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「よう、久しぶりだなーガキ!」
「げ」
「げじゃねーだろ! でっかくなったなーいま十八歳?」
「……」
「無視すんなよ、クソガキ」
青月は奈津から逃げるように出て行った、仲が悪いのは相変わらずらしい。
「お見舞い、花」
「ああ、ありがとう……絵を描きたくなるね」
「まだ絵を描いてるのか?」
「いや、僕はもう……今は青が」
「天才高校生画家って? この前雑誌に載ってたな」
「ふふ、自慢の弟だよ」
奈津はそっと僕の右手に触れた。どこか傷ついてでもいる顔をして、僕の手を見る。
「痩せたなぁ……細い指、でもペンだこだけは残ってるんだな」
「そう? 自分のことは振り返る暇もなかったよ。体力ももう使い果たしてしまった」
関節とペンだこだけの残った細い指。鉛筆はもう何年も握ってはいない。
もしかしたら僕は真嶋青月という画家を導くために絵を描いていたのかも知れないと。それならば、この世で果たすべきことはもう果たした。
「律架、生きろよ」
「奈津……」「変なことは考えるな、お前はただ生きているだけで良い」
「……」
そこへ青月が花瓶を持って帰ってきた。奈津をにらみ、花束をいける。
「高い花だったんだぞ、デッサンでもしろ」
「花はそんなに好きじゃない」
「ああ? せっかく持ってきたのに!」
あまりに騒ぐ二人は、看護師に咎められていた。ああ、忘れていた、僕だって本当はまだ絵を描きたかった……溢れる涙は見られないように拭う。
「げ」
「げじゃねーだろ! でっかくなったなーいま十八歳?」
「……」
「無視すんなよ、クソガキ」
青月は奈津から逃げるように出て行った、仲が悪いのは相変わらずらしい。
「お見舞い、花」
「ああ、ありがとう……絵を描きたくなるね」
「まだ絵を描いてるのか?」
「いや、僕はもう……今は青が」
「天才高校生画家って? この前雑誌に載ってたな」
「ふふ、自慢の弟だよ」
奈津はそっと僕の右手に触れた。どこか傷ついてでもいる顔をして、僕の手を見る。
「痩せたなぁ……細い指、でもペンだこだけは残ってるんだな」
「そう? 自分のことは振り返る暇もなかったよ。体力ももう使い果たしてしまった」
関節とペンだこだけの残った細い指。鉛筆はもう何年も握ってはいない。
もしかしたら僕は真嶋青月という画家を導くために絵を描いていたのかも知れないと。それならば、この世で果たすべきことはもう果たした。
「律架、生きろよ」
「奈津……」「変なことは考えるな、お前はただ生きているだけで良い」
「……」
そこへ青月が花瓶を持って帰ってきた。奈津をにらみ、花束をいける。
「高い花だったんだぞ、デッサンでもしろ」
「花はそんなに好きじゃない」
「ああ? せっかく持ってきたのに!」
あまりに騒ぐ二人は、看護師に咎められていた。ああ、忘れていた、僕だって本当はまだ絵を描きたかった……溢れる涙は見られないように拭う。
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