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第二章 駆け出し

第35話 岩石破壊訓練、苦しそう

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一日の休暇を終えた俺たちは、創作空間の個室に帰って来ていた。結局あの後、ハンバーガーがこの世界では俺たち以外に知る人が居ないということを説明し夕食にハンバーガーを作ることを約束して別のお店に行くことになった。夜にハンバーガーはどうなんだ?とも思ったが、肉の油を減らしたり調味料を変えて脂質や炭水化物を減らせば大丈夫だろう。

「この前食べたハンバーガーもおいしいけど夜食べるときはこっちのハンバーガーの方が良いね」
「だぁろ~??」

やはりハンバーガーパワーは偉大だな。少し味や油の量を変えても、万人受けするその良さが全く崩れない。しかも自分で1から作っているので、栄養の調整とかもやりたい放題だし。もっと前世の食事を作ってみても良いかもしれない。

「さて、明日からは新しい訓練に入るから、今日は早めに寝た方が良いよ。並みの厳しさの鍛錬ではないぞ?」
「重力加速度訓練で良いだけしごかれてるからもうどんなものが来ても受けてやるよ」
「よし、その意気だ」

ちなみに、ブレアの重力加速度訓練最高到達Gは168Gだ。俺達には届かないものの精神力もかなり鍛えられていると思われる。

ブレアが部屋に帰った後、俺はセドリックと明日の鍛錬の話し合いをし始めた。

「明日からの鍛錬だけど、魔力操作力向上の鍛錬だよね?また作るの?必要なら作っておくけど」
「あー大丈夫。その為にもこの前買い物に行ってきたんだから」

セドリックの言うアレとは、バジ隕鉄より重く硬い金属であるバール銅を超圧縮した金属塊である。サッカーボール大のバール銅を粉レベルまで小さくして、それを集めて押し固めた極めて硬い金属である。確かにアレは硬いが、制作に時間が掛かるため大量に用意することは難しいと頭を悩ませていたのだ。

しかし、俺はこの前の買い物でそれを打開するとあるものを買ってきたので丁寧に木箱に梱包されているそれを出してセドリックに見せる。

「なに、これ?黒くて…きめ細かい」

小指の爪のさらに半分程のそれは、黒くて所々が灰色や白色に色が抜け落ちていた。

「それ、床の石。市場に売ってたから買ってきた」
「床の石!?本物!?」

慌ててセドリックは鑑定ジャッジを発動し、目の前の小石を凝視する。

「……確かに床の石だ。いくらなの、これ?」
「大金貨2枚。これだけで持ち金がほぼ溶けた」
「やっぱり、この次元になるとそれ位の値はするか…」

この小石は床の石といい、ダンジョンや未開の洞窟などの最深部で、かつ地殻変動が活発に起きている限られた場所にしか生成されない超・超・超貴重な石である。だからこんな小石でもそれ位の値は妥当、いや安い方かも知れない。当然、そんなレアリティ高い物なのでその特性も一癖も二癖もある。

まず、堅い。とにかく堅い。圧縮バール銅なんて比べる事すら憚られる程。全ての物理攻撃を無効化する強度を持ち、最高等魔法を10人がかりでぶつけてもヒビ1つ入れることを許さない。それこそ地震が起きてもその規模によってはうんともすんとも言わない程である。直接触ったのはこれが初めてなので分からないが、俺1人が本気でコイツ床の石を壊しにかかっても、破壊は叶わないだろう。出来て致命的なヒビを入れる程度である。ただ、そんな曲者も一度手に入れてしまえば身の丈にもなる巨大なそれでも作れてしまうのも事実である。ひとまず、俺たちは野球ボール程の平べったい床の石を作り鍛練場に移動した。

「ふう…じゃあ、役者も揃ったしアレ、壊すか」
「だね」

周囲に保護と修復の結界を貼り準備万端となったので、本格的にコイツを壊しに掛かる。

断裂・超過オーバー・ブレイキング!」
威力拡張・真バーン・スプリード・テル!」

最高等魔法の中でも、限られた者にしか使えない魔力消費量も一般魔法の中で随一の魔法である。更に、魔力操作によりブレアに習得して欲しい技術、『圧縮』を込めているので威力も何十倍増しだ。大体二人だけで五百人分の最高等魔法を放った事になる。

ピシッ、パキッ、ピシピシッ

膨大な魔力の衝撃波の中から出てきたのは、先程と何ら変わらない姿を見せる床の石であった。

「…マジかよ」
「え~嘘お」

手に取って光に照らして見る限り、ヒビは入っているらしい。しかし、余りに浅い。確かにヒビが入っただけマシだろうが、もう少し入ると思っていた。

「こんなん放ったらコイツ床の石があるダンジョンなんて一瞬で吹っ飛ぶな」
「それ程硬いんだろうね」

これを買った店長曰く、これでも不純物が混ざっているらしい。純粋な床の石は完全な黒色でもっと硬いらしい。これ以上硬いって、一体どんなだ…

「ま、まだ手はあるし地道に試していこ」
「そだね」

そう、まだ手は100でも200でもある。スキル『創作・置換』を使えばこのヒビを更に深くする事ぐらいならできるだろう。俺たちは再び石から離れて魔法を打ち始めた。
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