か経験がある上200G位なら難なく耐える事が出来るので戦闘に障害が発生するも無い。

「そんなこと言ったって…体が重たいから全員に力込めないとやってられないし、そうしたらそうしたで動きが遅くなるし」
「遅くなるのを相殺できる位まで魔力値を上げて放出量を増加させれば行けると思うよ。それまでは残念だけど、手加減したセドリックにすら一矢報い得ないと思う」

俺は心を鬼にしてそう言う。メレットは自身に掛かる重みに打ち勝ちつつ立ち上がり、槍を片手で持ち直した。そろそろ闘志より疲労感が勝りぶっ倒れそうだが大丈夫かな。俺はいつでも重力魔法を切れる様に準備しているが、バッタンキューになられると色々困るから止してほしい。

メレットが弾かれるのが500を超えた位の時にメレットが地面に槍を置き、『疲れた』と言って両手を上げた。俺は重力加速グラビティを切り、水入りの瓶を投げて渡してやる。彼女は地面にどっかり座り込み、一息に水を飲み干した後俺に投げ返した。

「プハッ…少し手加減してくれないかしら?こっちの規格が元の3分の1よりさらに下に落ち込んでいるんだから」
「う~ん、これ以上手加減するとメレットの為にならなそうだから却下かなぁ。これでもメレットどんどん高重力の耐性がどんどん上がっているんだよ?今更僕が手加減しなくても数日すれば槍の一撃くらいなら入ると思う。成長速度が早すぎて正直ビックリしてるよ」

心から賞賛するセドリックに対し、メレットは微苦笑を浮かべながら言う。

「セドリック君、確かに本心から言って誉めてくれてるのは分かるけど…あんまり人にそう言うこと言うと謙遜し過ぎるって嫌がられるかも知れないから気をつけてね。あなた達に『強い』って言われても受け取り様によっては嫌味に聞こえるから」
「確かに…これは僕が悪かった。ごめんね、メレット」
「いやいや、こんな事で謝んなくて良いわよ。さ、私は水浴に行って来て良いかしら?汗かいちゃったから」

謝るセドリックを見てメレットはマズったと言う感情を一瞬顔に浮かべ、直ぐに話題を変えようとする。セドリックは気を取り直して『勿論良いよ』と笑顔でメレットを送り出した。

「じゃ、僕ココ修復してから戻るから先に戻って置いて。あとレシアルドが辛口の味付けにして無いかもチェックして置いて」
「あ、分かった。後半は結構死活問題だな」

俺とブレアは足早に鍛錬場を後にし、レシアルドが作っている料理を見に行く。彼、偶に自分の舌に合う激辛と言う言葉が可哀想になる位の辛さの料理を提供して来るから恐ろしい。


小走りで帰った瞬間に俺たちの目に飛び込んできたのは。

ウィナが激辛粉末を鍋で煮込んでいる物に振りかけようとしていた所であった。俺はそれが棚の一番上にある最も辛いあの粉末である事を判断し、即座に全力ダッシュに移行する。

「ストップーーー!!!」
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