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第二章 駆け出し

第23話 圧倒的に良心が…

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俺たちはブレアを仲間に加えた後、瞬間移動テレポートで王都に帰って来ていた。と言っても、城壁の外であるが。

「止まれ。身分証明書を……ってこの前の。調子はどうだ?」
「まあ、悪くは無い…ですかね」

この人はヤイロさん。初めて王都に来た時に通行証を出してくれたあの人だ。ヤイロさんは俺たちとロープで縛られたブレアを見て、若干顔を顰める。

「その感じを見ると、奴隷を売りに来たとかそういった所か?」
「そうですね。野営中に私物を盗もうとした盗人です。身分証はこっちです」
「よし、通っていいぞ。奴隷オークションは2つ目の角を左だ」
「了解しました」

俺たちはギルドカードを提示して、第一関門街の城壁を通り抜ける。



時は20分前に遡る。

「まず、ブレアが王都で市民権を得る為には王都に入らなければならない。その為にも俺たちは捕まえた盗人を奴隷として売りに来たと言う体裁で王都に入り、ブレアを奴隷として買うことで市民権を得よう」
「了解しました」
「奴隷を買うときのお金はどうする?」

セドリックの心配は俺も考えていたが、おそらくこれで切り抜けられるという方法を話す。

「依頼で稼いだ分の金額と井戸やトロッコ作りで余ったバジ隕鉄を売ったお金とケルベロスの毛皮で合わせればなんとかなるだろう」
「……作り物なのに?」
「100%オリジナルだからまあ…売る量を調整すれば…いいんじゃ…」

俺だってこんな詐欺まがいな事してお金なんて稼ぎたくない。ただ、鉱物とかが多く出て困る人は居ないから経済が動かない程度なら良いのではとは思う。俺のしょんぼり顔を察したのかセドリックが明るめの声で擁護する。

「まあこの際しょうがないか」
「人1人の人生掛かってるって考えればちょっとの鉱物なんて可愛いもんだろ」

自分に言い聞かせるように言っても、体が少し震えちまう。息を一つ吐いて、準備に入る。

「ブレア、ちょっとだけごめんね」
「いえ、大丈夫です」

ロープでブレアの手ごと体を縛り、手首も一緒に括っておく。あらぬ疑いを掛けられぬよう、きつく結んでおいた。



そして時は現在に戻る。

俺たちはまず依頼の報酬、バジ隕鉄の売却の為冒険者ギルドに来ていた。ブレアには表で柱に括り付けてさもこれから売られる奴隷のように振る舞って貰って、セドリックにはそれを監視している風に装ってもらう。

「これがゴブリンの魔石と、ムビリグサです」

俺はどさどさと袋の荷物を纏めて渡して、依頼の達成を報告する。

「はい、確かに。…ええと、ゴブリンの魔石が12個に、ムビリグサが29本ですね。では、銀貨18枚と大銅貨が45枚と5枚で大銀貨2枚と銀貨3枚が報酬になります。こちらになります」
「有難うございます」

アリシアさんから報酬を貰ってすぐに足速に買い取り受付に並びケルベロスの死骸とバジ隕鉄を用意する。

「はい、次の方~今日はどう言った御用件でしょうか?」
「買取をお願いしたいのですが」
「はい、ではこちらのカウンターにご提示願います」

俺はケルベロスの死体とバジ隕鉄の延べ棒をカウンターに置く。すると、受付の人が目を丸くしてバジ隕鉄を見た。

「すみません、こちらの鉱物ってもしかして…バジ隕鉄だったりします?」
「えっと、そうだと思います。イエローイノアの森林にある崖に剥き出しになっていたので採取して加工して来ました」

即興で考えた言い訳だからか若干疑われているようだ。まあ、しょうがないと言われたらそこまでだ。

「崖に…剥き出しで?加工って…むずかしい筈じゃ…」
「…はい」

まあ、かなり流通量が少ないからな。剥き出しで加工までしたなんてケース少ないに決まってる。受付の人は不承不承だが了解し、計算してお金を渡してくれた。

「こちらケルベロスの分の大銀貨2枚に、バジ隕鉄の分の大金貨3枚になります」

…ん?ちょっと待って。大3枚!?大じゃなくて!?あんな少しで日本円30万円の価値があるなんて…

「あ、ありがとうございます」

うわあ、すっごい罪悪感。こんな貰っていいのかな。

俺はそのままギルドを後にし、無事に第二関門冒険者ギルドを突破した。しかし最後に一番の関門、奴隷オークションが待っている。
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