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第四章 脚光を浴びる

第82話 3・回・目

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謎の脱出劇があってから2日後。俺達はいつもと変わり無く依頼を受けにギルドに
来ていた。Aランクに昇格し、間違いなく戦闘のやり甲斐は大きく上がったが、
やはり…敵に味が足りない。確かに知的な攻撃をして来たり、属性に準じた
魔法を詠唱無し(というかそもそも声帯を持ってないから当然)を使ったりと
手応えのある敵である事には間違いない、が。

そもそも俺達の肉体に傷を付けれる魔物が少な過ぎるのだ。無詠唱魔法は普通の
詠唱する魔法に比べ威力の減衰は少ないものの軌道は単調になるし無駄な魔力消費
も増える。更に魔法の『圧縮』も使っていないので並の攻撃魔法では歯が
立たない。

そんな理由もあり、俺はSランク、引いてはSSランクの依頼が来るのを
首を長くして待っているのだ。話に聞くと、AランクとSランクの依頼には難易度に
天と地の差があり、高ランク依頼のチャレンジも出来るがそれをする物好きは
よっぽど居ないんだとか。もしかしてギルドはそれも見越してチャレンジを許可
しているのかな?

「やっぱり無いね~依頼」
「ど~してかね」

レシアルド除く3人で探すが探せど探せど、中々見つからない。そろそろ一回位
出てもいいんじゃないかなとは思うが、実際どうなんだろう?
俺たちは何かしらあったらいいなと一縷の希望をかけ、受付に行った。
勿論アリシアさんの所である。下手に女性と関わると碌な事にならない気がする。

「あの、すいません。Sランクかそれ以上の依頼を探しているのですけど…
 依頼ボードに無くて」
「ああ、Sランク以上の依頼は依頼ボードには貼られていませんよ?受付で
 保管されているので」
「「「…え?」」」

刹那、俺の頭の中を大量の情報が巡り始めた!
そして数秒後、熟考した俺の頭が弾き出した答えは!

…フザケルナァ!
心の中で思い切り叫んだ。え、だったら俺達が必死こいて探していたのは一体…?
アリシアさんはそんな俺の気持ちを知ってか知らずか、『しばらくAランクの依頼
を受けるって言っていたので言いませんでしたが』と笑顔で言った。
心から俺達が探していた時間を返せと思った。八つ当たりで有ることは百も承知
だが。だが!

「はあ…じゃあその依頼って何があります?」

怒りや呆れの混ざりあった複雑な感情も一周回って逆に俺たちを冷静にさせた。
俺は溜め息を吐いて依頼を確認する。だが、アリシアさんが依頼の紙を取り出し
ペラペラ捲って整理している間に、別の声がギルド内にこだました。

「お~い!ここに『神々の意志ゴッド・インテント』のメンバーはいるか~?」

ギルマスのストレさんの声が響いた瞬間、ギルドで飲み食いしていた冒険者たちの
視線が一斉にこっちに向いた。まさか、俺たちの事?まさかぁ。

しかし、俺たちの疑問は色々な意味で一瞬で解決される事になった。

「おお、ちょうど来ていたか!アラン君達に話があってなぁ。
 ちょっと来てくれないか」
「え、ああ…まあ、はい」

正直それどころでは無い。
え…マジで俺たちの話?いつの間に二つ名(?)付けられたの?
セドリックやブレアの方を見ても、分からないと首を横に振るばかり。

(「…Aランクになるといつの間にか他の冒険者の方々から二つ名を付けて
 もらえたりします。センスは…言い始めの人の裁量に寄りますね…」)

まさか…誰が言い始めたんだ?頭の中はもうそれ以外に考えれる事があるのかと
思う程埋め尽くされ、辛うじてストレさんのお誘い呼び出しに反応出来た自分達の
情報処理能力に拍手喝采を送るべきではとも考えた。

そんなこんなで、俺たちは大きな疑問を抱えた状態で3度目のギルマスとの会談
に臨む事となったのである。


ギルド長室に移動した俺たちは、例に倣ってフカフカのソファに腰を下ろす。
そして、俺はストレさんが話を始める前にこちらから話を切り出した。

「あの…受付で呼ばれたあの二つ名(?)は誰が付けたんですか?」

取り敢えず俺が可及的に早く処理したい謎について聞く。ストレさんは僅かに
キョトンとした顔になったが、直ぐにクッと笑い答える。

「誰が言い始めたかは知らんよ。俺は人伝に聞いただけだ。ただ、全員の呼び名
 はキッチリ覚えているぞ。パーティー名は『神々の意志ゴッド・インテント』。
 んで、アラン君の呼び名が『比類なき王』、セドリック君が『不敵の神友』、
 ブレア君が『静なる内海』だったかな」

な…何という呼び名ダァ!絶対名付け主『厨二病』患ってるだろ!
俺は付けられた二つ名に対する恥ずかしさと名付け主のセンスの無さに対する
形容し難い気持ちが合わさり、特大の溜め息を吐いてしまうのであった。

「はあああああぁぁぁぁぁ~」

セドリックがポンポンと背中を叩いてくれている。ありがとう。
君の気遣いはとても嬉しいが…君も羞恥で顔が真っ赤になっているぞ。
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