純白のレゾン

雨水林檎

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 噂の店は騒がしい大学生がでかい声で話しをしている。飲み放題だし味には期待していないが、もう少し静かな店でもよかったかもしれない。やってきた店員に早速ビールを二杯、向島は拒否するそぶりも見せない。

「お前学生の時友達少なくて飲み会呼ばれねえタイプだったろ? 何かサークルとか入ってたのか?」
「いえ、すぐに家に帰りましたよ。実家から大学は近かったので」
「バイトでもしてたのか?」
「バイトする時間はありませんでしたね、自宅で過ごしてました」

 サークルもバイトもせずに何をしていたのか、趣味に打ち込むタイプなのか……しかしオタクと言うには全てに無関心すぎる顔をして。

「変なやつだな、お前」
「青海先生に言われる筋合いはありません」
「うわ、お前先輩に向かって」

 そこへちょうど頼んだビールが運ばれてきた、とりあえず二人で乾杯する。一気に飲み干してジョッキを置けば、向島も音を立てずに飲み干して机同じタイミングでジョッキを置く。

「お前、今ビール飲んだよな? 息継ぎしたか、喉も鳴ってなかったぞ」
「飲み物ですから飲んだだけですよ、一気に流し込んだらいつの間にか飲み終わってしまいました」
「……次、何飲む?」
「ああじゃあもう一杯ビールをいただきます」

 そしてまた向島は音も立てずに飲み干してジョッキを静かに置いた。まるで水でも飲み干しているかのように……。
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