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結ちゃんから目を離し裂を見ればはまた、気を失っていた。まぁ今さっきも気を失いかけてたようなもんだし。

それでも結ちゃんは、まだ泣いている。それほど裂の言葉が、裂と話せたことが、嬉しかったのだろう。



「あの日の『せめて』の続きってこれかぁ・・・中山ざぁーん、ごべん・・・・・・ありがどぉ」

「大丈夫だって、とりあえず気ぃ済むまで泣きな」

「ゔん・・・」



結ちゃんはそれはもう酷い鼻声で、正直日本語として理解し難い部分もあったけど、まぁなんとなく伝わった。

そしてまた涙が流れ始めた結ちゃんを横目に、心底思う。



(・・・・・・よかったね、2人とも)



祝福とは少し違うし、今後のことはよくわからない。だけどこれは本心。俺は彼女にも、裂にもなにもしてやれなかったけど、本当によかった。

そしてもう一度、結ちゃんに視線を戻した時



「・・・・・・えっ」



思わず口から、その場に不釣り合いな、短く絶望的な声が漏れる。

でも、それは仕方ないだろう。




だって結ちゃんの自身の涙を拭う手が、ぼんやりと透けているのだ。

今まで、実体はなくても透けていたことはなかった。色もちゃんとあった。

なのに、だ。よく見れば全身の色が半透明になって透明に近付きつつある。

もう向こう側がなんとなく見え始めている。

また、同時に数時間前の結ちゃんの言葉が脳裏をよぎる。



『未練かぁ・・・・・・よくわかんないけど、強いて言うなら “ ただいま ” ですかね?』
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