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第三章 大奥義書グラン・グリモワール

48  父子の闘い、新たな力と手にする神器

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「おう、バカ息子、俺が現役時代に何て呼ばれてたか知ってるよな?」

「ああ…、"フィールドの魔王"だろ。ファールされたら報復行為、鬱陶しいマークには至近距離から顔面にボール喰らわす、やりたい放題の傍若無人振りからつけられたんだろ? 自慢げに自分で言ってたじゃねえか」

 その御陰でこちとら"魔王の子"とか言われてたんだよ、ガキの頃。ハタ迷惑過ぎる。

「テメーにもその本能があるってことだ。もっと自分を解放しろ、まだ腑抜けた気持ちで向かって来るなら…、死ぬぞ」

 ギィン!! ガィン! ガキィ!!

 くそっ、後手に回ってたらいつかやられる、だが…

 ガギンッ!!

 薙ぎ払い、距離を取る。

「いいぜ…、やってやらあ」

 ダッ! 地面を蹴る!

「アストラリア流刀スキル」

 上にジャンプし、その勢いで叩きつけるように斬り下ろす!

「落陽閃!」

 ギィン!!

 刀で軌道を逸らされるが、着地と同時に吹き飛ばすように斬り上げる!

「翔陽閃!」

 ガギンッ!! ズガッ!!

 防がれたが、威力を全て殺しきれていない。上に重心が浮いたところを回し蹴りで足払い! 刃更士が体勢を崩しながらも後ろへ飛んで耐える。追撃だ、瞬時に納刀して距離を詰める!

「アストラリア流抜刀術」

 ガギィィィィィンッ!!!

 刀での一撃目は刀を盾にして防がれる!

「双龍!」

 防がれた一撃目に被せるかのように残った右手で鞘を振るう二撃目!!

 ドゴォオッ!!!

「壱の型」

「うがあっ!」

 二撃目の威力に耐え切れずに左へと吹っ飛ぶ刃更士。だが、倒れない、なんつーボディバランスだよ。さすが海外リーグで鍛えられた元代表選手だぜ。

「あーあ、がっかりだぜ、二撃目が刃ならな。テメーはまだ躊躇ってんのか? もういいぜ、ここらで引導を渡してやらあ」

 刀を両手で持ち右肩上に構える。切っ先はこちらへ向いている。何だ? 突きか?

「いくぜ、ナギト…。剣の神の刀技、その身で味わいやがれ」

 ススッ…、剣先が弧を描く様に見えた。

 ザンッ!!!!

「がっ…!?」

 片足を地面につく。

「神刀技・八岐大蛇ヤマタノオロチ

 何だ…、一瞬の内に、一度に八方向から斬られた…。魔力鎧装まりょくがいそうにヴェールを易々と斬り裂き、性能がアップしたバトルドレスにも斬り傷が入った。致命傷には至らなかったが、額が深く斬られた、血が流れ視界が赤く染まっていく。

「魔力のガードにその装備の性能に助けられたな。だが頭のガードは出来なかったようだな、次で死ぬぜ」

「くっ…」

 見えなかった。同時に恐らく上下左右、左右の肩口からの袈裟斬りに斬り上げ、防ぎようがない、回避も多分無理だ。今のより先に、更に速く強力な一撃を放たなければ確実に被弾する。

「次で終いだな。今のは八岐大蛇、八方向からの斬撃だ。次はもうプラス一撃、九頭竜クズリュウだ。いい加減に覚悟を決めろ。テメーは何の為に闘ってんだ? それに、その力にスキル。借りものだからって本気で使うのを遠慮してんだろ? 自分のものじゃないってな」

「何でそんなこと…」

 額の血を魔法で止める。だがまだ視界は奪われたままだ。

「バカが、見てたらわかんだよ、本当の自分のものじゃないっていう遠慮が。貰いものでもそれをどう行使するかはテメーが決めるもんだろうが。お前は常に迷いまくってんだよ。さっきの攻撃も本気で撃ってたら一撃目の斬り下ろしで終わってるだろ?言っとくが、どんな技術や知識も先達から習ったり学んだりして、サル真似から始まって、そうやって受け継いでいくもんなんだよ。教師やっててそんなこともわからねえとはな。貰いもんでもな、それはテメー自身の力なんだと自覚しろ。まあいい、そんなんじゃあどの道いつか死ぬ。変な奴に無駄に殺されるくらいなら、それなら俺が直々に引導を渡してやらあ。迷いを捨てなきゃ次で死ぬぜ、本気でいくからな…」

 さっきのは本気じゃなかったってのかよ、自分も情けをかけてんじゃねーか。

「そうだな、確かに俺は甘いんだろうよ。相手の気持やら事情やらを考えてしまう。でもアンタが言った溢れるような闘争心も俺の中には同居してるのもわかる。でもその本能に全てを委ねたら、俺はきっと大切な何かを失う気がする。だけどな、アンタの御陰でその線引きが大切なのは理解できたよ。火付きが悪いのも、そういうブレーキが知らない内にかかってるんだろうさ。けどな、俺はただ壊す為じゃなく、大切なものを護るために剣を抜く。それは譲れない。…そうだな、貰いものでも、鍛えたのは自分自身、アンタの言う通りだ。だからな…、親父、これはアンタを乗り越える為に放つ一撃だ。もう一度死んでも後悔すんなよ!」

 チキッ! 抜刀の構えを取る。

「神格・神気解放…」

 ドゥッ!!!

 うっすらと神気が立ち昇る。あの神速の八連撃、いや次は九連撃か、それよりも更に速く、一撃で蹴りを着けるにはこれしかない。血で塞がった視界を補うために神眼を発動させる。

「漸くその気になったか、遅えんだよ。その覚悟が本気かどうか、確かめてやる。死にたくなかったらどうにかしろよ。次の九頭竜はトドメが急所への突きだからな」

 いつもよりも更に前傾し、左手を前へ、踏み出す足に強く力を込める。

「悪いけど、迷いだらけだよ。俺はアンタみたいに何でも器用に割り切れないしな。でもな、迷っても迷っても歩みは止めない。そうやって少しづつでも前に進む。そう、それが俺の今出せる答えだ!」

「そうか、ならば退くな、二度と踏み出せねえ。そして絶対に臆するな、その時点で負ける。テメーの相手は自分自身だ、その一対一に絶対に負けんじゃねえぞ!」

 先程の八岐大蛇と同様の構えを取る刃更士。

「退かねえし臆しもしねえよ、アンタも知ってるだろ、俺がどれだけ負けず嫌いかを!」

 互いの剣気がビシビシとぶつかり合い空気をくすぶる。

「神刀技…」

「アストラリア流抜刀術・奥義」

 ドンッ!! 同時に地面を思い切り蹴る!

「九頭竜!!」

 更に深く踏み込み、渾身の力で抜刀する!

神龍しんりゅう!!!」

 カカァアッ!!!

「うおおおおおおおお!!!!!」

 突進しながら繰り出す、超神速の抜刀術! 刃更士が放つ九頭竜よりも速く、斬り裂いた空間に黒い亀裂が走る! アリアがやっていたように、本来ならそこで相手の攻撃を飲み込み、振り返って納刀だが、俺はその勢いのまま背後へと駆け抜けた。カチィーン! 納刀と共に空間に刻んだ斬撃痕から刃更士の放った技の威力に神龍の剣圧、魔力の奔流が迸る!!

「ぐああああっ!!!!」

「ぐっ!!」

 その渦に飲み込まれて吹き飛ばされた刃更士を受け止める、そのまま神龍の渦に背を向けて全力で神気結界を展開する!! だが自分で放ったとしても、さすがはアストラリア流の奥義、神気結界によってかなり相殺されたが2人揃ってその威力に吹き飛ばされる! 鏡面世界のコロシアムの地面を何十mも転がったところで、漸く俺が空間に刻んだ斬撃痕は消滅した。

「最後まで敵を庇うとは、やっぱテメーはバカだな…」

「うるせえ、アンタみたいな奴でも俺にとってはあの世界での最後の大切な家族だ。クソ親父でも問答無用で斬れるほど腐っても、堕ちてもねーんだよ」

「ハハハッ! 迷いながらでも前に進むか、甘ちゃんのお前に相応しい答えだな。だが、悪くねえ。迷っても歩みを進めるのをやめるんじゃねーぞ」

「言われるまでもねえよ、クソ親父!」

 2人して仰向けに寝転がり、笑う。

「俺が踏み出せるように追い込んでくれたんだろ? ありがとうな、父さん」

「バーカ、これでも親父なんだよ。バカ息子に道を示さなきゃならねえ。でもな、口で言って伝わらねえことだってあるだろうが」

「ああ…、そうだな、男の語り合いは拳と相場が決まってるからな。御陰で色々とスッキリしたよ」

「いいか、ナギト、お前一人で全てを背負えるほど世界は小さくねえ。あの偽物野郎はぶっ飛ばすとしてもだ。もっと仲間を、信頼できる奴らを増やせ。一人で何でもかんでも背負い込むな。それに俺も少しは力になってやるよ。召喚魔法ってやつで喚べ。まだ暴れ足りねーからな」

「はあ? 死人を喚べるのか?」

「俺と母さんはお前と魂で繋がっている。召喚魔法ってやつを通して実体を得られるらしいぜ。いつもはあの世に居るけどよ。魔物は神格に宿るらしいがな。そういうのを俺が剣を習った神が言ってたぜ。俺は剣技、母さんは回復や補助魔法が使える。人手が足りねーときはいつでも喚べ、彩ちゃんにもまた会いたいしよ」

「はあ…、まあ神様の理屈はよくわからんし、理解しようとするだけ無駄だしな。できるってんならできるんだろ。まあ気が向いたら喚んでやるさ。それまでにそのダセえロン毛切っとけよ」

「2人共ー、もう終わったのー?」

 ぱたぱたと母さんが近づいて来る。体を起こし、暫くの間楽しく話して過ごした。懐かしい、もしこの世界に戻って来なければ、神の試練を受けていなければ、二度と会えなかったはずだしな。

「しかし、王様と親族になるとはな。お前、やろうと思えば酒池肉林じゃねえか」

「どこの董卓だよ、俺はそんなの別に欲しくねえ。それに拠点にする都市に家も手に入れたしな」

「大きいのー?」

「あの残念王が言うには豪邸らしいけど。アヤのお付きのメイドさんが2人で管理してくれるし、それなりにデカいんじゃないのか? まだ見てないけど」

「ほう、良いじゃねえか、なら母さんと俺も召喚してそこに住ませろよ」

 いらんこと言い出しやがった。

「母さんはなー、家事とかしてくれそうだけど。親父は何か嫌だわ、いい年して両親と同居とか色々やりにくそうだし。気が向いたら招待してやるから、アンタは国王とでも飲んでろ」

「ハハハッ! そらそうだな、…おっともう時間だ。この世界が崩れる、試練が終わったんだしな。いいか、ナギト、あんなクソに負けんじゃねーぞ」

 ピシピシと創りものの空に亀裂が入っていく。この世界が崩壊し始めたんだろう。

「ナギくん、頑張ってね! いつでも応援してるからね!」

 ぶんぶんと両手でこぶしを握って上下に動かす母さん。

「ああ、行ってくる。絶対負けねーよ。ありがとう2人とも」

 立ち上がると、鏡面世界の崩壊が激しくなり、手を振る2人の姿も消えていく。そして眩い光に包まれる。再び目を開けると、そこは踏破したドベルグの道の扉の前。扉は閉じられており、それも、すーっ、と音もなく消えていった。戻って来たのか?

 振り返ると送り出してくれた4人と、鍛冶師の恰好をした女性が1人、別の神様だろうか? ずっと待っていてくれたのか?

「カーズ! 試練を見事乗り切ったのですね!」

 アリアが抱き着いて来る。なんか久々に会う感じがするな。

「ああ、結構キツかったけど、何とかね。ちゃんと抜刀術も練習して使えるようになったぞ」

「お帰りなさい、カーズ。答えは見つかったかしら?」

 サーシャが尋ねて来る。

「あー、うん、どうなんだろ。はっきりとはわからないけど。でも迷いながらでも前に進むことが大切なことだってことはわかった。あとは…、貰いものでもこの力を行使するのは自分自身だってことかな?」

「んー、何かハッキリしない答えだな。おいオヤジ、試練ってそんなんだったっけか? もう覚えてねえけどよ」

 ルクスが怪訝な顔でゼニウスを見る。中の様子は見えなかったのかも知れないな。

「うーむ、神以外でこの試練を突破したのはカーズが初めてだからのう。人の心と神のそれでは異なるということかも知れぬな。してカーズよ、試練を乗り越えたということは何かしらの恩恵ギフトを手に入れたはず。スキルの一覧を見てみるがいいぞ」

「あ、ああ、そうなのか? 特に何も獲得した声は聞こえなかったんだけどな。コロシアムの古代竜は召喚獣にしたけど」

「え、あれを!? 何と言うか…あなたは突飛なことをするのね」

「うーん、何千年も試練のためだけにあそこにいるのは勿体無いと思ってさ。今は神格の中に宿ってるらしいぞ。まあいいや、見てみよう、ステータス・オープン」

 確かに初めて見るスキルがパッシブの一覧にある。

「鋼の意志? これかな? USってなってるからユニークスキルか? アリアの魂の天秤みたいなもんかな?」

「ほぉ、そいつはスゲェ!」

 そんないいものなのか?

「ルクス知ってんの?」

「鋼の意志は全ての精神攻撃を無効化し、どんな逆境にあっても決して心が折れることなどない、精神系の最上位スキルですよ。さすがカーズです!」

 確かに凄そうだが、なぜアリアがドヤるんだろうか?

「それにどれだけ感情が高ぶっても心の奥底では常に凪の状態、冷静さを失うこともないわ。明鏡止水にも似てるわね」

 なんかそこまで言われると凄そうだな。俺自身は大して変わった気はしないんだけど。

「うむ、見事だ、我が子カーズよ。そして漸くお主に授けることができるものが完成した。ヘファイルカヌスよ、アレをここへ」

「はい、父上」

 鍛冶師の服装の女性が口を開いた。アリアや俺とはまた異なる、太陽の様に燃える炎の様な赤く黄色の混じった短めのくせっ毛をした、その女性がその場に異次元倉庫を開く。現れたのは台座、その上に乗っているのは剣か? だが凄まじい力を感じるものの、鉛の様な濁った灰色で、そのまま使える様には見えない。

「俺は鍛冶と武具の神ヘファイルカヌスだ。神々の神器は基本的に全て俺が創り、管理している。気軽にファーヌスとでも呼んでくれ、俺の神格も勿論お前の中にあるぜ、カーズ」

 俺っ娘か…、神様って色々とキャラ濃いよな。

「ああ、鍛冶の神ってことはヘパイストスか? まさかそんな凄い人に剣を打ってもらえるなんて…」

「ハッハッハ! お前が居た世界ではそんな名だったのか。まあいいさ、これをお前に渡す前にまだやることがあるのさ。父上、アリア、サーシャにルクス、お前らは仕上げに思いと力を全力で注げ。他の奴らにはもうやってもらっているからな」

「そんなことを? 神器を創るってのは大変なんだな…」

 そりゃ時間かかるよな。

「いやカーズよ、お前のは特別製だ。普通はそこまでしねえよ。お前に世界の命運を左右させるような重荷を背負わせた俺達のほんの気持ちだ。まあそのせいでかなりの時間が掛かっちまったんだがな」

「…そうなのか? 何だか色々と申し訳ないな、ありがとうファーヌス」

「ヘッ、礼は使ってからだ。それだけお前を誰もが大切に、そして期待してるってことだからよ。おうルクス、お前からさっさとやりやがれ」

「へいへい、お姉様。じゃあいくぜ! 軍神の燃え盛る闘志と、悪を粉砕する力を受け取れ!」

 ドウッ!!!

 ルクスの手から炎の様な神気が注ぎ込まれる。

「ふぃー、こいつは結構力使うもんだな」

「では次は私ね、全てを慈しむ愛の心と、勝利を手にする力をここに!」

 サーシャからも同様に力が注ぎ込まれる。

「アリアよ、お主は最もカーズに寄り添っておる、最後にするとよい。先に余がやろう、大神の大いなる力、裁きの雷となりてこの剣に集え!」

 ドオオオーン!!!

 さすが大神、凄まじい雷の力が剣に吸い込まれた。

「父上…、壊す気ですか…?」

 ファーヌスに睨まれるゼニウス。あーヘパイストスって第一子だっけな? なるほど、お姉様ね、納得。

「ハハハ、気合を入れ過ぎた。まあ許せ!」

 溜息を吐くファーヌス、こういうやり取りに慣れてるんだろな。

「では、最後に私ですね。カーズの為…、正義と公平の心と力よ! この剣に力を与え給え!!!」

 カッ!! シュウゥゥゥ…

 アリアの力も光と共に剣の中へと収まる。だが剣は鈍い鉛色のままだ。まだ完成ではないということか?

「カーズよ、最終工程、仕上げに使い手となるお前の思いと限界まで高めた神気を、この剣に名をつけて注ぎ込むんだ。そうすることでこれはお前だけの最強の神器となる。裏切者以外の全ての神々の魂が籠っている且つてない神器だ。さあ、全力で神気を高めろ! 神衣カムイを纏う程の限界を超えた神気を!」

 ファーヌスに頷き、神格を解放する。

「ああ、わかった。いくぜ! はあああああああ!!! 輝け俺の神格よ! 燃え上がれ! 限界を超えて高まれ、俺の神気よ!!!!!」

 ゴオオオオオオオ!!!! ジャキィイイーーーン!!!

 神衣が装着される。まだ纏うのは2回目だが、やはり凄まじい力を感じる…。それに以前よりも遥かに強い力だ。形状も体を守る部分が増え、頑丈な作りになっている。試練や激戦を経てきたからなのか?

「銀色に真紅の縁取りの炎とは、こんな神気見たことねえ…。さすがだぜカーズ」

「うむ、凄まじい神気よの。さあ神器を手に取り、名を与えよ、カーズ!」

 親父との会話が頭をよぎる。俺一人で背負える程世界は軽くないと。だが、これだけ沢山の神々が力を与えてくれたんだ、それなら寧ろ背負ってやるよ! 護ってやるさ、この世界が二度と滅びないように、この世界の運命に翻弄されながらも今ここに立っている俺に、相応しい名前を! 柄を力強く握り、神気をありったけ注ぎ込む!

「俺と共に来い! お前の名は神剣ニルヴァーナ! この世界の運命に巻き込まれても、それでもここに戻って来た、今ここに存在する俺に相応しい名前だ!」

 カアッ!!!!

 一際眩く強い光が辺りを包む!
 
『我が名は神剣ニルヴァーナ。我が主カーズよ、必要なときはいつでも我が名を呼ぶのだ…』

 何だ? 剣から声が響いて来る。そして光が収まると、神剣が姿を現す。刀身に銀と真紅のオーラを纏い輝く片手剣。鍔の部分にはアリアの様な天秤のデザイン、鍔から刀の中心部分まで真紅の芯が通っている。黄金の柄には炎と冷気がリングの様に絡まった様なオーラで包まれている。こんな剣見たことがない。これが、俺だけの神器…。

「よしよし、最高の出来だ。その神剣はあらゆる悪を斬り裂く最強の剣。そしてカーズ、お前の思った通りに形状を変えることも可能なはずだ。刀にも、二刀にもな。アリアの剣技を使うお前には相応しいだろう? そいつを使って裏切者共もぶった斬って来な!」

「ありがとうファーヌス、それにみんなも。これでヤツとも全力で闘える」

 うんうんと頷く全員。

「使わないときは念じればお前の神格の中に収納される。地形を変えてしまう程の神器だ、扱いに気をつけるようにな」

「ああ、わかったよ」

 念じるとヨルムが光の粒子となったときのように、体に吸い込まれていった。

「ではこれより、裏切者の粛清も兼ねてサーシャ、ルクスよお前達もニルヴァーナへ向かえ。義骸に入らなくともよい。これは神界特別指令オーダーだ。手が空いた神々もじきに投入する。まずは奴らの動向を探れ、見つけ次第屠っても構わん。ではゆけ!」

「「ハッ!!」」

 2人の気配が消える。転移したのだろうな。

「じゃあアリアは俺が召喚する。SSランクまで召喚のランクが上がったんだ。これならアリア本体を喚べるだろ?」

「ええ、そのランクなら問題ありません。しかしそこまで急成長するとは、見事ですね」

「うむ、ならばそれで良かろう。こちらも情報が集まり次第連絡はしよう。お前達は先ずは大魔強襲スタンピードの処理であろう、最早猶予もない、カーズよお主は先に転移で向かえ。その後アリアを召喚するようにな」

「はい、色々とお世話になりました。また来ても構いませんか?」

「勿論だ、いつでも待っておるぞ」

 ゼニウスと握手を交わす。相変わらず手が痛くなった。

「じゃあアリア、すぐに喚び出すからな。休んでてくれ」

「ええ、待っていますよ。カーズ、愛しき私の弟よ」

「ああ、行ってくる!」

 そう言って、俺は転移魔法を起動させた。




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