蠱毒の中の人形

どこでも大佐

文字の大きさ
上 下
1 / 2

前半

しおりを挟む
「次の犠牲者は誰かしら。あぁ~。ゾクゾクする」
私は呪いの人形。ここは中世の面影を残すヨーロッパ中部の田舎町。
秋になってから続く冷たい長雨が、私が飾られているショーウィンドウをしとしとと濡らしている。
「まだかな~。まだかな~」
私はガラスケースの中で、じっと外を見つめている。
やがて道の向こうから、黒いローブを身に纏った子供が現れた。
その子供はゆっくりと歩いてくる。そして私の前に立つと、満面の笑みを浮かべた。
「見つけた!」
そう言うと店の扉を開け、中に入ってきた。

私はガッカリした。

というのも私につけられている値札は、とても子供が買えるような金額ではないからだ
「馬鹿な子だよ」

子供と店の陰気な顔の店員が長々と話をしている。
さっさと追い出せばいいのに

ところが陰気な顔の店員はこれまで私が見たこともないよう笑顔をした。
そして私の側にやってくると乱暴にガラスケースを開け、私を無造作に掴んだ。
「ちょっと、痛いって。やめて」私は心の中で叫び声をあげる。

店員は包装もせず、そのままその子にわたした。

「ありがとう。店員さん」その子がお辞儀をし、私をまじまじと見ている。
雰囲気を見るに、まだ私が買われたわけではなさそうだ。

その子は私の優雅な金髪の髪を撫で、白磁のようなほっぺに触れ、そしておもむろに私の服を乱暴に脱がした。さらにひっくり返されたり。手足を引っ張られたり。

これだから子供は嫌いなんだ。私は内心毒づいた。

点検が終わったのか私は裸のまま、台の上に置かれた。

「買うわ」嬉しそうな声が聞こえた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

永遠に一緒に…

神在琉葵(かみありるき)
大衆娯楽
いつまでも一緒よ…

願いの物語シリーズ【ヒナちゃんねる】

とーふ(代理カナタ)
大衆娯楽
かつて世界にその名を刻み付けたアイドルが居た。 『夢咲陽菜』 彼女が歩けば、その姿を追い。 彼女が笑えば、同じ様に笑い。 彼女が歌えば、光の夢を見る。 誰もが彼女に夢を見た。 その手が星に届くと。 だが、その夢は途切れ、彼女は地に落ちた。 しかし! 彼女はそのまま消えはしなかった。 その笑顔と、言葉で彼女は人を惹きつける。 今日も、リスナーと共に楽しい日々を繰り広げてゆくのだった。 ☆☆本作は願いシリーズと銘打っておりますが、世界観を共有しているだけですので、単独でも楽しめる作品となっております。☆☆ その為、特に気にせずお読みいただけますと幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

祭囃子を追いかけて

壺の蓋政五郎
大衆娯楽
鎌倉の小さな町に四百年続く例大祭がある。戦時中の一時期には中断されたが町の復興と共に再開されずっと続けられている。その小さな町に生まれ育った子ども等は必然的にこれを継いで行かなければならない。選択肢はなく消防と氏子という親達の繋いできたやりかたでこの町を守り繋いでいく使命がある。北川賢治もその一人である。しかし大事な時期に酔っ払い運転を二度続け半年の実刑となった。北川家は今年の例大祭の当番である。これだけはきっちりとやりきらなければならない。お祭りに掛ける男達とそれを支える女達、そして祭の主役に憧れる子供たちが祭囃子を追いかける。笑いと涙の物語です。

タイトルは面白そうな短編集

けろよん
大衆娯楽
作品タイトルに、番組内コーナー「タイトルは面白そう」で過去テーマとされたワードを挿入。文字数は1000文字以下の超短編。 第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞用に執筆した短編集。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...