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第四章 脚光を浴びる

第147話 一つの疑念 ???side有り

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俺は一度距離を取り、そして再度飛び掛かる。同時に巨大な円錐状の槍を5本出現させ、更に水由来の超高圧光線を溜め始める。セドリックはそれに対して、自身を包む闇と炎の黒炎を風の刃の暴風に乗せて周囲に拡散させ、光の光球を溜め始め全方向に放つ準備をする。

「覚悟しろ、セドリック!」
「上等!」

両者の視線が交差し、今まさに剣が触れるっ!同時に周囲の魔法も全て発動し、周囲は一瞬にして様々な現象に覆い隠され見えなくなる。爆発が起こったと思えば周囲に光の散弾が飛び散り、それらが闇に触れ一瞬で掻き消された瞬間にそれに風がぶつかり粉々に切り刻まれる。更に飛んで来た水は炎により一瞬で焼き尽くされ、同時に槍が炎ごと押し潰す。戦いの余波は瞬く間に周囲に自然物で出来た放射状の構造体を構築し、戦いの凄まじさを形容した。

そして剣が触れたその瞬間に、俺は自分の行動に失敗した、と思った。
自らの顎の真下、そこに鋭利な刃を先に付けた岩製の円筒が伸びてきているではないか。このままいけば、アッパーカットされて大怪我は不可避だろう。セドリックは俺の目を見て、そして安堵の混じった笑みを浮かべる。

「僕の勝ち!」

しかし、俺は諦めなかった。最後の最後まで足を前に出し、顎を引いて背を反らそうと努力する。その時!

《良いぞ、それでこそだ!》

俺の頭の中に聞き覚えの無い、されども聞き覚えのある声が響いた。その声を聞いた俺は一瞬の心の乱れが生じる。そして、刹那の思考の後、俺は『聞き覚え云々は勘違い』と『この声の主は今は推理するべきでは無い』と言う結論を出した。

気が付いたら、俺はセドリックの横腹に剣を添えていた。本当に気が付いたらだ。声について分析している時、殆ど意識が向いていない状態の時に添えたと思われるその剣は、持ち前のリーチで体を反らす事に成功した俺が左手に持っているものであった。

「…え」
「あ…」

数秒間俺達の間に無言が流れる。その状態を打ち破ったのは、ルフィノの叫びであった。

「おっと、今、今ここに、剣が添えられました!…と言う事でぇぇ!交流戦優勝者は、アラン・ベネットオオオオォォォォォォォォォォ!!!!!!」

渾身の叫びでようやく剣を鞘にしまった俺は、セドリックに一言だけ言う。

「まぁ…俺もつくづく不思議だが、そう言う事だな」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ここに至るまでの努力を讃え、交流戦優勝の証はアラン・ベネットに授ける」
「ありがとうございます」

ひとまず優勝と準優勝は決まったと言う事で、表彰式でトロフィーが貰えた。3位は決勝進出した他の2人両方が貰っていた。ひとまず俺達で表彰4枠のうち3枠を埋めた訳だが、さて終わった後になんて言われるかな。

観客の拍手に俺たちは手を振って応じる。中にはあらん限りの拍手を一家総出で送る家族のみんなや、団員の方々と一緒にいるコメット君にいつの間にかいたギルマスのストレさんがいた。

俺たちは一人一人闘技場に降りて来たルフィノのインタビューに応じる。彼は拡声器の様なものを携えていた。初めからケイテル→ブレア→セドリック→俺と言った感じだ。

「惜しくも決勝戦で戦うことは叶いませんでしたが、自分を振り返る良い戦いになりました」

とブレア。

「戦い自体非常に楽しむ事が出来ました。来年こそは隣のアラン君から金色のトロフィーを取って見せます」

とセドリック。そして俺は…

「正直優勝まで駒を進めるとは思っていませんでしたが、セドリック君にコレを取られない様に頑張りたいと思います」
「みなさん、ありがとうございました!今一度大きな拍手をお願いします!」

観客の大きな拍手を背に俺たちは退場した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(結局、あの声は何だったんだろうか)

俺に念話で直接語り掛けられる人なんて念話をつないでいるセドリック、ブレア、レシアルド以外には魔力上の繋がりを持つテレッド君やコメット君しかいない。その全員に一致しない声質のの正体に俺は首を捻るばかりであった。セドリックや博識なレシアルドにも聞いたが、こう返された。

『かつては念話を見ず知らずの者に送る術式もあったが、個人で扱うには消費魔力量が多すぎる為今使っている奴はいないだろう。もしいたとしても、アラン殿にそれを言えるのは大会関係者であるはず。その様な膨大な魔力移動が我の感知網を掻い潜る術など持ち合わせていない』

セドリックは『分からないけど、ちょっと調べておくよ』とだけ言っていた。ううむ、謎。

俺は行き詰まって思わず王都の景色に目をやるのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 床も白、壁も白、天井も真っ白の影一つないその空間に
 『声主』はいた。実態を持たない光の様な『声主』は興奮した
 声を上げる。

中々面白い試合だったなぁ。思わず声を張り上げてきかれちゃったみたいだったけど大丈夫か?ひとまずバレている雰囲気は無いが、ちょっくら自重すべきかもな。彼も違和感感じてたみたいだし。

けど……ーーー(小さい声で聞こえない)……ーーーを守っていてくれて…ありがとう…!!

 最初こそ嬉々とした声だったが、後半は上手く聞き取れない。
 『声主』はそれと同時に光を数滴溢し、そしてその場から消えた。
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