39 / 66
お別れの日
05
しおりを挟む
タクシーは十分もかからずに再び停車する。彼は白い外壁のマンションの、郵便ポスト開けてチラシを取り出して、そのまま階段を登って行く背中を追いかけた。
「無垢、右の部屋を使っていいよ」
階段から一番遠い部屋の鍵を開けた玄関には俺が送った宅配便の箱が積んである。右の部屋は見事に何もない部屋で、今まで使っていないと言うくらいにゴミひとつ落ちていない。きっと大掃除したんだろうな、確かに綺麗好きだった昔から。
「夕飯の時間だね、私はもう一回学校に戻るけれど……何か出前を取っておこうか?」
「……」
「無垢?」
喉からうまく声が出ない、複雑な感情が絡まり過ぎた。俺は、その……。
「おに……砂和さん、と一緒でいい」
その顔が見れない、だって今更呼べないだろうこの歳で『お兄ちゃん』なんて。
『砂和さん』は、しばらく黙って俺が目を合わせると何も言わずに微笑んで、じゃあ少し待っていてと言って再び家を出て行った。
「無垢、右の部屋を使っていいよ」
階段から一番遠い部屋の鍵を開けた玄関には俺が送った宅配便の箱が積んである。右の部屋は見事に何もない部屋で、今まで使っていないと言うくらいにゴミひとつ落ちていない。きっと大掃除したんだろうな、確かに綺麗好きだった昔から。
「夕飯の時間だね、私はもう一回学校に戻るけれど……何か出前を取っておこうか?」
「……」
「無垢?」
喉からうまく声が出ない、複雑な感情が絡まり過ぎた。俺は、その……。
「おに……砂和さん、と一緒でいい」
その顔が見れない、だって今更呼べないだろうこの歳で『お兄ちゃん』なんて。
『砂和さん』は、しばらく黙って俺が目を合わせると何も言わずに微笑んで、じゃあ少し待っていてと言って再び家を出て行った。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
守護霊は吸血鬼❤
凪子
BL
ごく普通の男子高校生・楠木聖(くすのき・ひじり)は、紅い月の夜に不思議な声に導かれ、祠(ほこら)の封印を解いてしまう。
目の前に現れた青年は、驚く聖にこう告げた。「自分は吸血鬼だ」――と。
冷酷な美貌の吸血鬼はヴァンと名乗り、二百年前の「血の契約」に基づき、いかなるときも好きなだけ聖の血を吸うことができると宣言した。
憑りつかれたままでは、殺されてしまう……!何とかして、この恐ろしい吸血鬼を祓ってしまわないと。
クラスメイトの笹倉由宇(ささくら・ゆう)、除霊師の月代遥(つきしろ・はるか)の協力を得て、聖はヴァンを追い払おうとするが……?
ツンデレ男子高校生と、ドS吸血鬼の物語。
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。
幸せのカタチ
杏西モジコ
BL
幼馴染の須藤祥太に想いを寄せていた唐木幸介。ある日、祥太に呼び出されると結婚の報告をされ、その長年の想いは告げる前に玉砕する。ショックのあまり、その足でやけ酒に溺れた幸介が翌朝目覚めると、そこは見知らぬ青年、福島律也の自宅だった……。
拗れた片想いになかなか決着をつけられないサラリーマンが、新しい幸せに向かうお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる