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第五章 竜族との戦い

第158話 竜討伐の依頼

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「モザルト国、ですか?」

俺はアリシアさんの言葉を聞き返す。今日は57週3つの日、夕暮れの森調査の3日程経った後だ。適当にAランク~Sランクの依頼をこなしていた俺たちは、アリシアさんから『モザルト国に派遣戦士として行ってくれませんか?』と言われたのだ。

「はい、そうです。何やら警備騎士隊が竜種が10体ほどの群れを成し、まるで偵察する様に王都上空を飛行する姿がここ最近目撃され始め、年末大祭りを境に急にその頻度が上昇しました。モザルト国は貿易の国なので交通が途絶えるだけで著しく経済に打撃を与えてしまいます。なので他国からも戦士を募り、何とかしてその竜種を撃退しようと考えているのです。ことログワート王国においては、最強の戦士なんて文句無しに皆さんですから、皆さんにこの話をした訳です」

竜と一口に言っても、その強さには雲泥の差がある。ただ、最下層の下位竜を除き平均的な竜種を相手取るなら最低Aランク級の強さの人が15~30人は必要だ。Sランクになると5名程で相手に出来るが、Sランク級をそこまで用意するのは無理難題が過ぎる。そう考えると、単純計算で10体いれば200人位の軍隊が必要になる。確かに、一国がそれを用意するのは不可能だわな。……ま、俺たちの中で1人でもいればタイマン1対1で負ける事はまず無いが。

しかし、また目立つか…モザルト国に直に行って撃退してそのまま何食わぬ顔で帰ってきちゃダメかな?

「行っても良いでしょうが、先ず間違いなく撃退者探しが始まりますね。そうなったら皆さんに行き着くのは時間の問題です。単騎で最下位竜以外を倒せる人間なんてギルド名簿にはこの4カ国の中では皆さんと後32名しか居ませんから」

2人居るんだ。そして声が漏れていたんだ。俺はその事実に少しと大いに驚いていた。セドリックがそこで話し始める。

「んーと、モザルト国の危機に自分達が介入出来るのならこれ以上ない誉れなのですけど。その、こう言う言い方は失礼かも知れませんけど、面倒臭い役職の人たちとの接触を避ける方法ってあります?」
「無いですね。モザルト国王が他国に呼び掛けたので、否が応でも王とは接触しなければなりません」
「じゃあ、期間は?どれ位向こうに滞在する事になります?いつでも帰って来れますけど」
「王の推定では6週間ほどと推測しています」

その時、メレットが後ろから言った。

「受けても良いんじゃない?王様に一度会って直ぐに撃退しに行って、1日で追い返せば良い話じゃない。私たら難しくも何とも無い話でしょう?」
「まあ、確かに…しょうがない、受けようか。良い?」
「分かった」

全員の了承を確認してから、俺はアリシアさんに頷く。

「承知しました。集合は58週1つの日と言われております、お願いします」
「了解しました。じゃあ今日はこれで帰ります」

俺たちは外に出た後、少し話し合ってしばらくメレットの現在の実力を見定める依頼の受注を急遽切り上げ、創作空間での対人鍛錬で集合までの時間を潰す事にした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ドゴォン!!

「おお…」

今の音はメレットが隕石が落ちたんじゃ無いかと思う衝撃と共に創作空間の対人鍛錬場の床を叩き割った音だ。鍛錬場の硬い床を飴のように容易く木っ端微塵にした強大なパワーに俺は感嘆の息を漏らす。メレットはトゲハンマーと槍をくっ付けた武器…槍槌とでも言ってしまおう、それに纏わせている『破壊』を消し、肩に乗せた。

「どう?まだ破壊の段階が低いから多少無駄があるけど」
「う~ん、これが最低なら十分でしょ」

メレット曰く、破壊にも段階がありそれを調整して丁度壊したい物を壊すレベルにしているらしい。確かに、メレットが交流戦で見せた音すら鳴らない破壊の突きは音すらを壊した結果であると言っていたからそうなのだろう。俺はメレットなりの効率の良い魔力変換術を編み出している事に賛辞を送った。

「一応鍛錬が終わったら俺たちが持っている特殊効果は与えるけど、流石だね。自力で魔力節約術を編み出したのは凄いよ。これにこれからの鍛錬を重ねたら間違い無く強くなるね」
「そう言われると嬉しいわ。けど、アラン君たちは交流戦でも見たけどやっぱり複数の攻撃法に精通があると言っていいのよね?私は槍術が得意だったから2人から貰ったコレでそれを磨いたけど、剣術や柔術はあの様よ」
「ま、それは可及の案件じゃ無いから大丈夫だよ。モザルトへの遠征が終わった後にでもしよう。それよりもまずは魔力値の上限を増やしたり体力を鍛えたりって言う基礎の方を固め直すよ」

メレットは俺たちに鍛えさせられた元からの筋力に加え身体強化ビルドを使う事で60イブグム(600キログラム)級の槍槌を軽々と振り回す腕力を持っている。俺たちを除き、人間ではまず振り回すことなんて叶わない。ただ、俺やセドリックはたまに20ウブグム(20トン)位の斧とかをぶん回す時がある。流石にそれは要求しないが、ブレアと同水準の8ウブグム(8トン)位の力は出せて欲しいと言うのが個人的な意見である。

この事をメレットに伝えると、彼女はこう言った。

「ひとつ聞いていい?」
「?」
「世界でも取る気?」
「「「取らないよ!!!」」」

俺、セドリック、ブレアのツッコミが綺麗に被った。
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