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第四章 脚光を浴びる
第108話 開始
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テレッド君の知人?友人?話し相手?…になって4週間とちょっとが過ぎた。
テレッド君とは最初こそ敬語を使って固い感じの会話しか出来なかったが、
今は少なくとも知人と言える位には交友関係が深まった。1週間に2回~3回の
間隔で王城を訪ねている事もあって、ブレアもすっかり慣れてしまった。もう
あのブブブブ…と震える貴重なブレアが見れないと思うと不謹慎ながら残念だ
と思う気持ちは否定出来なかったが。
途中、アドナン王から『王城に住む気はありませんか?』みたいな事を
言われたが、丁重にお断りした。これでも俺たちは気ままな冒険者、王族と
親密な関係になりつつある事は未だ秘密なのである。
ちなみに、いつからか王都中に貼られていた『俺たち探し』のビラが
剥がされた。その事について少し話をして、いつの間にか手押しポンプを作る
羽目になったのはご愛嬌だろう。今は王城の庭の一角に3台の手押しポンプが
試験的に設置されている。
この事を父上や母上や兄上姉上に報告したら、大絶賛の嵐が返ってきた。
俺たちはパンパンに膨れてはち切れそうになっている封筒を見て、思わず苦笑い
するのだった。
そして、今日は55週5つの日。…そう、年末大祭りが開催される日である!俺は
久々の祭りに胸を高鳴らせていた。
しかし4か国交流戦の出場選手である俺たちは、日中はそれに丸々潰されると
考えていたので、賑やかな町王都巡りは夜の食事の景色にする事にした。
そして、今は王都の交流戦会場に来ている。交流戦選手の証明書を各自持った
俺たちは、3人で堂々と入る。レシアルドは一時退席中だ。ま、選手でも無い人が
選手に付いていったら問題になる事ぐらい彼も承知の上だったが。
「ふう、荷物はこれで良いかな?」
「だね。後は時間を今か今かと待つだけだよ」
選手控室に荷物を置いた俺たちは、客席への移動の途中でレシアルドを召喚する。
「おお、凄まじい熱気だな。我の戦いの機会が幾らあるかは不安で有るが、役目
が無い様なら観戦するだけでも十分楽しめそうだ」
人形態の彼は、まるで他にも観戦している若者達とまるで区別が付かない。
俺はトーナメント表を見て言った。
「初戦からちょっくらかまして来るよ」
「行ってらっしゃい。手加減はちゃんとするんだよ、その腰に下げている剣は
安全を確認してからじゃ無いと抜剣しちゃダメだよ?」
「分かってるよ」
俺は苦笑しながら言う。流石にこの場で剣を抜く程俺も馬鹿じゃ無いからな。
俺は若干大股で一階の選手待機場に移動し始めた。
丁度俺が移動を終えた時に、視界が説明を開始した。
「本日は、年末大祭り交流戦を観戦しにお越し頂き、有難う御座います!司会を
させて頂く、ルフィノ・フォーコネと!」
「解説を務める、オードラ・フェルスターです」
一際高い段で叫んだ男性と女性がそう言うと同時に、会場が一際湧いた。俺は
少し耳を魔力で保護しつつ、周りを探る。
やはりと言うべきか、同盟国の重鎮が列席していた。アドナン国王陛下は1番
中心で観戦している。近くにはテレッド君と兄弟方もいた。
左隣はシャイツ公国のヴェドラナ・シャイツ女王陛下か。右隣には他2か国の
トップが座っていた。
俺はセドリック達の方を向き、小さく手を振る。すると、遠目にも笑顔になった
のが分かった。
(心配には及ばないだろうけど、頑張って)
(おう)
念話で言葉を交わした直後、ルフィノが声を上げた。
「それではルールを説明します!ルールは至って簡単、相手が降参するか戦闘不能
状態になったと判断されれば勝ちです!ここでの戦闘不能は自動発動型の結界の
発生で判断されます!よってある程度余裕を持って回避しないとアウトになる
可能性もあるのでご注意下さい!禁止事項は他者の力を借りる、試合外で攻撃
するなど普遍的に考え非常識な行動です!」
…普遍的に考え非常識な行動って、なんか投げやりだなぁ。俺はそんな感想を
抱き、話の続きを聞く。
「尚、ステージはその都度事前に集めた選手の希望ステージからランダムに、
運営の力で用意出来る範囲で変更させて頂きます!」
だから提出書類に『好みの戦闘場所は?』なんて質問があったのか。
俺は『森と草原の境目』って答えたけど反映されるかな?
「では早速第一試合を開始します!第一試合はアラン・ベネット対
エリック・ブルドンです!試合会場は海の上の岩島!両者位置について
下さい!」
成程、地の利は相手に渡ったか。俺は備え付けの転移魔法陣を使い岩山に立つ。
「さて両者位置につきました!オードラさん、彼らをどう考えますか?」
「そうですね、エリック氏はモザルド国のSランク騎士です。前回大会までで
2回の出場経験があるので、今回で3回目ですね。これまでの傾向で、
使用武器の戦斧を使った体の軸をブラす戦法を得意としています。アラン氏
は今回大会が初出場でこの国のAランク冒険者であり、伯爵家ベネットの
出身だと得ております。そして、嘘か本当かSランク魔物の討伐経験を持つ
と言うことで実力は僅かにアラン氏が劣る可能性がありますが…見えない
勝負になりそうです」
うむ、的確な解説だな。戦斧使い…ま、遠距離からチクチク打つのは後の手に
取っておくか。
テレッド君とは最初こそ敬語を使って固い感じの会話しか出来なかったが、
今は少なくとも知人と言える位には交友関係が深まった。1週間に2回~3回の
間隔で王城を訪ねている事もあって、ブレアもすっかり慣れてしまった。もう
あのブブブブ…と震える貴重なブレアが見れないと思うと不謹慎ながら残念だ
と思う気持ちは否定出来なかったが。
途中、アドナン王から『王城に住む気はありませんか?』みたいな事を
言われたが、丁重にお断りした。これでも俺たちは気ままな冒険者、王族と
親密な関係になりつつある事は未だ秘密なのである。
ちなみに、いつからか王都中に貼られていた『俺たち探し』のビラが
剥がされた。その事について少し話をして、いつの間にか手押しポンプを作る
羽目になったのはご愛嬌だろう。今は王城の庭の一角に3台の手押しポンプが
試験的に設置されている。
この事を父上や母上や兄上姉上に報告したら、大絶賛の嵐が返ってきた。
俺たちはパンパンに膨れてはち切れそうになっている封筒を見て、思わず苦笑い
するのだった。
そして、今日は55週5つの日。…そう、年末大祭りが開催される日である!俺は
久々の祭りに胸を高鳴らせていた。
しかし4か国交流戦の出場選手である俺たちは、日中はそれに丸々潰されると
考えていたので、賑やかな町王都巡りは夜の食事の景色にする事にした。
そして、今は王都の交流戦会場に来ている。交流戦選手の証明書を各自持った
俺たちは、3人で堂々と入る。レシアルドは一時退席中だ。ま、選手でも無い人が
選手に付いていったら問題になる事ぐらい彼も承知の上だったが。
「ふう、荷物はこれで良いかな?」
「だね。後は時間を今か今かと待つだけだよ」
選手控室に荷物を置いた俺たちは、客席への移動の途中でレシアルドを召喚する。
「おお、凄まじい熱気だな。我の戦いの機会が幾らあるかは不安で有るが、役目
が無い様なら観戦するだけでも十分楽しめそうだ」
人形態の彼は、まるで他にも観戦している若者達とまるで区別が付かない。
俺はトーナメント表を見て言った。
「初戦からちょっくらかまして来るよ」
「行ってらっしゃい。手加減はちゃんとするんだよ、その腰に下げている剣は
安全を確認してからじゃ無いと抜剣しちゃダメだよ?」
「分かってるよ」
俺は苦笑しながら言う。流石にこの場で剣を抜く程俺も馬鹿じゃ無いからな。
俺は若干大股で一階の選手待機場に移動し始めた。
丁度俺が移動を終えた時に、視界が説明を開始した。
「本日は、年末大祭り交流戦を観戦しにお越し頂き、有難う御座います!司会を
させて頂く、ルフィノ・フォーコネと!」
「解説を務める、オードラ・フェルスターです」
一際高い段で叫んだ男性と女性がそう言うと同時に、会場が一際湧いた。俺は
少し耳を魔力で保護しつつ、周りを探る。
やはりと言うべきか、同盟国の重鎮が列席していた。アドナン国王陛下は1番
中心で観戦している。近くにはテレッド君と兄弟方もいた。
左隣はシャイツ公国のヴェドラナ・シャイツ女王陛下か。右隣には他2か国の
トップが座っていた。
俺はセドリック達の方を向き、小さく手を振る。すると、遠目にも笑顔になった
のが分かった。
(心配には及ばないだろうけど、頑張って)
(おう)
念話で言葉を交わした直後、ルフィノが声を上げた。
「それではルールを説明します!ルールは至って簡単、相手が降参するか戦闘不能
状態になったと判断されれば勝ちです!ここでの戦闘不能は自動発動型の結界の
発生で判断されます!よってある程度余裕を持って回避しないとアウトになる
可能性もあるのでご注意下さい!禁止事項は他者の力を借りる、試合外で攻撃
するなど普遍的に考え非常識な行動です!」
…普遍的に考え非常識な行動って、なんか投げやりだなぁ。俺はそんな感想を
抱き、話の続きを聞く。
「尚、ステージはその都度事前に集めた選手の希望ステージからランダムに、
運営の力で用意出来る範囲で変更させて頂きます!」
だから提出書類に『好みの戦闘場所は?』なんて質問があったのか。
俺は『森と草原の境目』って答えたけど反映されるかな?
「では早速第一試合を開始します!第一試合はアラン・ベネット対
エリック・ブルドンです!試合会場は海の上の岩島!両者位置について
下さい!」
成程、地の利は相手に渡ったか。俺は備え付けの転移魔法陣を使い岩山に立つ。
「さて両者位置につきました!オードラさん、彼らをどう考えますか?」
「そうですね、エリック氏はモザルド国のSランク騎士です。前回大会までで
2回の出場経験があるので、今回で3回目ですね。これまでの傾向で、
使用武器の戦斧を使った体の軸をブラす戦法を得意としています。アラン氏
は今回大会が初出場でこの国のAランク冒険者であり、伯爵家ベネットの
出身だと得ております。そして、嘘か本当かSランク魔物の討伐経験を持つ
と言うことで実力は僅かにアラン氏が劣る可能性がありますが…見えない
勝負になりそうです」
うむ、的確な解説だな。戦斧使い…ま、遠距離からチクチク打つのは後の手に
取っておくか。
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