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第三章 成長
第63話 殴るぞテメェ
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俺とブレアは音もなく地に足をつける。
護衛たちはすぐに俺たちに気付いた。俺たちの気を察してか、すぐに臨戦体制に
入る。護衛の一人はジリジリ近づきながらこう言った。
「何が目的でこんな裏路地に入ったか知らんが、怪我したくなきゃお家に帰りな」
「残念ながらそうは行かない。お前が強盗に関与しているならば尚更」
「お前、この取引を知っているか。ならしょうがない、死んで貰おう」
そう言って真剣を抜く。対する俺も片刃長剣を出す。剣なんて使おうもんなら
一撃で相手の武器は御陀仏だろうが、ここでそれは言うべきではあるまい。
ブレアは素手で全身、特に正拳を固めた鎧を纏って戦う気らしい。
護衛の男たちは隙のない動きでこちらに距離を詰めてきた。
俺は3方向から切り込まれる剣を同時に捌く。2つは剣で受け、最後の1つは
身を屈めて避け、空振りになり隙を晒した右手に空いた左手の手刀を入れる。
「グアッ!?」
男の1人が剣を取りこぼした。すかさずそれを掴み、遠くに投げ捨てる。
男はそれでも冷静に、柔術で俺に殴りかかって来る。この体制では避けられないと
思っているのだろう。事実、普通なら避けられん。俺は石柱を作り、
剣を受けている二人にアッパーカットを喰らわせる。
「グフウ!」
僅かによろめき剣先が鈍った。好機。俺はコンバットナイフを作って左手に
持ち、横から指に斬りかかり強引に剣を剥がす。
「…ッチ」
護衛たちは歯痒そうに俺を見る。俺は余裕を持って剣を3本拾い上げ、
纏めて一息に折った。バキイイン!とエグい音を鳴らし剣は木っ端微塵に砕ける。
粉々になった剣を俺は地面に落とし、俺も剣を消す。
「…殴り合いと行こうじゃないか」
「行きがってんじゃねえぞ、ガキが」
冷静に、去れども根源には明確な怒りが混じった声色でそう言う。俺は緩めに
構え、カウンターを狙う。
奴らは2組に分かれた。2人で俺の気を引き、最後の1人が俺の背後を取ろうと
してくる。しかし、それを知っているなら話は早い。
俺は後ろの奴の右手を掴み、足を払ってバランスを崩す。そのまま一息に振り回し
前の2人に投げる。いや、投げようとした。
「ゲフうう!!」
「おお、おお…」
隣の戦場から吹っ飛ばされてこっちまできた男が、護衛の一人にぶつかった。
ふいっとそっちを見ると、殴った後のポーズでこっちを見るブレアがいる。
「ナイスショット、ブレア」
「これは芸術点高いわあ」
軽く笑い合い、俺たちは持ち場に戻る。残り俺は未だ掴んだままの気絶済みの
1人と、素手の護衛1人だ。俺は掴んでいる手を離し、一直線に飛びかかる。
「早…グヘエ!」
反応する暇も与えず殴り飛ばす。漫画みたいに吹っ飛んだ護衛は結界に叩き付け
られた。そのまま気絶である。
「隙ありい!構えろや!」
俺が声に反応してみると、先程気絶した筈の男が殴りに来ていた。ワオ、先のは
フリだったのか。名演だなぁ。
「構えるなんてする訳ねえじゃん…こうだよ!」
「オボゴア!」
強烈な頬殴りがクリーンヒット。今度こそ気絶した男に俺は胸ぐら掴んで言う。
「殴るぞテメェ」
「殴った後なんよ」
世界が感じたであろうツッコミをブレアが代表して投げてくれた。俺は口笛を
軽く吹く。もう既に彼も終わったか。
「おし、縛るか」
あっちこっちに転がった死屍累々を回収し、そのまま縛り上げる。勿論細かい
刃付きの動けば動くほど痛む特別製。保持を纏わせて切れることもない。
「そもまま眠ってた方が良いと思うよ。聞こえてないだろうけど」
俺たちはそう言い残してその場を後にす…しません。
「居るな。4人か」
そう言った途端、4方向から高速の刃が迫ってきた。本来ならこの奇襲は
大成功と言って問題ないだろう。ま、今回については大失敗ですけど。
「…切断」
ドサドサ…俺の詠唱と同時に、奴らは頭から地面に崩れ落ちた。
「痛って…」
「あ、ごめん大丈夫?」
「うん、もう良い」
やっぱこいつは危険だな、と思ったのであった。
強力すぎる精神魔法、切断。周囲の複数の対象者に無限とも言える『苦』を
ぶつけてやる事により成立する、大量討伐魔法。自我を持ち、僅かにも死の恐怖が
ある全ての生物に有効で、範囲内では対象者じゃ無くても今のブレアみたいに
何らかの不調が現れる時がある。魔力消費量もバカにならないし、反動も凄い為
あまり使いたく無かったが、こんな裏路地なら問題ないだろう。ここまでの反動が
ある分、得られる効果も絶大だ。対象者がこの魔法に対抗し得る程の魔力を
有さない限り、一撃で意識は刈り取られる。魔力の掛けようによっては、一発で
脳死の状態にすることも理論上可能だ。やった事ないし、やる気も無いけど。
「治ったし行く?セドリックが待ってる」
「だね、縛ってから行こう」
俺たちは奇襲犯も仲良く縛り上げ、その場を後にした。
護衛たちはすぐに俺たちに気付いた。俺たちの気を察してか、すぐに臨戦体制に
入る。護衛の一人はジリジリ近づきながらこう言った。
「何が目的でこんな裏路地に入ったか知らんが、怪我したくなきゃお家に帰りな」
「残念ながらそうは行かない。お前が強盗に関与しているならば尚更」
「お前、この取引を知っているか。ならしょうがない、死んで貰おう」
そう言って真剣を抜く。対する俺も片刃長剣を出す。剣なんて使おうもんなら
一撃で相手の武器は御陀仏だろうが、ここでそれは言うべきではあるまい。
ブレアは素手で全身、特に正拳を固めた鎧を纏って戦う気らしい。
護衛の男たちは隙のない動きでこちらに距離を詰めてきた。
俺は3方向から切り込まれる剣を同時に捌く。2つは剣で受け、最後の1つは
身を屈めて避け、空振りになり隙を晒した右手に空いた左手の手刀を入れる。
「グアッ!?」
男の1人が剣を取りこぼした。すかさずそれを掴み、遠くに投げ捨てる。
男はそれでも冷静に、柔術で俺に殴りかかって来る。この体制では避けられないと
思っているのだろう。事実、普通なら避けられん。俺は石柱を作り、
剣を受けている二人にアッパーカットを喰らわせる。
「グフウ!」
僅かによろめき剣先が鈍った。好機。俺はコンバットナイフを作って左手に
持ち、横から指に斬りかかり強引に剣を剥がす。
「…ッチ」
護衛たちは歯痒そうに俺を見る。俺は余裕を持って剣を3本拾い上げ、
纏めて一息に折った。バキイイン!とエグい音を鳴らし剣は木っ端微塵に砕ける。
粉々になった剣を俺は地面に落とし、俺も剣を消す。
「…殴り合いと行こうじゃないか」
「行きがってんじゃねえぞ、ガキが」
冷静に、去れども根源には明確な怒りが混じった声色でそう言う。俺は緩めに
構え、カウンターを狙う。
奴らは2組に分かれた。2人で俺の気を引き、最後の1人が俺の背後を取ろうと
してくる。しかし、それを知っているなら話は早い。
俺は後ろの奴の右手を掴み、足を払ってバランスを崩す。そのまま一息に振り回し
前の2人に投げる。いや、投げようとした。
「ゲフうう!!」
「おお、おお…」
隣の戦場から吹っ飛ばされてこっちまできた男が、護衛の一人にぶつかった。
ふいっとそっちを見ると、殴った後のポーズでこっちを見るブレアがいる。
「ナイスショット、ブレア」
「これは芸術点高いわあ」
軽く笑い合い、俺たちは持ち場に戻る。残り俺は未だ掴んだままの気絶済みの
1人と、素手の護衛1人だ。俺は掴んでいる手を離し、一直線に飛びかかる。
「早…グヘエ!」
反応する暇も与えず殴り飛ばす。漫画みたいに吹っ飛んだ護衛は結界に叩き付け
られた。そのまま気絶である。
「隙ありい!構えろや!」
俺が声に反応してみると、先程気絶した筈の男が殴りに来ていた。ワオ、先のは
フリだったのか。名演だなぁ。
「構えるなんてする訳ねえじゃん…こうだよ!」
「オボゴア!」
強烈な頬殴りがクリーンヒット。今度こそ気絶した男に俺は胸ぐら掴んで言う。
「殴るぞテメェ」
「殴った後なんよ」
世界が感じたであろうツッコミをブレアが代表して投げてくれた。俺は口笛を
軽く吹く。もう既に彼も終わったか。
「おし、縛るか」
あっちこっちに転がった死屍累々を回収し、そのまま縛り上げる。勿論細かい
刃付きの動けば動くほど痛む特別製。保持を纏わせて切れることもない。
「そもまま眠ってた方が良いと思うよ。聞こえてないだろうけど」
俺たちはそう言い残してその場を後にす…しません。
「居るな。4人か」
そう言った途端、4方向から高速の刃が迫ってきた。本来ならこの奇襲は
大成功と言って問題ないだろう。ま、今回については大失敗ですけど。
「…切断」
ドサドサ…俺の詠唱と同時に、奴らは頭から地面に崩れ落ちた。
「痛って…」
「あ、ごめん大丈夫?」
「うん、もう良い」
やっぱこいつは危険だな、と思ったのであった。
強力すぎる精神魔法、切断。周囲の複数の対象者に無限とも言える『苦』を
ぶつけてやる事により成立する、大量討伐魔法。自我を持ち、僅かにも死の恐怖が
ある全ての生物に有効で、範囲内では対象者じゃ無くても今のブレアみたいに
何らかの不調が現れる時がある。魔力消費量もバカにならないし、反動も凄い為
あまり使いたく無かったが、こんな裏路地なら問題ないだろう。ここまでの反動が
ある分、得られる効果も絶大だ。対象者がこの魔法に対抗し得る程の魔力を
有さない限り、一撃で意識は刈り取られる。魔力の掛けようによっては、一発で
脳死の状態にすることも理論上可能だ。やった事ないし、やる気も無いけど。
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