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第四章 脚光を浴びる

第135話 Cブロック決勝、決着 いろんなside有り

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先程とは違い、胴体が光の粒子に包まれた彼女はその姿を『古天鳥』としての本来の姿に変化させる。我ら三柱の中で最も速く、最も鋭く、最も賢いその姿は…

下層に1対、中層に2対、末尾に1枚の合計7枚の翼に、背中の羽毛を割り走る一列の鳥ならぬ硬い突起物、普通の鳥にはまず見られない前に4つ、後ろに1つの足の指。その姿は例えこの者の姿は愚か正体の名前すら知らなくても格の違いを知るには十分な威厳を放っていた。

「レシアルド…行くね!」
《どんと来い!》

我は変身前から溜め込み続けた膨大な魔力を有するブレスを放出した。一切の拡散無しに一直線に進むそれに、ウィナは7つの翼から緩やかに曲がり彼女の頭の少し前で収束する魔力の光線を出し、一箇所に集めたソレを一息にぶつけた。

ぶつかり数秒、拮抗状態状態を維持した我は、力の差を判断し即座に回避した。直後、ウィナの放った魔力砲が我の直ぐ真下を通り抜け、そして空中で掻き消える。

それと同時に、下の戦いも終了した様だった。

《結果的には勝った様だが、試合は負けてしまったな。さてウィナよ、今夜は少し話をしないか?思い出話もそうだが、どうやら今の我には少々数奇な運命が絡んでいる様だ》
「数奇な?…面白そうだね…」

既に翼を仕舞い普通の鳥の大きさに戻った彼女はチヨと一度鳴き声を上げるのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

僕、セドリックは目の前にいる親友メレットから少々、否かなり考える必要がある言葉を聞かされ、理由を聞きつつアラン達が待つ観客席に戻っている途中であった。

「…ちなみに、何で僕たちの仲間になりたいって思ったの?」
「えー…こう言うのもソロ冒険者としては恥ずかしい限りなんだけど、正直SSランク魔物に対して1人で戦うとね、正直セドリック君に教わった闇属性回復が無いと五体満足ではとても帰れないんだよね。それこそ光属性の回復魔法より回復力強い気がするからこそ出来ていた無茶だったから…」

その後もメレットはポツポツと事情を溢す。確かに、闇属性回復は強力だ。闇の変形性と吸収・回帰性を使い欠損した肉体を元の状態に戻す回復魔法。効果は良いが、そればかりに頼っていては危険だという事を彼女もヒシヒシと感じているのだろう。

「いや、私も仲間を作ろうとはしたのよ?ただ…私のレベルでソロでやっている人が居なくて、他のパーティにも参加するのは気が引けたし、誰か信用出来る人がいいなーって思ってた矢先にセドリック君達と再会出来たの。正直、さっきの試合からも多分個人単位でも釣り合いの取れない程無茶苦茶なお願いだろうけど…どうにか出来ない?」

こういう時のメレットは絶対に嘘が吐けない。僕は経験則と神の力で知っていた。ブレアを仲間にしたのと同じ様に、ある程度交友関係があって堅い意思があるなら僕は良い。けど…

「うーん、僕は特に構わないんだけど…アランがどう言うかだよねぇ。後ブレアって言うもう1人の仲間も。よっぽど反対はしないだろうけど、今ここで決めるのは出来ないなぁ」
「いや、私もそこまでジコチュウな女じゃ無いわよ…ひとまずセドリック君は賛成でいいの?」
「うん、僕で良ければお願いするよ」

僕は微笑みながら言った。するとメレットはクスクス笑いながら『ありがとう』と心からの感謝を言った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「んなるほど?まぁ、俺としては勿論歓迎するよ」

俺はメレットとセドリックの説明を聞き終わった後に特に深く考える事も無くそれを了承する。ブレアも特に反対する様な事は言わなかった。しかし、そうなると自分達の秘密を話すべきなのか迷ってしまう。

ちなみにこの場にコメット君はいない。大事な話があるというので一時的に退席して貰ったのだ。

仲間間に他人に言うのが憚られる秘密があるのは余り好ましい状況では無い。数年の関係ならまだしも、冒険者パーティの仲間は分裂が無い限り一生物だ。現に父上母上もかつての仲間とあんなに親しそうにしてたし。
俺は、あ!と思い出す。そう言えば『お誘い』を受けていたじゃ無いか。

「じゃあ、メレット少し場所移動するか。少しここで二言返事では決められない事とかあるし」
「そう、ね。登録籍とか色々あるだろうしね」

まさかこれから天地驚愕の事実を伝えられるとは夢にも思っていないメレットは、立ち上がった俺たちに付いてくるのだった。


俺たち専用の選手待機室に入ったメレットは、俺が作った木の椅子に腰掛けた。『相変わらず無茶苦茶を何の気無しにするわね…』と呟いたのが聞こえたが聞こえないフリだ。扉に鍵を掛けた俺は最高度の防音結界を張り、セドリックに室内の時間を遅らせて貰う。

「じゃあ、まず俺たちの仲間になるにあたり、俺たちの…素性と言うか秘密と言うか、それについて話しておくね」
「ええ…だけど、アラン君とセドリック君が伯爵家ベネットの子息って事は知ってるけど…」

俺はそれを聞いてコキュッと生唾を飲み込む。そして、言った。

「俺とセドリックは…本当はこの世界の住人じゃ無いんだ」
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