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第三章 成長

第64話 金で物は言えねえぞ セドリックside

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屋根上に乗りそっと頭のみを覗かせ男を見る。
男は僕が持っていた麻袋を直に持ったまま取引相手を待っている様だった。
程なくして、取引先と思われる男がやって来た。

「待たせたな。約束の金は」
「へい、こちらに。予想よりは下回っていましたが、大金貨26枚と小銭が
 入っていましたぜ」

男はほう、と麻袋を受け取りそれを見る。そしてニヤリと笑い、それを懐に
仕舞った。

「毎度のことながら流石だな。報酬だ」
「へへ、ありがたく頂戴します」

そう言って大金貨2枚を手渡した。僕は怒りを堪え切れずにそっと地面に降り立つ。
取引先の下衆ゲスはまだ気付いて無さそうだが、金を渡した男は気がついた様だ。

「お前は…さっき俺が金をっ!」
「口を開くな。虫唾が走る」

衝撃波を飛ばし奴を吹っ飛ばす。しかし戦闘訓練も行っているのだろう、体制を
整え再び立ち上がった。取引先の奴も気が付いたが、こちらは弱いな。外の
護衛たちが護ってくれると思っているのだろう。
現に、もう逃げ出さんと走り出している。

「金さえ手に入れれば用はねえ!じゃあな!身体強化ビルド!」

急加速して逃げ出す。しかし、僕から逃れたところでもう1人、嫌アランとブレア
を含めれば3人。人の数だけ関門がある。

「まて、主を置き去りにして何処に行くつもりだ」
「っ!くる、しい…」

レシアルドは首根っこを締めてそのまま上から顔を覗き込む。彼は僕の方を見て
『早く指令を出してくれ』と言う風に首を動かした。

「ソイツには聞きたい事があるから、そのまま縛っておいて」
「承知した、主よ。…という訳だ、大人しくしておけ」

彼はそのままの体制で炎の紐を作り奴を縛った。僕は金をスった男を見る。

「さっさと諦めてくれ。逃げようとしても逃さないぞ」
「っち、死ねえ!」

男は剣を抜いて飛び掛かってきた。当然それを許すほど僕は甘くない。

「ちょっと倒れといてくれ。重力加速グラビティ禁錮バインディング
「グアッ!動けねえ…」

あっさり地面に転がされた男の急所を打ち、気絶させる。

「そう簡単に逃げれると思わないように。しっかり罪を償いな」

がっくりと力が抜けた男を僕は縛ってレシアルドに渡す。

「この道行けばアラン達がいる筈だから、コイツをそこに運んで」
「よし、分かった」

レシアルドは男を肩に担いでそのままスタスタと歩いて行った。
俺は壁際で縛られたまま震えている男に近づく。

「ひ、ひいい…お、お願いだ!金なら返す!倍にして返すから殺さないでくれ!」
「殺しはしなえよ。拘置所でちゃんと罰せられてくれ。さて、本題に入ろう。
 お前の上には誰がいる?その金の行き先を話して。どこの資金になる?」
「い、言えない!」
「言え。何回盗みを働いたかもきっちり!」

僕は最大限の威圧をかけながらそう叫ぶ。男はすっかり萎縮して縮こまった。

「ひ、ヒイイ!言う!言うから!」

ふと視線を感じ振り返ると、アランや他2人がこちらを見て各々感情を表に
出している。アランは微妙な顔で、ブレアは恐ろしい物を見た様な顔で、
レシアルドは目を丸くして心底驚いた顔で、一様に僕を見ていた。

…どうしよう。変なイメージ付けちゃったかな。僕は努めていつも通りを装う。

「あの…ね?これは、ちょっとカッとしちゃって」
「詰問の相手もうチビっちゃうよ?そんな威圧すると」

アランは若干呆れ気味にそういった。僕は慌てて言い訳を言う。

「いやあの、違うの!どうしても聞き出したくって…」
「まあ、セドリックはそう言う性格だもんね。悪人は絶対に罰すると言うか」

その先は言葉に上手くできなかった。それでもアランは理解を示す。

「ま、お話の続きをしよっか。外の護衛は伏兵含め全員縛っといたよ」
「ありがと!」

アランの報告に男は絶望の表情を浮かべる。

「ぜ、全員…」
「じゃ、教えてくれない?誰が関わっているか」


ようやく事情を聞き終えた僕たちは、例の男たちをまとめて拘置所に
引き渡した。あの下衆ゲス、最後の最後まで嘘を吐いてやり過ごそうとしていた。
そいでして、嘘を吐いている事を指摘したら今度はあっさり本当の
事を言った。そして、事情を聞いて、僕たちは少々事の大きさを実感する。

「貴族が関与しているとは、いよいよ胡散臭くなって来たな」

アランの呟きに僕は相槌を打つ。

「貴族のお家取り潰し、か。父上に知らせればどうにか出来るかな?」
「どうだろう。証拠がなければ動かせない気がする」

相手はデイルという男爵家。伯爵家で有るウチの家庭がそう簡単にどうこう
出来ると言うわけでもない気がする。しかし、余された時間も幾らあるか
分からない。先の一件で、デイル家の名が出てその流れで捕らえてくれれば
それで良いのだが、そう上手くいくとも限らないしなあ…

「取り敢えず出すだけ出してみよ、手紙」
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