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第四章 混沌の時代・7つの特異点
64 蠅の王の力
しおりを挟む「蝿の王」堕天神君主ベルゼブブは七つの大罪の食欲・暴食のGluttonyを司る。その由来は作物を腐敗させる力に起因している。サタネルの一人とも言われるこいつはかつて熾天使の地位にあり、ルシファーの右腕と評された。天の反乱の際にはその実力を如何なく発揮したと言われている。
フランス語圏ではベルゼビュートとして知られるベルゼブブの名は、すなわち「気高き主」あるいは「高き館の主」という意味の名で呼ばれていた。これはおそらく嵐と慈雨の神バアルの尊称の一つだったと思われる。 パルミュラの神殿遺跡でも高名なこの神は、冬に恵みの雨を降らせる豊穣の神であった。「館の主」「いと高き王」を意味する「バアル・ゼブル/Baal-Zebul」が、ユダヤの伝承の中で変質させられ、何故か「蝿の王」となったもので、バアル/Baalとは「主」「王」を意味するセム語のことだ。
ベルゼブブのルーツは、古代イスラエル(カナン)のペリシテ人が治めた5つの自治都市のひとつ、エクロンで祀られていたバアル神だとか言われている。当時は嵐と雨の神として豊穣を司っていた…とかだったな。一説によると、バアルの崇拝者は当時オリエント世界で広く行われていた、豊穣を祈る性的な儀式を行ったとも言われているが、この地に入植してきたヘブライ人たちは、こうしたペリシテ人の儀式を嫌ってバアル・ゼブルを邪教神とし、やがてこの異教の最高神を語呂の似たバアル・ゼブブすなわち「蝿の王」と呼んで蔑んだという。これが聖書に記されたために、この名で広く知られるようになった。恐らくキリスト教会に取り込まれるにあたり、豊穣とは真逆の腐敗を意味する「蝿の王」とされてしまったのだろう。さらに時代が進んで中世の頃にはソロモン王に仕えし七十ニ柱の悪魔の一人、バエルにまで成り下がる。
結局人間の勝手な信仰で非道に貶められているベルゼブブだが、地獄においては「皇帝」とまで評されることもある強大な悪魔であることに違いは無い。さらにベルゼブブは独自の騎士団「蝿騎士団」を創設し、そこには地獄の大公爵アスタロトや大法官アドラメレクといった、自らと同様の境遇を持つ悪魔が数多くその名を連ねるとも言われる、そんなのを召喚する可能性もあるということか。何にせよベルゼブブの持つ影響力は強大であり、地獄の中ではあのルシキファーレに次ぐ実力の持ち主とされている。かつて砂漠を治めた主神の怨嗟の念は計り知れぬ程の深淵なのだろう。
これが俺の知識にあるこの蠅野郎の逸話だ。だが魔神器などの能力はわからない。
そして地上に降り立った人型の堕天神バアルゼビュート、やはりこいつもファーレと同様見た目が変化してやがる。6対の巨大な虫の羽、その一枚一枚に髑髏の模様がある。黒い波打つような短めの黒紫色の髪に、頭からは蠅の触角みたいなものが二本。黒光りする魔神衣は全身を覆い、体の側面からは昆虫、どうせ蠅だろうがな、その足を模った様な3対6本の足の生えたオブジェが蠢いている。魔神衣の見た目も昆虫がモデルの様な形態をしてやがる。しかもこいつは体も相当デカいな。2m以上はある巨漢だ。それにやはり力が増しているというのは本当らしい。あの封神結界で吸われたエネルギーは相当だったはずだしな。ファーレがあの強さだったのも納得だ。天界で見た時よりも、明らかに禍々しい。そしてキモイな…。
「こやつじゃ、里を襲った堕天神は…。おのれ……!」
ばーちゃんはもうキレてんな、それに…
「神気が使えなればマズイ、ディードは親父と後ろに下がれ!」
「で、ですが!」
「嬢ちゃん、いいから俺の後ろに下がれ。神気とは神が使う力だ。神格がなければ見えないからな。ここは大人しく俺と下がってろ」
「…っ…、これがユズリハ達が言っていた『どうしようもない差』というものなのですか…」
親父が説得してくれた様だな。後は神格持ちだけだ。アリアはまだ魔石を調べているが、こいつがいないとぶっちゃけキツイ。
「アリア! 後にしろ、今はこいつをどうにかするぞ!」
「っ…カーズ。ええ、そうでした。バルゼ、何の目的でこんなところまでわざわざ来たのです? 言いなさい!」
「カッカッカ! アストラリア、貴様はまさか大迷宮の最奥に何があるのか知らなかったのか? こんな規模の魔素と瘴気までを放つものが自然発生するはずがなかろう? カカカ…、管轄世界のことを把握してもいないとは何たる怠惰、これは傑作だな」
うん、まあこれはこいつの言う通りだな…。ぐぅの音も出ねえよ。
「おい、言われてんじゃねーか。言い返す材料がねえぞ」
「カーズは私の味方じゃないんですか?!」
「どう考えても正論過ぎてんじゃねーか」
「貴様の職務怠慢振りなどどうでもいい。常に強力な魔素を放ち、誰も辿り着けない程の瘴気までもを生む。それが長い年月をかけ、内部に発生した魔物共が地上に出たことで出来上がったのが大迷宮だ。この瘴気では貴様ら程のレベルの連中しか、立ち入ることすらも出来はしない。しかもそいつらはただ眠っているだけだ。封印されてはいない。いつ目覚めてもおかしくはないんだぜ、その魔神共はな!!!」
「魔神?! 前にファーレが言っていた奴らのことか?!」
「なんと…!? 大迷宮の最下層にはそんなものが…」
どうやらばーちゃんも知っている様だな。くそっ、毎回厄介なものばっか出て来やがるぜ。
「やはりそうでしたか……。魔神とは文字通り魔の神。天界で誕生した私達とは根本的に異なる…。気まぐれな者もいますから、一概に悪とは言えませんが…。多くは害をなし破壊を好む存在。且つて起きたと言われる神魔大戦という天界との戦争で、その多くは地の底へと封じられたはず…。なぜそれがここに……?」
「カッ、神魔大戦はもう数万年以上前。若い貴様が知らないのも無理はあるまい。まあ刺激しなければ目覚めることはないだろうがな」
「じゃあテメーはここに何をしに来やがった? その言い草じゃ、魔神を解放するのが目的じゃないんだろ?」
「カッカッカ! ファーレから聞いていたが、やはり切れるな。確かにその通りだ。先ずは大人しくしていて貰おう! 受けろ! 黒天の炎雨を! ダークブラスト・レイン!!!」
ドシャアアアアアアアアア!!!!
「くっ!!!」
バアルゼビュートの頭上から黒く燃える炎の雨が広範囲に降り注ぐ! 技の規模に範囲もデカい! 離れたディード達は大丈夫だろうが、アヤとアガシャだけでも守らなければ!
「唸れ、俺の神格よ! 来い! 神衣!」
そのままアヤとアガシャを守る様に神気の結界を展開する! ギリギリ何とかなったな…。
「無事だな? 二人共神格を全力で解放しろ、神気の攻撃に対応できない」
頷く二人、そして二人にも神衣が装着される。アガシャの神衣は満月の様な黄金に黒い影の様なデザインだが、アヤの黄金の神衣とほぼ同じ様な形状だ。魂の繋がりの深さの影響なのかも知れないな…。
ダカルーの体を覆っているのは赤と黒を基調とした分厚い龍の鱗の様なデザインの神衣。あれが龍闘衣というやつか? だが次代の二人は纏っていない。まだ未熟なのか? レベルもアガシャに比べたら低いし、これはマズイな…。
「アジーン、チェトレ! 神気を解放しろ!」
「くっ…、俺達はまだ…!」
「ごめんなさい…! みんなの仇を目の前にして何もできないなんて…」
やっぱりか…。なら巻き込まれない様に下がっていてもらうしかないな。
「なら二人は下がれ、神格を扱えなければ勝負にすらならん!」
「カーズの言う通りじゃ、お前達は後ろへ退け!」
悔しそうに後ろへと下がる二人。だが仕方ない、パズズ戦の時の俺と同じ目に遭わせる訳にはいかないしな。
アリアは当然の様に真紅の神衣を纏っており、既に神器も手にしている。実質まともに闘えそうなのは俺とアリアにばーちゃんか……。まあいい、やってやるぜ!
「来い! 神剣ニルヴァーナ!」
ガシィ!!!
「アヤは魔法で援護を頼む。だが神器もないし、先ずは防御を優先してくれ。それにアガシャ、その剣はこの状態でも使えるのか?」
神衣を纏っていても、手にしているルーナ・ジエーナは形を保っている。
「はい、父上。これは神鉄製。神器には劣りますが、この状態でも使えます。背の弓も然りです」
「わかった、なら無理せず弓での援護を優先してくれ。無理そうなら二人共離れていてくれ。近距離は俺達、アリアとばーちゃんでやる。竜王の里の人達の仇だ、ここで潰してやるぜ蠅野郎! このニルヴァーナはテメーをぶっ潰すハエ叩きとでも思ってろ!」
「カカカ!! 可愛い顔をして舐めた口を訊く。いいだろう、折角まみえたんだしな。軽く遊んでやるよ。我が声に応じろ! 魔神器・不倶戴天!!!」
ガッ! ズシン!
現れたのは余りにも切っ先部分が巨大な方天画戟。三国志でも有名な裏切りの飛将軍・呂布奉先が使っていたとされる武器だ。中国の武器である戟の一種で西洋ではハルバードに比定される。方天戟の一種で、柄に対して水平方向に取り付けられている三日月状の「月牙」と呼ばれる横刃が、2枚付いている。
月牙が1枚だけ設けられた方天戟を「青龍戟」「単戟」もしくは「戟刀」と呼ぶが、その中でも特に呂布が愛用した戟は「方天画戟」または「双戟」と呼ばれた。武器の分類上、月牙を水平方向に2枚取り付けた戟を方天画戟としているものもある。日本の十文字鎌槍や西洋のハルバードに似て、「切る」「突く」「叩く」「薙ぐ」「払う」といった複数の用途が可能なオールマイティーな武器であったと考えられている。この武器に改良が加えられて、『三国志演義』にて呂布が愛用する方天画戟へと変わっていく、だったな…。
まさか蠅の王の武器が方天画戟とは、しかも不倶戴天という物騒な名前。だが先ずは斬り結んでみなければ能力もわからない。
「名前からしてタチが悪いな、今のお前の存在と同じじゃねーか。四面楚歌にでも改名しろっ!!!」
ダンッ!! ガギィイイイイイン!!!
様子見で放った正面からの一撃。当然防御されたが、この巨大な魔神器は、いやバルゼは涼しい顔でその場からビクともしない。なるほど…、何となくわかったぜ。
「オラよっ!」
ブンッ!!! ドゴォ!!!
「がはっ!!」
迷宮の壁にめり込む程の威力で吹っ飛ばされた。神衣の御陰でほとんどダメージはないが、こいつはちょっと苦手なタイプだな…。
「…やっぱ脳筋バカの力極か、筋力だけで振り回してやがるな」
「おもしれえ、今の攻防で理解できたのか? そうだ、俺の魔神器にはチマチマしたしょうもない特殊能力などねえ。ただ純粋なパワーで叩き潰す! それが俺の闘い方だ!」
立ち上がり、間合いのギリギリまで距離を詰める。さあ、どうやって崩してやろうか…。苦手なだけで崩せないとは言ってないからね。
「オラァッ!!!」
ブンッ!! グアッ!! ドゴォン!!!
力任せに不倶戴天、巨大な方天画戟を軽々と高速で振り回して攻撃してくる。切っ先部分だけで約2m程の巨大さだ。恐らく神器だから軽く作ってあるのかも知れないが、柄も同様に2m程あって長く、総じて約4m、間合いが長く、懐まで距離がかなりあって入りにくい。直撃したら先程の様に吹っ飛ばされるか、下手したらミンチにされる圧力と衝撃。斬り結んでも、自重の差で不利。だがこうして躱せるくらいだ、スピード自体はそこまで大したことない。掻い潜って本体に斬撃を喰らわせる!
「うおおおお!!!」
「オラア!!!」
ブンッ!!!
斬りかかるフェイントに引っ掛かって、完全に大振りした、その瞬間に一気に掻い潜り懐に入る!!
「ここだっ!」
ガガガキィイインンンッ!!!
「テンペスト・カウンター、トルネードショット!」
ピシィッ!!
掻い潜りながら高速回転し、3連のカウンターを叩き込んだ!
「チィッ!」
ブワアッ!!!
振り回すので一旦距離を取る。
「ほう、俺の魔神衣にかすり傷をつけるとはな。やるじゃねーか、特異点のカーズ」
予想してたが、防御も大概硬いな。左横腹の魔神衣に僅かに亀裂が入っただけだ。
「くそ硬すぎるぜ、アンタ。カウンターを連続でぶち込んだってのに、小さいヒビが入っただけとはな…」
「カッカッカ! そうだ、パワーとは純粋な力そのもの。強靭な力に抗うにはそれを超える圧倒的なパワーしかない!」
確かにその通りだ。中途半端な技術や小技など、純粋な力の前には無意味。パワーとは純粋ゆえに強い。真っ向から撃ち合えない上に被弾したら一撃で大打撃だからな。躱しても周囲に強烈な衝撃波を生む程危険なものだ。でもこういうのもよくある展開、おもしれえ、当たらなければ意味がないってことを教えてやるぜ!
(アリア、ばーちゃん、俺がスピードと剣技で引っ掻き回す。そこにできた隙に大技をぶち込め! いいな、いくぞ!)
(うむ、なるほどな。任せよ!)
(わかりました。あなたの作戦に乗りましょう。でも気を付けてくださいよ!)
「さあどうする? 圧倒的なパワーとタフネスを誇る俺に勝てるのか?」
「アホか、脳筋バカってのは序盤でやられるってのが定番なんだよ。いくぜ!」
アクセラレーションで速度を上げる。先ず俺がすることは陽動だ。
「ハッ!!!」
ガギン! ギィン!! ギギギィン!!!
やはり連撃でも盾にして弾かれるな…。
「うらあっ!!」
ブンッ!! フッ!
だがその後には大振りだ、体勢もその武器の大きさ故に軸が少しはブレる。隙だらけだぜ。ここが勝機!
(いけ!!!)
「龍帝拳・闘牙疾走!!!」
「エレメント・エッジ!!!」
一瞬の隙、右からはばーちゃんの両拳から鋭い牙の様な一撃、左からはアリアの全属性融合のソードスキルがバルゼの胴体を捕らえた!
ドゴォ!!! バキィイイイイン!!!
「うぐっ!!」
ブオン!!
嫌がって払い除ける様に振り回すが、二人共既に回避している。そして魔神衣の両脇腹、虫の脚の部分は大きく破損した。
「ニルヴァーナ、二刀フォーム」
パキィイイイイン!
2つに分身する様に分かたれるニルヴァーナ。こういう力極にはヒット&アウェイってのが相場なんだよ。さあアストラリア流の最速、二刀剣技をお披露目してやるぜ! ずっと練習して来たからな。そしてちょっと試したいこともあるんだよ。
(最速でいくぞ、ニルヴァーナ!)
(フッ、任せておくがいい)
「やるじゃねーか。多対一だと多少分が悪いかあ? まあ関係ねえ、ぶっ潰してやらあ!!!」
「脳筋丸出しの発言だな。じゃあいくぜ、アストラリア流二刀スキル!」
上下からの斬撃と前方からの突きを同時に放つ二刀技!
ズガアン!!! ガキィン!!!
「フェンリルファング・ストライク!」
不倶戴天に、要は奴の武器に狙いを定めた高速の剣技が全弾炸裂する。
ピシッ…!
「なにぃ!?」
やはりな…。こいつら以外の神々が力を注いでくれているんだ。形状は小さくてもこちらの方が強度は上だと思ってたぜ!
「何を呆けてやがる! まだまだいくぜ!!」
竜巻の様に高速回転、その遠心力を利用した神速の連撃!
ギギギギギギィイイイイイン!! ガギィイイイイイン!!!
「ストーム・プレデーション」
ガキンッ! バキィン!!!
「くそっ! 小細工が!!」
左右の月牙を破壊した。やはり強度はこちらが上。更にスピードで倍加する威力。最初の魔法の威力もそれほどではなかったし、このバカデカい魔神器を封じれば何てことはない! それに今のでまたしても隙ができた。あの二人がそれを逃すかよ!
「龍帝拳・無双羅刹!!!」
「ドラゴン・ファング!!」
ズドドドドッ!!! ドバキィイイイン!!!
ダカルーは強烈な手刀の突きの連打、アリアのあれは初めて見たな。大剣状態でのフェンリル・ファングか。武器の重量からして威力が桁違いだ。奴の魔神衣が砕け散り、肉体にダメージが入った。
「ちっ、ちょこまかと鬱陶しい! これでも喰らいやがれ! グランド・ハルバード・クラッシャー!!!」
ドゴオオオオオオオオ!!!
地面に叩きつけた魔神器から全方位の地面に衝撃波が走る!!!
「飛べ!!!」
ダッ!!!!
全員上に跳躍して躱した。やはり威力はあっても鈍重だな。蠅ってのはもっと素早いもんだってのに。特性を自分で台無しにしてりゃあ世話ないぜ。兎も角この連携でいけば勝機はこちらにある。
「じゃあその鬱陶しい魔神器は貰っていくぜ。アストラリア流二刀スキル!」
まるで蜃気楼でも幻覚でも見たかの如き、あらゆる角度からの超速の32連撃が叩き込まれる! これがアストラリア流二刀スキル最速の剣撃だ!
「ミラージュ・ブレード!!!」
ガギギギギギギギギィイン!!! ギギギギギギィイイイイイン!!!
バギィン!!! ガゴォ!!!
「なにぃ?! 俺の不倶戴天が!?」
巨大な穂先部分を完全に砕いた! 最早無駄に長い棒と同じだ!
「おりゃあああ!!!」
ギィン!!!
恐らくこれが最後の鍔迫り合い。しかしパワーで負けていてもこちらはクロスさせた二刀。奴のは只の神鉄の棒切れ。そんなものに押し返されてたまるかよ!
ズンッ! 大地を踏む脚に力を込める。
「ぐっ…、ガハッ! ぐおおおおおお!!!」
肉体にダメージを受けた状態でも押し返して来る。大したパワーと執念だ、だが…
「俺にだけ必死になってていいのか? 蠅野郎」
「なんだとっ!?」
遅い! 既に二人は技を放っている!
「龍豪拳波!!!」
「シューティング・スター!!!」
ダカルーから渾身の闘気を纏った拳打。アリアからは連打じゃない、一撃にパワーをつぎ込んだ必殺の突きか?
ドゴオオオ!!! ズドオオオン!!!
「ぐはぁっ…、ガッ…、ぐぅが、あっ!」
致命的な攻撃が完全に入った! ここが勝機! これで決める!!!
「アストラリア流二刀スキル・奥義!」
ドゴオオオオオオオオ!!!!!
全てを飲み込み無限の刃で斬り裂く剣閃の嵐が奴を飲み込んだ! その嵐に切り刻まれていくバルゼ!
「ジャッジ・オブ・アストラリアーー!!!」
「ぐああああああああああ!!!!!」
勝った! 3神の一角を崩したぞ!!!
「やった!」
「おおっ!!」
「勝ちました!!」
みんなが口々に此方の勝利が決まった様な声を上げる。
だが妙だ、奥義に完全に巻き込まれたとはいえ全く姿が視えない。見失った。粉々に消し飛んだのか? しかしそれなら奪ったはずの奴の神格が俺の中に流れ込んで来る様な感覚があるはず。どうなっているんだ……?
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