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第三章 成長
第58話 希少種中の希少種
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結局、あの後レシアルドが蹂躙をしてくれたお陰で俺たちは出る幕が無かった。
流石、最強竜…そんじょそこらの魔物ではかすり傷を付けることすら叶わせ
ないとは。本当に、セドリック…君、なんて獣と契約したの?
ここは一応最上階。今、一応ラスボスと対峙している。何故ここまで『一応』を
連呼するか。だって、ねえ…?こう言った言い方は失礼に値するけど、正直
弱すぎる。2日前に戦った強化されたディザードゴブリンですらあの強さだ。
他のボスに比べれば全然強かったが、それでも戦闘は3分足らずで終わっている。
セドリックはレシアルドと戦っているから戦闘らしい戦闘はしているけど、
俺とブレアに至っては0だ。『一応』を付けてしまう俺を許してほしい。
まあ、ダンジョンは攻略してもそれらの半数以上は時間を掛けて自動で復活するん
だよね。んで、復活の時に攻略難易度が増すこともあるから、
それに期待したい物だ。
そんなこんなで今、ラスボス戦です。見た目はでっかいリザードマン。鑑定した
限り、自我を持って巨大化した突然変異種であるアークリザードマンと言うらしい。
「グルウウ…人間がこんな所に何の用だ…」
「…倒しに来た、と言ったら?」
「…殺される理由を知りたい。何故だ?」
「それは…」
一昨日のアイツに比べ、このリザードマンは随分知的に見える。自我を持つ魔物は
殆どが攻撃的な思考を持っている筈だが…
「理由も無しに殺そうと言うのか?我は人を殺したことは無いぞ」
リザードマンがこちらを睨みつけて来る。俺はチラリとブレアを見た。
それを受けた彼は2秒ほどリザードマンを見つめ、一つ頷く。
…どうやらこのリザードマン、希少中の希少種らしい。自我を持つ魔物で攻撃的で
無いとは。
レシアルドも驚いた目付きで奴を見ている。
「驚いた。自我を持ち、かつ穏健な性質を持つとは…」
3000年の時を過ごして来た彼ですらこの反応。それを聞いた奴は、嫌そうな顔で
それに応じる。
「我は普通だ。他の奴らが異常なだけだ。分かったならさっさと去ってくれ、
折角ここまで登ってやっと安息出来ると思案していたらそれすら邪魔され我は
今不快なのだ」
グルウウウウ…と再び威嚇を向けられる。こうなられては取り付く島もない。
「我は静かな生活を望む。それを邪魔そう物なら対抗させてもらうぞ」
武器を握りしめ、攻撃の構えを取る。俺たちはコレはいけないと、
慌てて弁護する。
「いや、邪魔する気はない、から。取り敢えず、それを下ろしてくれ」
「先程倒そうとほざいて無かったか?」
それは…そうだけど…。前言撤回が通じるとも思えない。
どうしようかと悩む。リザードマンは威嚇レベルマックスで俺達に吠えてきた。
「我は人が嫌いだ。我が魔物だと言うだけで刃を向けてくる。そんな奴等の
言い分なぞ聞きたくないわ!」
分かったなら去れ!と責め立てるように追い出されてしまった。俺たちは
そのままボス部屋から離れてその場に集まる。
セドリックは心底悔しそうな顔で溜め息を吐く。
「ああ言われると僕としてはすっごく辛いな…」
「何かしてやれないの?その、神の力的な何かで」
俺は鮮少な希望を掛けそう聞く。彼は小さく首を横に振った。ダメかあ…
「魂への干渉はさほど難しい話では無いけど…生物への干渉は…
難しいと言うより出来ない。鉄の掟だから」
彼の歯痒い思いを考えれば俺の悔しさなんて高が知れているだろう。
俺は思わず顔を背けた。レシアルドやブレアはその光景を見て彼等なり
の案を出そうと考えている様に見える。しかし、時間は無情にも
過ぎてしまった。
3分程経ったか。俺たちは、諦めきれない諦めをつけその場を
後にするのだった。他の人が聞けばたかが魔物に何をそんなにムキに
なるのか分からないと言う人もいるだろう。しかし、俺たちはこの世の
不条理…不平等さを改めてぶつけられるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなこんなで、残りの2日間も魔物討伐をし続け選考会に終了の鐘が鳴り響いた。
俺たちは朝の8時ごろに6日ぶりに山を降りて集合場所の草原に帰ってきた。
壇上にはストレさんが立って労いの言葉をかけている。
「皆の者、6日間お疲れだった。選考会の評価決定はこの後直ぐに始める。
評価に期待しておいてくれ!」
大きな拍手と共にストレさんは降壇した。僅かに顔を顰めたが、開催の時のアレに
比べれば幾分かマシである。皆さんお疲れなのだろう。俺たちは特に疲れた
と言うことはないが、3日前のあの一件は結構…来たな。
「アラン、みんな歩き始めてる…」
セドリックに声をかけられ、俺はいかんいかんと慌てて側に駆け寄る。
その後、査定カウンターに並び、自分達の順番が来るのを待つ。
ちなみに、この場にレシアルドは居ない。参加してない男が急に来たとなると
色々問題だろう。
流石、最強竜…そんじょそこらの魔物ではかすり傷を付けることすら叶わせ
ないとは。本当に、セドリック…君、なんて獣と契約したの?
ここは一応最上階。今、一応ラスボスと対峙している。何故ここまで『一応』を
連呼するか。だって、ねえ…?こう言った言い方は失礼に値するけど、正直
弱すぎる。2日前に戦った強化されたディザードゴブリンですらあの強さだ。
他のボスに比べれば全然強かったが、それでも戦闘は3分足らずで終わっている。
セドリックはレシアルドと戦っているから戦闘らしい戦闘はしているけど、
俺とブレアに至っては0だ。『一応』を付けてしまう俺を許してほしい。
まあ、ダンジョンは攻略してもそれらの半数以上は時間を掛けて自動で復活するん
だよね。んで、復活の時に攻略難易度が増すこともあるから、
それに期待したい物だ。
そんなこんなで今、ラスボス戦です。見た目はでっかいリザードマン。鑑定した
限り、自我を持って巨大化した突然変異種であるアークリザードマンと言うらしい。
「グルウウ…人間がこんな所に何の用だ…」
「…倒しに来た、と言ったら?」
「…殺される理由を知りたい。何故だ?」
「それは…」
一昨日のアイツに比べ、このリザードマンは随分知的に見える。自我を持つ魔物は
殆どが攻撃的な思考を持っている筈だが…
「理由も無しに殺そうと言うのか?我は人を殺したことは無いぞ」
リザードマンがこちらを睨みつけて来る。俺はチラリとブレアを見た。
それを受けた彼は2秒ほどリザードマンを見つめ、一つ頷く。
…どうやらこのリザードマン、希少中の希少種らしい。自我を持つ魔物で攻撃的で
無いとは。
レシアルドも驚いた目付きで奴を見ている。
「驚いた。自我を持ち、かつ穏健な性質を持つとは…」
3000年の時を過ごして来た彼ですらこの反応。それを聞いた奴は、嫌そうな顔で
それに応じる。
「我は普通だ。他の奴らが異常なだけだ。分かったならさっさと去ってくれ、
折角ここまで登ってやっと安息出来ると思案していたらそれすら邪魔され我は
今不快なのだ」
グルウウウウ…と再び威嚇を向けられる。こうなられては取り付く島もない。
「我は静かな生活を望む。それを邪魔そう物なら対抗させてもらうぞ」
武器を握りしめ、攻撃の構えを取る。俺たちはコレはいけないと、
慌てて弁護する。
「いや、邪魔する気はない、から。取り敢えず、それを下ろしてくれ」
「先程倒そうとほざいて無かったか?」
それは…そうだけど…。前言撤回が通じるとも思えない。
どうしようかと悩む。リザードマンは威嚇レベルマックスで俺達に吠えてきた。
「我は人が嫌いだ。我が魔物だと言うだけで刃を向けてくる。そんな奴等の
言い分なぞ聞きたくないわ!」
分かったなら去れ!と責め立てるように追い出されてしまった。俺たちは
そのままボス部屋から離れてその場に集まる。
セドリックは心底悔しそうな顔で溜め息を吐く。
「ああ言われると僕としてはすっごく辛いな…」
「何かしてやれないの?その、神の力的な何かで」
俺は鮮少な希望を掛けそう聞く。彼は小さく首を横に振った。ダメかあ…
「魂への干渉はさほど難しい話では無いけど…生物への干渉は…
難しいと言うより出来ない。鉄の掟だから」
彼の歯痒い思いを考えれば俺の悔しさなんて高が知れているだろう。
俺は思わず顔を背けた。レシアルドやブレアはその光景を見て彼等なり
の案を出そうと考えている様に見える。しかし、時間は無情にも
過ぎてしまった。
3分程経ったか。俺たちは、諦めきれない諦めをつけその場を
後にするのだった。他の人が聞けばたかが魔物に何をそんなにムキに
なるのか分からないと言う人もいるだろう。しかし、俺たちはこの世の
不条理…不平等さを改めてぶつけられるのだった。
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そんなこんなで、残りの2日間も魔物討伐をし続け選考会に終了の鐘が鳴り響いた。
俺たちは朝の8時ごろに6日ぶりに山を降りて集合場所の草原に帰ってきた。
壇上にはストレさんが立って労いの言葉をかけている。
「皆の者、6日間お疲れだった。選考会の評価決定はこの後直ぐに始める。
評価に期待しておいてくれ!」
大きな拍手と共にストレさんは降壇した。僅かに顔を顰めたが、開催の時のアレに
比べれば幾分かマシである。皆さんお疲れなのだろう。俺たちは特に疲れた
と言うことはないが、3日前のあの一件は結構…来たな。
「アラン、みんな歩き始めてる…」
セドリックに声をかけられ、俺はいかんいかんと慌てて側に駆け寄る。
その後、査定カウンターに並び、自分達の順番が来るのを待つ。
ちなみに、この場にレシアルドは居ない。参加してない男が急に来たとなると
色々問題だろう。
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