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第四章 脚光を浴びる

第107話 白状

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俺はゆっくりと、理解して貰える範囲で嘘を交えつつ話し始める。

「私やブレアはとある理由があって大神セドリック様…いえ、セドリックと共に
 過ごす事が出来る様になりました。神としてではなく、対等な立場で、です。
 それでテレッド殿下が神の眷属となった理由としては、あの時の治療で私が
 魔力を殿下に与えた事と、その前にセドリックが加護を与えた事に原因が
 あります」
「…やはり、あなた様達も貴き方々でしたか。失礼を働き、申し訳ございません」

アドナン王は再び腰を折る。俺は体勢を戻させ、話を続ける。
…一国の王がそう易々と頭を下げるべきでは無いと思うぞ、俺は。

「お気になさらず。話を続けますが、テレッド殿下に神の力を持った加護と魔力が
 直接入り、それを殿下が受け入れた事で半分程神と人の間での眷属の契約が
 成立したのです。そこまでは良いのですが、魔力を与えたのが『神の力を一部
 持つ私の魔力』だったせいで、私と殿下の間で契約が成立しようとしている
 のです」
「そんな理由が…息子にも眷属の話は話しましたが、やはりその時が原因
 でしたか。ちなみに、契約が完全に成立するには何をするのですか?」

俺は申し訳無さそうに目を伏せる。どこまで話しているかは定かでは無いが、
幼い子供にこれを押し付ける事になったのは俺たちのせいでも有るから。

「双方の同意…即ち、殿下と私が了承すれば契約成立です。殿下にこの判断を
 任せるのは心苦しいし、何より陛下に申し訳ないです。申し訳ございません」
「申し訳ございません」

俺とセドリックは同時に頭を下げる。アドナン王は慌てた声で言った。

「お顔を上げてください!あなた様方が謝る必要はありません。息子の命が
 あっただけでも、心から喜んでおります」
「…しかし」

それとこれとは話が別な気がする、と言う言葉を咽頭で無理矢理すり潰す。
俺はテレッド殿下に悟られない様魔力で構成された目を向ける。

殿下は事の成り行きをじっと見守っている様だった。その真意は分からないが、
悪い方向でない事を願う。しかし、アドナン王はいとも簡単に言ってのけた。

「息子も、自分の事を顧みず助けてくれたあなた様方に恩義を感じております。
 まだ足りない所もある子供ですが、知人として偶に話し相手になってくれる
 だけでも喜ぶでしょう」
「ううむ、ですが殿下の気持ちを直接聞かない事には…」

本音を言うなら『責任持てません』って言いたい。王権の継承権は持たない
だろうが、王子は王子なのだ。しかし、テレッド殿下は好意的な反応を示した。

「僕からもお願いします。お二人には命の恩があります、このまま何もせず
 お別れと言うのは嫌です」

…出来れば否定して欲しかった。しかし、こうも言われるともう逃げる気持ちは
俺たちには持ち合わせていなかった。

「…分かりました。陛下と殿下のご決断を尊重させて頂きます」

決断が下されてからは実に一瞬の出来事だった。俺とセドリック、そして殿下の
同意の元、眷属の契約が実行される。

「…凄い、身体の高揚が…!」

ブレアとよく似た茶色の髪がセドリックの黄色に引っ張られクリーム色に染まる。
そして周りにうららかな春風を連想する魔力が満ち、俺とセドリックに7:3くらい
の比率で魔力上の関係が出来る。

そして、大量の(俺からしたらプールの水からバケツ一杯分汲み出した程度)の
魔力が殿下の体に吸い込まれる。そして、あたりに舞っていた魔力がシャボン玉が
弾けるが如く周りに拡散し、契約が終わる。

「…これは」

アドナン王の呟きに、俺とセドリックは同時に答える。

「「契約、成立です」」

俺は再び目の前で体の調子を見る少年の方を見る。

「改めて、よろしくお願いします。テレッド第3王子殿下」
「よろしくお願いします」

俺とセドリックは頭を下げた。王子と国民、そして契約主と契約者と言う
前代未聞の関係になった俺たちは、晴れて王室とお繋がりになったので有る。
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