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第三章 成長
第60話 おっかない辛子
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3日後。冷え込む夜も多くなってきた頃。
俺達は溜まりに溜まった魔石と魔物由来の素材の売却に来ていた。
というのも、合計すると8000体分にも昇る魔石と素材をギルドに持って行ったの
だが、受付側に『多すぎて買い取れません』と突っ撥ね返されたのだ。
だから分割で1日200体分位で分けて売ることにしたのだ。しかし、全部売る気は
無い。理由は…特にない、かな。
「では、こちらを買い取らせて頂きます。大金貨17枚と金貨1枚です」
「ありがとうございます」
ホクホクと貰った金貨たちを抱える。一昨日コレを初めて見た時は正直かなり
ビビったけど、もう慣れた。だって、2日連チャンで見てるんだもの。
俺たちは外に出て、待っててくれてるセドリックの元に向かう。レシアルドも
待ってると言っていたな。俺とブレアは小走りで彼らの元に向かう。
「あ、お疲れ~。今日いくら貰えた?」
「こんなもんよ」
袋に詰めた金貨をチャリチャリ鳴らしながら渡す。セドリックはそれを数秒見た
後、俺と同じ様な感じでそれを創作空間に放り込んだ。
「…慣れって怖いね」
「本当に」
末恐ろしい…という表情で収納のために作った入り口を一瞥し、それを消した。
現段階で、貯金、大金貨47枚と大銀貨3枚。日本円で473万円。
プロ野球選手の最高クラス年収とほぼ同額のペースで稼いでいる事になる。
その内金銭感覚が狂いそうで怖いな。
「…何かしら買って排出する?」
「買いたいものがない。ブレアやレシアルドはどう?」
「珍しい魔導書が有るなら欲しいけど…」
「我は辛口の肉が食べたい」
…ひとまず書店行く?俺たちは久しぶりの休暇を満喫する為、王都の街を
歩き始めた。
という訳でこんにちは、王都の巨大書店。この前個人的に言ったあの書店の
10倍は軽く蔵書がありそうな書店に来ています。どうやらこの書店、
王都の街役所が直々に管理しているらしく、物価も前に行ったそれより
1.5倍~2倍増くらいになっていた。
「おお…魔導書も多い!魔物の図鑑も…」
中等、高等魔法だけでは無い。最高等魔法に関する論文のような魔導書に、
契約や主従と言った一定の準備を要する魔法を簡略化するための魔法陣や
その他必要なものなどが書かれた書籍、更にはSSクラスの魔物や聖獣、
亜人族まで細かく纏められた図鑑もある。その品揃えに、俺は驚嘆した。
スキル『全知全能』を使えば、一度得た知識は忘れる事がないし
一を聞いて十を知る的なことも出来る。しかし、その『一』を知る為にも
こう言った学を深めることは重要だ。
「欲しいもの全部買える金はあるし、浪費じゃなければ使っても
良いんじゃない?」
本を手に取ったり戻したりしている俺を見かねてか、
セドリックがそう言った。俺は少しバツが悪くなり、ヘヘッと笑う。
結果、この場で金貨3枚使った。日本円15万円である。
「案外減らない?」
「確かに」
前の買い物で買ったモノが特殊すぎる事にこの者たちは気が付いていない。
「おし、もうちょい買うもの買って飯食うか」
再び、俺たちは歩き出す。
次に来たのは商店街。いつも使う辛子より更にワンランク上の辛味を持つ
それを買うために来たのと、珍味を探す為だ。
「一旦別れない?各々買いたいものがあるでしょう」
セドリックの提案を、俺は快諾する。という訳で、俺とブレア、
セドリックとレシアルドのペアに分かれて商店街を散策開始する。
俺たちが来たのは、香辛料の店だ。腰下エプロンを身につけたガタイのいい
オジサンが出迎えてくれた。
「へい、らっしゃい!何をお探しで?」
「辛子を。辛さは最高で」
そう言うと、店主さんは怪訝な顔をしてこっちを見た。
「大丈夫かい、そんな物?ウチの香辛料の最辛はマジでとんでもねえぞ」
「んーと、コレよりもっと効く辛子が欲しいって知り合いが言っていたので、
ちょうど良さげな物有りませんか?」
俺は普段使っている最辛の辛子を差し出す。
「ふむふむ、この位なら…ちょっとコッチだ!着いてきな!」
俺たちは店の右端近くに行き、ズラリと並んだ辛子を見る。辛さに一番弱いブレア
は既にキツそうだ。
「ブレア、大丈夫?外で待っててもいいよ」
「いや、大丈夫。ここで慣れないと買い終わった後が辛そう」
「そっか」
店主さんが辛子の小瓶を二つ取って俺たちに差し出した。それぞれを交互に
差し出しながら説明を開始する。
「こっちの奴が貸して貰った辛子のもう一等級上の辛さの辛子だ。んでもって、
こっちが最辛の辛子だな。コイツは貸して貰ったやつの四等級上だな」
「ちょっと味見しても?」
「ああ、ええよ。但し、どうなっても責任は取れん」
そう言われると怖いのですが。茶色の瓶を受け取った俺はそれを開ける。
「匂いから既に辛い…」
「ソイツは辛子の原料から取れるエキスを100倍位に濃縮した物を集めた
奴だ。販売してくれた奴が物好きでね」
恐る恐る付属の楊枝でほんの少し掬い、口でそれを舐めとる。
その判断を後悔するのにさほど時間は要さなかった。
俺達は溜まりに溜まった魔石と魔物由来の素材の売却に来ていた。
というのも、合計すると8000体分にも昇る魔石と素材をギルドに持って行ったの
だが、受付側に『多すぎて買い取れません』と突っ撥ね返されたのだ。
だから分割で1日200体分位で分けて売ることにしたのだ。しかし、全部売る気は
無い。理由は…特にない、かな。
「では、こちらを買い取らせて頂きます。大金貨17枚と金貨1枚です」
「ありがとうございます」
ホクホクと貰った金貨たちを抱える。一昨日コレを初めて見た時は正直かなり
ビビったけど、もう慣れた。だって、2日連チャンで見てるんだもの。
俺たちは外に出て、待っててくれてるセドリックの元に向かう。レシアルドも
待ってると言っていたな。俺とブレアは小走りで彼らの元に向かう。
「あ、お疲れ~。今日いくら貰えた?」
「こんなもんよ」
袋に詰めた金貨をチャリチャリ鳴らしながら渡す。セドリックはそれを数秒見た
後、俺と同じ様な感じでそれを創作空間に放り込んだ。
「…慣れって怖いね」
「本当に」
末恐ろしい…という表情で収納のために作った入り口を一瞥し、それを消した。
現段階で、貯金、大金貨47枚と大銀貨3枚。日本円で473万円。
プロ野球選手の最高クラス年収とほぼ同額のペースで稼いでいる事になる。
その内金銭感覚が狂いそうで怖いな。
「…何かしら買って排出する?」
「買いたいものがない。ブレアやレシアルドはどう?」
「珍しい魔導書が有るなら欲しいけど…」
「我は辛口の肉が食べたい」
…ひとまず書店行く?俺たちは久しぶりの休暇を満喫する為、王都の街を
歩き始めた。
という訳でこんにちは、王都の巨大書店。この前個人的に言ったあの書店の
10倍は軽く蔵書がありそうな書店に来ています。どうやらこの書店、
王都の街役所が直々に管理しているらしく、物価も前に行ったそれより
1.5倍~2倍増くらいになっていた。
「おお…魔導書も多い!魔物の図鑑も…」
中等、高等魔法だけでは無い。最高等魔法に関する論文のような魔導書に、
契約や主従と言った一定の準備を要する魔法を簡略化するための魔法陣や
その他必要なものなどが書かれた書籍、更にはSSクラスの魔物や聖獣、
亜人族まで細かく纏められた図鑑もある。その品揃えに、俺は驚嘆した。
スキル『全知全能』を使えば、一度得た知識は忘れる事がないし
一を聞いて十を知る的なことも出来る。しかし、その『一』を知る為にも
こう言った学を深めることは重要だ。
「欲しいもの全部買える金はあるし、浪費じゃなければ使っても
良いんじゃない?」
本を手に取ったり戻したりしている俺を見かねてか、
セドリックがそう言った。俺は少しバツが悪くなり、ヘヘッと笑う。
結果、この場で金貨3枚使った。日本円15万円である。
「案外減らない?」
「確かに」
前の買い物で買ったモノが特殊すぎる事にこの者たちは気が付いていない。
「おし、もうちょい買うもの買って飯食うか」
再び、俺たちは歩き出す。
次に来たのは商店街。いつも使う辛子より更にワンランク上の辛味を持つ
それを買うために来たのと、珍味を探す為だ。
「一旦別れない?各々買いたいものがあるでしょう」
セドリックの提案を、俺は快諾する。という訳で、俺とブレア、
セドリックとレシアルドのペアに分かれて商店街を散策開始する。
俺たちが来たのは、香辛料の店だ。腰下エプロンを身につけたガタイのいい
オジサンが出迎えてくれた。
「へい、らっしゃい!何をお探しで?」
「辛子を。辛さは最高で」
そう言うと、店主さんは怪訝な顔をしてこっちを見た。
「大丈夫かい、そんな物?ウチの香辛料の最辛はマジでとんでもねえぞ」
「んーと、コレよりもっと効く辛子が欲しいって知り合いが言っていたので、
ちょうど良さげな物有りませんか?」
俺は普段使っている最辛の辛子を差し出す。
「ふむふむ、この位なら…ちょっとコッチだ!着いてきな!」
俺たちは店の右端近くに行き、ズラリと並んだ辛子を見る。辛さに一番弱いブレア
は既にキツそうだ。
「ブレア、大丈夫?外で待っててもいいよ」
「いや、大丈夫。ここで慣れないと買い終わった後が辛そう」
「そっか」
店主さんが辛子の小瓶を二つ取って俺たちに差し出した。それぞれを交互に
差し出しながら説明を開始する。
「こっちの奴が貸して貰った辛子のもう一等級上の辛さの辛子だ。んでもって、
こっちが最辛の辛子だな。コイツは貸して貰ったやつの四等級上だな」
「ちょっと味見しても?」
「ああ、ええよ。但し、どうなっても責任は取れん」
そう言われると怖いのですが。茶色の瓶を受け取った俺はそれを開ける。
「匂いから既に辛い…」
「ソイツは辛子の原料から取れるエキスを100倍位に濃縮した物を集めた
奴だ。販売してくれた奴が物好きでね」
恐る恐る付属の楊枝でほんの少し掬い、口でそれを舐めとる。
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