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第三章 成長

第46話 You're kidding!

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「これは…」

傷がすっかり治り身を起こした冒険者の方々は、今し方俺が起こした人間離れした魔法に対してか、はたまた自らの体の著しい変化に対してか、驚きを隠せていなかった。

「大丈夫ですか?傷は治しましたが、無理はなさらないで下さい」

俺は努めてこれ以上面倒を起こさない様、当たり障りの無い言葉を言った。うん、言った。言ったはずだ。

「これは、一体…」

怪我をしていた男の冒険者の一言を皮切りに、全員が一斉にこちらを見た。

「「「「どういう事(ですか)(なんだ)だ!?」」」」

おおう。タイミングが完全一致。しかし、俺は困ってしまった。緊急を要していたとはいえ、扱える人は問答無用で宮廷魔法士や神官魔法師などの出世ルートが確約される魔法である最高等魔法。更に使える人が他の属性に比べ少ない光属性。これらを満たす魔法を放った俺を周囲が放っておく訳が無かった。

「いや…なんでも…無いですよ…本当に…」

俺はどう言ったら正しいか考えながら言う。しかしこう言う時に限って都合良くは出てくれない物だ。大した言葉も出ずに固まってしまう。

うーむ。前世では『営業スマイル』と『営業トーク』で上手い事やりくり出来てたんだがなあ。元々トーク術が高い方では無いので、切磋に上手い言い訳が出来なくなっている。

「今のは…最高等魔法、ですよね?なんでこんな所にいる人が…」
「あ~…違いますよ?ちょっと威力が強い、高等魔法です」

何とか隠そうと努力する。その状況を見ていたセドリックがポツリと呟いた。

「なんか、この状況前にも見た気がする」

うん、あったね。だけどセドリックが逃げて無いだけ成長だよ。

「高等魔法って…威力が強いの次元ではない気が…」

否、一応高等魔法の空間内再生エリアハイヒールでも本気出せばあれ位の威力は出せるけども。それを言ってしまうと余計に話が拗れる気がする。俺はヘラッと笑って空惚ける事にした。使った本人が覚えてないなら何も言われまい。

「そんな~気にし過ぎでは?人のは自分のより大きく映るって言いますし」
「そう、何ですか、ね?」

おし。情報くれた女の冒険者さんが揺らいでる!ここに畳み掛けよう!

「そうですよ!第一、最高等魔法を使える人がこんな所にいる訳無いじゃないですか!ハハハ!」
「…ですよね。見間違いでした!」

よし、勝った!心の中で思い切りガッツポーズを作る。一人を説得したことにより、周りの冒険者の方々も信用してくれてる!そんな事を思っていると、ブレアが消え入るような声で言った。

「…無理矢理すぎない?」

気にするな。この世には勢いで押し切る事なんてごまんと有るさ。自分に言い聞かせるようにそう考える。

俺はここで休憩するのは得策ではないと考え、セドリックとブレアを連れて広場を足速に後にした。


「良かったね。上手く誤魔化せて」
「本当に…それ」

セドリックの憐れみも混じっている慰めに俺は深く溜め息を吐く。

「迂闊に最高等魔法あんなモノ使うんじゃなかった」

俺の反省に、ブレアは話を切り替えようと魔物の話をする。

「ま、それは置いておいて。魔物の話だよ。なんとなく現像すると、かなり異端な見た目になっちゃった」
「え、どんな?」

でっかい大猿ではないかも知れないが、異端な見た目って…

「なんか…ゴブリンの体型をアンバランスにしてでっかくして、腕とか肩とか脛とかに赤い鱗を貼り付けた様な見た目」
冗談でしょうYou're kidding!!」

これまた珍妙な。大猿よりもっと酷い見た目だぞ、それ。

「まあ、行ってみれば分かるんじゃない?」

セドリックののほほんとした一声に、俺たちの考えは封じられる事になった。

「ま、そうだな」
「行って負けるは無いだろうし。…ましてや3人揃ってるし」

単騎で純度30%床の石にヒビ入れる奴が3人居て、貫通できない鎧なんてあるのか?

「じゃ、まあ休憩は後にして、ひとまず進もうか」
「だね」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そこからは、魔物も頻繁に出て来て一気に難易度が増していた。

「ようやく噛みごたえのある階層に来たね」
「だね」

俺の呟きに、二人が同調する。現在20階。未だ例の珍生物は出て来ていない。恐らくこのダンジョンのボスなのだろう。俺たちも気を改めて引き締め、ダンジョンを進んでいた。

「お…リザードマンだ」

全身を青色の鱗に包んだリザードマンが出て来た。鑑定した限り、先の戦闘で戦った(ブレアの一発で終わった)オーガに比べれば、その力は歴然である。自我はない。となると中ボスくらいの立ち位置かな?それなりに耐久力もありそうだ。

「ブレア、行く?」
「行く。俺の武器がどれ位の硬さを持つのか知りたいし」

俺たちは少し離れてブレアの戦闘を見始めた。
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