純白のレゾン

大歓迎します

08

　わかる気がする、俺も麻理の笑う顔が見たくってよくくまのぬいぐるみばかり買い与えていた。そう向島に言うと笑っている。

「なんだよ」
「……どっちがくまさんかわかりませんね」
「向島ァ！」
「冗談ですよ、すみません」

　初めてこいつの柔らかな笑顔を見た気がする。いつも人形じみた表情のないやつだった。

「お前結婚は？」
「無理でしょうね、気が利かないので」

　そういって向島は左手で髪をかきあげる。その手首に切り裂かれたような痕が。いつもしている腕時計がないからくっきりと見えた。まさか、自分でやったのだろうか？

「……お前、苦労してんだな」
「そうですか？　私なんてまだまだ子供ですよ」

　向島砂和、実は結構面白いやつなのかもしれない。
　やがて朝日の中揺れる横顔は幼くも深いところに何かがあって、俺はこいつのことをもっと知りたいと……その感情はどこか恋愛にも似ている。