8 / 12
サクリファイス・レノ
08
しおりを挟む
首都、国立医学製薬研究所・ソフィア製薬部。
タワービルを前にボストンバッグを手にして正装をしたレノはエントランスで受付の女性に声をかける。数人の見覚えのある男達がエレベーター前に立っている。過去はもう捨てたはずだった、しかしこうして今また訪れてしまうと複雑な心境になる。
「ヴァイス・ジャン・リー部長がお待ちです、あちらのゲートからどうぞ」
エントランスのゲートを通りエレベーターに乗れば無音のフロアが広がっていた。秘書の女性に案内されて面談室にてレノは彼と対面をする。ヴァイス・ジャン・リー、彼はレノのかつての上司だった。
「やあ、レノ、元気にしていたかい」
「お久しぶりです、早速ながら今回の件ですが」
「まあそう慌てない、高級なカタの花のジュースを手に入れてね」
「結構です、それよりも早く彼のことを」
***
「レノ……?」
グローザは早朝、誰かが部屋から出て行った気配で目が覚めた。レノが新聞でも取りにいったのだろう。そう思って暫しベッドで横になっていたが一向にレノが帰って来ないのを見て、胸騒ぎがした彼は慌てて寝室を飛び出した。リビングには朝食と手紙に小さな薬包が。
手紙をそっと開けば、レノらしい几帳面で美しい文字がつづられている。
『君に過去を返そうと思う、どうか、幸せに』
この薬を飲めば、失くした記憶を取り戻せると言うのか?
グローザは戸惑い、座り込む。
失った記憶とレノと過ごしたここでの暮らし。そんなもの天秤にかけるとしたら……。
「レノ……!」
タワービルを前にボストンバッグを手にして正装をしたレノはエントランスで受付の女性に声をかける。数人の見覚えのある男達がエレベーター前に立っている。過去はもう捨てたはずだった、しかしこうして今また訪れてしまうと複雑な心境になる。
「ヴァイス・ジャン・リー部長がお待ちです、あちらのゲートからどうぞ」
エントランスのゲートを通りエレベーターに乗れば無音のフロアが広がっていた。秘書の女性に案内されて面談室にてレノは彼と対面をする。ヴァイス・ジャン・リー、彼はレノのかつての上司だった。
「やあ、レノ、元気にしていたかい」
「お久しぶりです、早速ながら今回の件ですが」
「まあそう慌てない、高級なカタの花のジュースを手に入れてね」
「結構です、それよりも早く彼のことを」
***
「レノ……?」
グローザは早朝、誰かが部屋から出て行った気配で目が覚めた。レノが新聞でも取りにいったのだろう。そう思って暫しベッドで横になっていたが一向にレノが帰って来ないのを見て、胸騒ぎがした彼は慌てて寝室を飛び出した。リビングには朝食と手紙に小さな薬包が。
手紙をそっと開けば、レノらしい几帳面で美しい文字がつづられている。
『君に過去を返そうと思う、どうか、幸せに』
この薬を飲めば、失くした記憶を取り戻せると言うのか?
グローザは戸惑い、座り込む。
失った記憶とレノと過ごしたここでの暮らし。そんなもの天秤にかけるとしたら……。
「レノ……!」
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる