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第六章 魔神討伐・神々の業

110 終劇の終幕

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 ルクス様にサーシャ様が、機械神デマキナの展開した結界に飲み込まれてしまった。内部で何かが起こったのだろう。二人の神気が弱まっていく。此方からは真っ黒で巨大な球状のドームが見えるだけで、内部の様子が見えない。
 エリックさんとユズリハさんも先程の跳ね返された奥義の物理衝撃で昏倒している。こんなときこそ、私が、父カーズの様に状況を打開しなければ……。

 でも……、私には何もない。

 産まれてからずっと、最強の特異点となるべくティミス様の厳しい稽古に耐えて来た。それが当然であるかの如く、感情を押し殺しての厳しい修行の日々。普通の女の子の送る様な日々は私にはなかった。胎児の時に神格を与えられた私は、神気の扱いも神衣も当たり前の様に扱えた。剣技も弓術も幼い頃からティミス様に仕込まれた。生みの親は私という特異点を産んだ反動で亡くなった。

 感情を表に出すことなど滅多になかった。師でもあり育ての親でもあるティミス様が全てだった。極稀に、気まぐれに見せてくれる優しさだけが嬉しかった。そして18歳を迎えた時、天界特別指令オーダーを受けたティミス様に連れられて、このニルヴァーナへとやって来た。

 魂が共鳴した。カーズとアヤ、魂の繋がった両親に出会えた時、彼らの優しさに触れた時に、涙が勝手に溢れた。父上はティミス様の『清魂計画』に激怒し、二度と私を手放さないと言ってくれた。母上は私を抱き締めてくれて、どんな時も優しかった。

 異世界の地球という世界で5,000年の辛い因果を乗り越えてニルヴァーナに帰還し、結ばれた二人。今の人生の記憶しかない私にとって、それがどれほど残酷で苦しかったのか。想像もつかない。それでも、そんな辛い思いをしてきたにも関わらず、私を大切に護ってくれた。漸く私は、少しずつ人間らしい感情を取り戻せたのだ。月の民のアガーシア・ルーナではなく、アガシャ・ロットカラーとして。

 PTの仲間のみんなもすぐ大好きになった。月での異質なものを見る視線とは違う。一人の人間として、父上の両親、祖父と祖母も大切に思ってくれた。私に足りなかった心の安息を教えてくれた。冒険はいつも困難だったけど、みんなの御陰で乗り越えることができた。楽しいという感情を私は取り戻せた。

 今こそ、そのみんながピンチの今こそ、私が何とかしなくてはならないのに……。あの神器を破る何かが、意外性のある父上の様なアイデアが、発想が浮かばない。だから、父上、もう次からは甘えないから、頼らせて下さい……




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「ん?」
「どうしました、カーズ?」
「何かあった?」

 精神的に色々と疲れた一日が終わって、寮でアヤとアリアと談笑していたときだった。

「アガシャから念話だ。雰囲気的にヤバい予感がする。展開するぞ」

 二人にも聞こえる様にスキルを展開する。

(父上……ですか?)
(どうした、アガシャ? アヤもアリアもいる。何があった?)
(機械神アデクストマキナ、デマキナという神が、現れました)
(デマキナ?! 前回の大虐殺時に行方不明になっていたとされる神じゃないですか)
(そうです、アリア様。調査していた遺跡が過去の機械文明のもので、デマキナが彼らを匿っていたのです。特異点が揃った影響と、外界が生活可能な程再生されるのを待っていた彼らが、世界に侵略戦争を仕掛けると……。それを阻止するためにティミス様は地下都市の制圧に向かい、残った私達とルクス様にサーシャ様までが、その権能と神器デウス・エクス・マーキナ機械仕掛けの終劇によって危険な状況にあります)
(何その意味不明な神器は……?!)
(因果を捻じ曲げ、望んだ終劇を呼び寄せるという規格外の神器です。そして輪列眼りんれつがんという特殊な瞳で此方の動きをトレースされ、その未来までもを全て予測されてしまうのです)
(輪列眼……。私も他の神々に聞いた程度ですが、それほどまでに厄介だったとは……)
(私にはどう攻略していいのか……。父上の意見をお聞きしたいのです!)
(……なるほどな。詳しく話してくれ)

 ・

 ・

 ・

(―――ということです)

 詳しい戦況はわかった。だがその程度の能力、創作の中には腐るほどある。現実で上手くいくかは別だが、やってみる価値はあるはずだ。

(そうか、わかった。お前達のスキルに次元や空間を斬り裂くものはあるか?)
(次元を……?)
(少なくともそこにはエリックとルクスの『斬鉄剣』がある。次元ごと敵を斬り裂くチート技だ。俺やアリアの『神龍』や、ディードの『アナザー・ディメンションズ・ブレード異次元の刃』も同様だ。それにまだ実戦では使ってないが、ソードスキルにも似た様なシロモノがある。お前の流派にはないのか?)
(……いえ、あるにはあります。それが一体……?)
(一応スキルのイメージはお前に送る。可能なら使ってみろ。いいか――――)

 ・

 ・

 ・

(―――てことだ。不安ならPTリンクで俺も行く。どうする?)
(いえ、私達だけでやってみせます。必ず、父上達の任務が終わってから再会しましょう)
(……わかった。厳しい時は呼ぶんだぞ、いいな?)
(はい、ありがとうございます。必ず勝ちます)

 念話が切れた。恐らく向こうは戦闘中だが、脳内での会話は並列同時思考加速が適応される。今の会話もほんの数秒の出来事に過ぎない。
 俺達はアガシャと仲間達の勝利を願った。本当は今すぐ飛んで行きたい。過去のディードの例もある。だが、アガシャは『必ず勝つ』と言った。ならば信じてやるのが親ってもんだ。それに俺が横槍を入れたらエリユズは文句を言うだろうしな。

「いいの、カーズ?」
「『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』とも言うしな。厳しいかも知れないが、あいつが『勝つ』と言ったんだ。信じるのも大切だろ?」
「『可愛い子には旅をさせよ』とも言いますしねー」
「それはちょっと違う気もするけどなあ」
「でもヤバくなったら一人で行くつもりでしょう?」
「まあな、お前に教えて貰った『換装かんそう』で直ぐに装備もできるしな」
「ここのこともあるから全員で行くわけにもいかないしね」
「そうなんだよな。まあアガシャ達を信じようぜ。神様が三人もついてるんだし」

 気にはなるが、アガシャの意志を尊重しよう。気にはなるけどね。




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「ヒーラガ!」

 近くで倒れている二人に回復魔法をかける。

「うっ……、あれ?」
「くっ、そうか、技の衝撃で頭でも打ったのか。ありがとよアガシャ」
「いえ、それよりもあの神器に瞳の対策方法がわかりました」
「「マジか/で?!」」
「ええ、これからあの結界を斬り裂きます。エリックさんは『斬鉄剣』を、ユズリハさんには次元を穿つスキルがありますか?」
「……ええ、まだ実戦では初だけど。やってやるわ」
「私もです。では行きましょう」

 あの結界はアリア様によると、固有結界と呼ばれる神気と魔法の究極の高みらしい。そして父上が言うには、そういうものは中に閉じ込めることに特化している。内部は術者の都合の良いルールで構成されているはずだと。だから出るのは難しくても入るのは容易いと。
 でも無策で入ればそのルールに支配される。ならば外から壊すのが、難しいが一番効果的であると!
 三人で結界の一点に攻撃を集中させる。神格から具現化させた黄金のルーナ・ジエーナ月の長剣を握り、構える。

「じゃあいくぜ! マルクスリオ流大剣スキル、斬鉄剣!」
「時空を穿て! アザナーシャ流槍術スキル、ニュートロンスター・スラスト中性子星を穿つ一刺!」
「次元を斬り裂け! アルティミーシア流ソードスキル、ブラン・バルー・トゥノアー新月の黑洞!」

 ズヴァアアア!!! ドゴアアアア!!! ガシュアアアアア!!!

 黑洞ヘイドゥンとはブラックホールの意。神気を纏ったこの一撃で、結界を構築する神気の構成を斬り裂き異次元へと吸い込む危険な一撃。次元を斬り裂くという荒業は神の流派でも禁じ手と言われる。
 あらゆる常識を無視し、異空間への風穴を空ける程の威力を持つほどの危険なスキル。多用するのはリスクが伴う。武器のスキルに時空魔法を組み合わせる、使いどころを間違えば味方にも被害が及ぶシロモノだからだ。
 それでもこの結界を破壊する為には他に手段はない。三人で呼吸を合わせて一点を斬り裂き穿つ!

 ピッ……ピピピッ! ビシッ! ビキキキキィ! バキィイイイン!!!

 デマキナの固有結界が崩壊した。破壊したことで、内部のフィールドも効力を失い、倒れているルクス様とサーシャ様を二人の弟子が救出する。此方を見たデマキナの輪列眼と視線を合わせない様に神眼で直接の視界を塞ぐ。

『特殊能力を持つ瞳を持つ相手と相対するときは、その目を見ないことが鉄則だ。魔眼を逸らすのにも目を合わせないというのが威力を弱める最善手。視界に入るもの全てに作用するにしても、直接目を見て幻術を喰らうよりも利きが悪くなるし、若干のロスが生まれるはずだ』

 ここまでは父上のアドバイス通り。結界も破壊し、二人を助けることができた。回復魔法で意識を取り戻すルクス様とサーシャ様。でもここからが勝負だ。

「ちっ、術中に嵌るとは情けねえ。今回はお前達に感謝するぜ」
「ええ、三人共成長しましたね」
「弟子に助けられるとはダセえぜ、ルクス師匠」
「サーシャさんもですよ。そんなんじゃあ追い抜いちゃいますよ」

 軽口を叩き合う四人。ティミス様も褒めてくれるでしょうか? いや、まだこれからが本番。全員に思考加速させた念話を飛ばす。

(ほう、面白え。さすがカーズと言ったところだな)
(ならば全員で彼の権能を次元ごと断つのみね)
(ああ、これからが勝負だぜ)
(ええ、初手の奥義で返って来たのは物理的な衝撃のみだった。神気や属性の攻撃は因果を捻じ曲げられないってことになるわね)

 みんなの信頼が凄い。父上の考察を伝えただけなのに、もう此方の士気は上がりっぱなしだ。

「フッ、よくぞまあ人間風情が私の固有結界を破れたものだ。だが、因果を捻じ曲げる私の神器と輪列眼を甘く見て貰っては困るというもの。受けたまえ、極光の衝撃を! 白色サフィド・破壊ヴィナーシュ・降伏サマーパム・光舞ハルカンニティ! オーン!」

 カッ! ドドドドドドゥッ!!!

 神衣に装着され、身体の周囲を浮遊している神器のレーザー砲から輝く光線が幾重にも発射される。だが高速で移動する味方には全く当たらない。全員が心眼で輪列眼りんれつがんの干渉を阻害しているからか、此方の未来視プリディクト・アイズも正常に機能する。弾道が先読み可能だ。
 やはり父上の予想通り。目を合わせなければ何てことはない。

『神の権能は、基本的に対神を想定していない。あのファーレのインタフェアランス妨害結界が特別過ぎるんだ。基本に忠実に対処すれば、神や神格者に完全に機能することはない』

 あの考察は間違っていなかった。あの人は何手先を、しかもあれだけの情報だけでここまで見切っていたのか。何と頼もしいのだろう。そして逆にその背中が如何に遠いかも思い知らされる。さあ次はあの厄介な神器を粉砕してみせる!
 
「くっ、まさかここまで当たらないなど……! 予想外にも程がある」
「神の権能は、同じ神を相手にすることを想定していない。あなたに最早勝ち目はありません!」
「あくまでも抗うつもりか。ならば受けるがいい。このアデクストマキナ最大の奥義を!」
「おっと、それは固有結界の中でこそ力を発揮するシロモノだ。この状態で放つには隙が大き過ぎるぜ。喰らいな、斬鉄剣!」

 ズシュアアア!!!

 ルクス様の斬鉄剣がデマキナの両手を斬り裂いた。

「グアアアア! 私の手が!?」

『そして最後に、その終劇神器で跳ね返せるのは恐らく物理・魔法の衝撃のみだろうな。技の特性までは反射できないはずだ。そうでなければ初手の奥義を全て反射されて終わっている。受ける衝撃覚悟で技の特性を叩き込め』

 はい、父上。この一撃に全てを懸ける! 念話でみんなのタイミングも完璧にシンクロしている!

「「斬鉄剣!!!」」
「「ニュートロンスター・スラスト中性子星を穿つ一刺!!!」」
「これで終幕! ブラン・バルー・トゥノアー新月の黑洞!!!」 
 
 ズガガシュッ!!! ドゴゴオオオ!!! バキィイイイン!!!

 防御に回ろうとしたデマキナのソード形態の神器が砕け散る。五人同時に時空を断つ絶技を放ったのだ。直線的な奥義の火力任せの攻撃ではない。しかも近距離からの一閃。デマキナの神器がその能力を発揮する前に勝負は決まった。

「うぐ、がはああああ!!」

 衝撃も返って来ない。此方の攻撃が全てデマキナの神衣を斬り裂き、穿った。神気の籠った斬撃で全身に致命傷レベルの傷が刻み込まれている。神器を発動させる間もなかったのか、衝撃と特性のどちらの因果を曲げるのかを躊躇したのだろうか。

「くっ……、まさかここまでやるとは……。私の負けだ……。好きにするがいい……」

 ガシャアアアン!

 前のめりに倒れるデマキナ。勝った。父上の送ってくれたイメージ、アストラリア流のソードスキル、強力過ぎるディメンション・ブレイカー次元破断刃を使うまでもなかったことに安堵する。

「サーシャ、こいつは反逆者だ。オヤジのところに連行してくれ。俺はこのふざけた地下施設を破壊していく。ティミスが既に殲滅に向かっているがな。さっさと終わらせてやるぜ。エリック、お前達は来るな。先に地上に戻り、ピラミッドを粉々に破壊しろ。欠片も残すなよ、いいな」
「ああ、わかったぜ師匠」
「じゃあ先に転移で出るわよ」
「でも、まだティミス様が……」
「アガシャ、心配すんな。お前は今回よくやった。これからやるのは神の業そのものだ。見る必要はない。行け」
「はい……。わかりました」
「じゃあ私も一旦みんなと一緒に脱出するわ。ゼニウス様には今念話が通じた。その足でデマキナを天界に連行する。皆行きましょう」

 フッ!!!

 サーシャ様の転移でピラミッドの外まで転移する。彼女はその足で天界へと転移して行った。私達の任務は、眼前にあるこの世界には明らかに異質なアーティファクトを破壊するのみ。

「おりゃあああああ!!!」
「ハアアアアアア!!!」
「ふっ!!!」

 三人で奥義を叩き付ける。結界を失ったピラミッドは粉々に散り、焼け爛れた大砂漠の地面のみが残された。任務完了。これも全て父上の御陰。後でお礼を言っておこう。


 暫く経ってからティミス様とルクス様が転移で脱出して来た。

「師匠にティミスさん、あの地下都市を壊滅させたのか? 眠っている人間も」
「いえ、冷凍睡眠コールドスリープの装置ごと一斉に転移装置の様な物で逃げられたわ。追おうかと思ったけど、向こう側から破壊されたみたいで機能しなかったのよ」
「それじゃあ、他にもあんなのがこの世界の何処かに存在するってこと……?!」
「そういうこった。都市は粉々に破壊しておいたがな。危険な古代の機械兵器やらも残っていやがった。あんなのが使われたら大陸が吹き飛ぶ。デマキナの野郎が……。やってくれやがったぜ」
「私達は何をするべきなのでしょうか? 相手は同じ人間。あの皇帝とは話し合いにならなかった……。如何に大虐殺で神々を恨んでいるとはいえ―――」
「アガシャ、言わなくてもいいわ。これは私達神々がどうにかしなければいけない問題。あなた達が神格者だとしても、その業を背負う必要はない。あのギルドマスターに報告して、上手く濁してもらいなさい。私達は事が事だから、一旦天界に戻ってゼニウス様の指示を仰ぐわ。ルクス行きましょう」
「そういうことだ。お前らが罪の意識を感じる必要はねえ。しかも背後に裏切者がいやがったんだ。神の失態は神が拭うのが定石だ。何処かで似た様なことが起きる可能性もある。ギルドの情報網で調査してもらえ。俺達も戻り次第、世界の調査を開始する。いいな」
「わかったよ師匠。じゃあ俺達はリチェスターに戻る。まだまだ修行不足だ。今回もカーズに助けられた様なもんだしな」
「そうね。アガシャが機転を利かせてくれなければ負けていた。ありがとうアガシャ」
「いえ、私には何一つ打破するアイデアが浮かびませんでした。全て父上の御陰です」
「それを言ったら神である俺達も同じだ。状況を打破する最善手をお前は打ってくれた。カーズのアイデアかも知れんが、そこに活路を見出したのはお前自身の意志だからな」
「そうよアガシャ、もっと自分を誇りなさい。自己評価が低いのは良くないことよ」
「ティミス様……」

 それはあなたに育てられたからですよ。と言葉が出かかったが抑え込んだ。みんな言いたいことは好き勝手に言うんだ。それが少し伝染うつってしまったのかも知れない。みんなに頭をぐしゃぐしゃに撫でられて、この任務は終了した。

 少しは変われたのかな……?
 



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「そわそわする」
「アガシャが心配なんだね?」
「女性状態なのに父性が爆発してますねー。でももう終わったみたいですよ」
「うるせえ。視えてたんなら教えろよ」
「いやあ、カーズがそわそわしているのが面白くてー」
「事情が事情だろ。命懸けで闘ってるのに楽しむな」
「でも上手くいったんなら良かったんじゃない?」
「ん、ああ。まあそうだけど。おっと、調度念話が来た。展開するぞ」

(勝ちました。父上)
(そうか。よくやったな)
(カーズが心配して落ち着きがなくてねー。面白かったですよー、アガシャ)
(うるさいぞ、生臭女神。心配するに決まってるだろ)
(頑張ったんだね、アガシャ。自分で色々と考えて、みんなを動かしたんでしょ?)
(母上……。ええ、まあ。作戦を伝えないといけませんから。上手くいって良かったです)
(でもあなたを信頼していないと、みんなその通りに動いてはくれなかったはず。あなたが頑張っていた姿を、みんなが知っているからこそだよ)
(はい、ありがとうございます、母上。父上にアリア様も。これからリチェスターに戻ります。神様達は天界に報告に向かいました。ユズリハさんが呼んでいるので、これで失礼します。おやすみなさい)
(よく頑張ったな、偉いぞ。おやすみ、アガシャ)
(っ……!)

 念話が切れた。最後何だか恥ずかしそうだったな。何でだ?

「父親に褒められて嬉しかったんだよ、きっと」
「カーズは本当に朴念仁ですねー」
「アヤに言われるならいいが、お前のそれはただの悪口だろ? ってアリアは天界に行かなくていいのか?」
「うーん、ここでの任務がありますし。あの三人なら上手くやってくれるでしょうから。それにジジイの顔を見るのが嫌です」
「最後のが一番本音だよね……」
「まあ、わからんでもない。しかしお前の管轄世界は意味不明なことばっかり起こるな」
「全くですよ。こんなに真面目に管轄してるというのに。プンスコ」
「堕天神に職務怠慢と言われてた気がするけどなー」
「あははは」
「あーあーあー、聞こえなーい」
「まあいいや、明日も学院だ。犯人の足取りもまだ掴めないし、早く寝るか」
「明日の授業って何?」
「ん? えーと、魔法演習に水泳に、歴史だった」
「おほほー、水泳ですかー。楽しみですねー」
「今更どうでもいいけどさあ。変な水着とかじゃないよな?」
「あーあれかあ」
「ムフフー、明日のお楽しみですねー」
「お前、その内絶対ぶっ飛ばすからな」

 アガシャ達の任務も無事終わったみたいだ。此方も早く解決したいもんだな。







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