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第四章 脚光を浴びる

第120話 Aブロック、優勝は…

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俺は剣に魔力を流し、自らに掛けている枷の一部を外す。刹那の時を挟み、
周囲の空気が雄叫びを上げ始めた。

ズオオオオオオオオオォォォォォォォ!!!!

枷を外された事により滲み出る魔力が周囲に拡散され、周囲を掻き乱す風となり
吹き荒れる。周りのマグマは俺の放つ魔力と剣の衝撃波により波打ち始めた。

「な…何よこの魔力!こんな濃密で深淵で高圧な魔力見た事ないわよ!?」
「…ですね。まあ、このまま攻めるのもアレなので先攻権はお譲りします」

俺は剣を自然体に下げ一撃が入るのを待つ。

「…私のスキルは『衝撃』。強力な波動を直進・拡散・照射できるスキルよ」

自分の手札を敢えて明かして俺の手札を探る作戦か。良いだろう。俺は少し
口角を上げ、自分のスキルを明かす。

「俺は『創作・置換』を持ってます。この世のあらゆる事象を作り出し、元から
 あるものと置き換える事も出来ます」
「っ!…はぁ、もう勝てる見込みは捨てても良いかしらね。それこそ傷の一つ
 負わせたら勝ちって思おうかしら」

メフディは半ば諦め口調になる。しかし、放つ攻撃には諦めの意思など
これっぽっちも混ざっていなかった。

六打・衝撃セクタプル・ショック放・衝撃イジェクト・ショック!」

俺は剣を一つ振るう。それにより、全ての衝撃が綺麗さっぱり消え失せた。

一文字『大山』いちもんじ『だいせん』!」

俺は下から上に大きく剣を振る。それは瞬く間に地面を割り、
更に天高く打ち上がった。俺は粉塵の外から魔法を打ち込む。

星々の塵スターライツマイナー

夜空に煌めく星々の様に美しい氷や光、炎の粒が流星群の如く降り注ぐ。
俺はこれ位では倒れないだろうと言う期待を抱きながらメフディの対応を見た。

十打・放・衝撃ディカプル・イジェクト・ショック!」

中心と周り9方向に向かって拡散型の衝撃が放たれた。それにより俺の魔法は
相殺され、おまけに周囲を抉ってマグマやら溶岩やらを飛ばしてきた。

俺はスイスイとそれを避ける。

「はぁ…何なのこの威力…炎球岩フレア・ロック!」

固まった溶岩に熱を持たせ半融解した火山弾を飛ばす中等魔法、炎球岩フレア・ロックか。
火属性と地属性の複合魔法…熟練度も高い。
なら俺も中等魔法で応じるのが常識コモンセンスだな。

紅炎プロミネンス

本来なら“数アブデリ先まで届く火炎放射器”程度の威力しか無い紅炎プロミネンスも、桁違いの
魔力を掛けて発動すると高等魔法かそれ以上の威力を叩き出せる。今回は
俺が自重した事もあり、舞台壊しになる程の威力は持っていない。
それはメフディの炎球岩フレア・ロックを燃やし尽くし、勢い衰えず彼女に迫る。
メフディはクッと歯噛みしてスキルを発動する。

排除・衝撃リモーバル・ショック!」
「!!」

先程に比べ二段程威力が増した衝撃が放たれた。うーん、あれが切り札かな?

「切り札は出来るだけ温存したかったけど、もうしょうがないわ!」

一気に飛び掛かってきた。俺は口角を上げ、自らの体を覆う魔力防護壁を
敢えて解除する。そして剣の枷をもう一段外し、更に滾る魔力を増幅させた。

排除・十打・放・衝撃リモーバル・ディカプル・イジェクト・ショック!!!私の最高の攻撃よ!」

四方八方にとんでもない威力の衝撃が発生し、一気に俺に襲い来る。
俺は無詠唱で魔力をそのまま爆発させ周囲の事象に干渉する。俺の魔力は
メフディの魔力で作られた衝撃に干渉しそのまま吹き飛ばした。
そのまま超速で接近し脇に剣を沿える。

メフディは目の前で起こった事に目を見開き、その後溜め息を吐いた。

「…はぁ~、参ったわ。これを使っても防がれたらもう無理だわ」
「いえ、十分良い攻撃でした。感服です」
「そう言って貰えたら嬉しいわ。来年は倒させて貰うわよ」
「期待してます」

俺は剣を自然体にぶら下げる。ここでようやくルフィノの実況が耳に
聞こえて来た。

「……今ここに、剣が沿えられました!Aブロック優勝は、アラン・ベネット
 オオオオオオオォォォォォォオ!!!」

観客が猛烈な拍手と共に雄叫びをあげ、俺とメフディに賛辞の言葉を送る。

俺は右手に持っていた剣を鞘に戻し、大股で会場裏に戻った。
腕を頭の上で組み軽くストレッチをしながら、俺は観客席に向かう階段を
目指して歩く。

しかし、ふと誰かが見ている事に気が付いた。俺は視線の先に目をやる。
すると俺の網膜に映ったのは、一羽の鳥。オレンジ色の胴体に常に変色する
虹色の翼を持った鳥。その毛並みは見るもの全てを魅了しそうな輝きを
放っていた。目があった途端、鳥はビクリと体を震わせ目を逸らす。


しかし、その鳥は特に俺を嘴で突っつくなんて事はせず、数秒身じろぎした
後一瞬のうちに体を光の粒の集合体に変化させ消えてしまった。

「!?」

俺はしばし鳥がいた石の柱の出っ張りに目を向けた後、僅かに気味悪がり
ながらその場を後にするのだった。
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