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第四章 脚光を浴びる

第134話 神王竜vs古天鳥 レシアルドside

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《さて、まずは何と言ったら良いか。再び顔を合わせる機会に恵まれた事を寿ごう、古天鳥よ》

我…レシアルドの声にその鳥は応じる。青紫色の胴体に虹の翼。胴体は見る者によって知覚する色が異なる摩訶不思議な羽根で覆われている。すると、彼女はゆっくりと口を開いた。

「ううん…今は違う。今は…ウィナ…そう呼んで」
《成程、失礼だったか。すまないな、ウィナ。我はレシアルドと言う名を得ておる》

彼女…ウィナはクルルルと鳴き声を上げながら毛繕いをする。我は挨拶も早々に本題に入る事にした。

《出来れば、このまま一つ世間話にでも行きたい所だが、それぞれの主人あるじがそれを許してはくれなそうだな。しょうがない、一戦交えて置くか?》
「そうだね…」

ウィナは再び飛び立ち、止まり木にしていた木を地面に還す。我はそれと同時に羽ばたき、地上15アブデリ程の所で静止した。

《まあ自分で言うのも何だが…今の我は汝からしたら想像を絶する程弱体化しておる。故に、汝の攻撃を散らすのに全力を注がせて貰おう》
「そう言っても…私たちの中で一番高い…耐久力は健在でしょ?」

やはり、見抜くか。我は口角を上げ、そして口の中で初撃のブレスを溜め始める。それに反応したウィナも僅かに気を回し目の前に防御の結界を数十枚出現させる。

《カァッ!!》

膨大な魔力を持つ炎、氷、光の奔流が風を帯びて一直線に向かう。ウィナの結界はその全てが大破し、小さな鳥の胴体に直撃する。

空中に爆炎を発生させた後、白煙の中から出て来たのは傷の一つも無いウィナであった。我は未だ事を不思議に思い、思わず問う。

《ふむふむ、我の今の『軽い一撃』では汝の力を一段階も進める事は出来ぬか。なれば、翼四つ有れば充分なのでは無いか?》

我はウィナに急接近しつつ数百の魔法を展開し一息にそれらを打ち込む。更に鼓動の恒星パルスサンも至近距離で発動し、彼女の行動を制限しに掛かる。

対してウィナは瞬間的・爆発的な光の散弾を発し、迫り来る魔法を打ち消す。更に我の鼓動の恒星パルスサンを羽ばたき六つで超高速移動し回避した。普通の人間には瞬間移動したとしか考えられない程の高速移動から静止した彼女は我をみる。

「やっぱり…衰えを知らない…」

そう言って、彼女は体内に滾る膨大な魔力の一端を放出した。そして数瞬の時を挟み彼女の体が変化し始める。普通の鳥とさして変わらない大きさの体が5倍ほどに大きくなり、尾の羽根が変形し始める。青紫色の羽根が翼の羽根色に変化し、急速にその長さと量を増やす。更に根本から複数の関節が形成され、風切羽、雨おおいが生え揃う。

数秒の内に彼女は3枚の翼に0個の尾羽を持つ姿に変化した。我は周囲の保護結界に影響が及ばない様衝撃を全て攻撃に転じつつ全力のブレスを放つ。光の速さで接近するそれに反応したウィナは翼をはためかせそれを避け、そのまま我の懐に飛び込んで来た。

「やぁっ」

いつも通り若干の後ろめたさを感じさせる掛け声と共に空間を容易に切り裂く鋭い爪が我を襲う。彼女は全力を出せば本来の我を相手取っても互角以上の戦いを仕掛けれるにも関わらず、気が弱いせいでいつも損をしている残念な鳥でもあるのだ。しかし、凄まじく遠慮がちな力の篭っていない攻撃でも、何も対策しなければ容易に我の鱗を貫通し肉を抉る事だろう。

《いつもの事ながら、弱々しい、な!》

我は両翼の羽ばたきで暴風を吹き起こし距離を取る。すると、このままでは少々分が悪いと踏んだのか再び変形を開始した。

尾羽が元に戻り、翼が左右一枚づつ、元からある物の後ろに生え、4枚の翼に1個の尾羽を持つ姿になる。直後、ピョロロロ!と鳴き声を一つ上げた。

《おお…》

我は周りに自身を四方八方から取り囲む斬撃が出現している事を認める。既に接近を開始している攻撃に対し我は回避を諦め防御に徹する。別にスキル『七転八起』があるから心臓と脳さえ(機能が体全体に散らされているから結局無いと言って良いが)無事なら体を幾らでも癒せるが、突如我の血肉が上空から降って来る主の気持ちを考えたらそれははばかられた。

カキンカキンと適度に避けつつ風の刃を受ける。それと同時に下の主達の戦闘にも横槍を入れようとしたので炎のブレスでそれを吹き飛ばした。更に数百の魔法をお互いに展開し、先程までとは比べるのも億劫になる程の攻撃のぶつけ合いが勃発する。一撃一撃が人1人の命であれば容易にむしり取る強力な魔法の打ち合いは、それだけで観客の視線を集めた。

《やはり汝の遠慮気質は治っておらんか。心配するで無い、幾ら我が五体を吹き飛ばそうと直ぐに復活して見せようぞ》
「いや…血は好きじゃ無いから…。それに…そんな勇気無い…」

やれやれ、コレでは余り張り合いがないな。我は首を下げ地上で戦っている主を見る。彼方もそろそろ佳境か。

《ふむ、そろそろ試合が決まりそうだぞ。終了前に一つ全力の一撃でもぶつけ合って置くか?》
「レシアルドは…言った事を曲げないから…しょうがない」

彼女は全力を出す時の形態に変化し始めた。
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