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第二部:新婚編

23:蜜柑色ハニーミルク

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 カマイタチの村から南下すると、大きなオレンジ色の建物が目に入ってきた。楕円状に丸くなっているそれは、巨大な蜂の巣みたいだ。入口には門番らしき蜂魔族が立っている。近付いてみると、ルトラに向かって敬礼してくれた。

「ようこそおいでくださいました。ジェリン様がお待ちです」
「中は入り組んでいますので、ご案内いたします」

 頭から伸びている触角がひょこりと揺れて、透明な羽がブンッとはためく。反転している黒目をさわやかに細めた門番さんは、キビキビした動きで先導してくれた。

 蜂の巣の中は明るくて、甘い匂いが漂ってくる。門番さんの言う通り、道があちこちに曲がりくねっていて、六角形に区切られた部屋のようなものが並んでいる。なんだか巨大なシェアハウスみたいだ。擦れ違う蜂魔族達に会釈しつつ歩いていた途中で、うっすらとドアが開いている所があった。中からは楽し気に歌う声が聞こえてくる。

「……少し、失礼しますね」

 そう言い残して部屋の中に入っていった門番さんの後ろから、そっと中の様子を窺ってみる。まるで保育所みたいな空間に子供の蜂魔族が集まっていて、その中心には人間の男の人が居た。僕より少し年上に見える人だ。彼は門番さんに気付くと、子供に向けていた笑顔を消して剣呑な雰囲気になってしまう。

「あんたか。何の用だよ」
「いえ、愛らしい声が聞こえてきましたので、様子を見に」
「そんなくだらない理由で入ってくんな。おれは仕事をしに来てんだよ。お前に会うためじゃない」
「もちろん、分かっていますよ」
「だったら出てけ。仕事の邪魔をすんじゃねーよ」

 そのまま叩き出しそうな勢いで追い出された門番さんは、ぴったり閉じられてしまった扉から視線を逸らして微笑んだ。

「すみません、彼の笑顔を滅多に見る機会がないもので……。お待たせしてしまいましたね、こちらです」
「あ、の……。さっきの人って、人間ですよね?仕事で来てる、って聞こえたんですけど」
「はい。彼は異界館から派遣されている人間で、主に子供達の面倒を見てくれています。私としましては、三ヶ月の試用期間の内に伴侶として迎えたいのですが……、なかなか難しいですね」
「異界館……」

 その言葉には聞き覚えがあった。確か、どの魔族からも選ばれなかった人間が保護される場所だったっけ。勝手に召喚されて、選ばれなかったら元の世界じゃなくてそういった所に送られるって、改めて考えると酷い流れだと思う。ある意味魔族らしいとも思うけど。
 でも確か、相手が決まるまではそこで暮らすはずなんじゃ……?

「ルトラ。異界館に居る人達って、出稼ぎみたいなこともしてるの?」
「出稼ぎ……ってよりかは、そこの門番の言う通り試用期間だな。この世界に呼ばれる人間は、潜在的に魔族との相性が良いんだが……、たまに例外が居るんだよ。男同士が嫌、人じゃない奴となんて付き合わない、って感じでな。だからまずは慣れさせるために、三ヶ月だけ外で暮らしてみる試用期間が存在するわけだ。気に入ればそのまま永住、無理なら異界館に帰還、って感じだな」
「へぇ……。さっきの人は仕事って言ってたけど、慣れてる途中なんだね」

 だから門番さんのことを邪険にしてたんだな……。……でも、なんだろう。ただの勘だけど、心の底から嫌っているようには見えなかったような気がするんだよね。

 ……そんなことを考えている内に、やたら華美な扉の前に辿り着いた。
 どうぞ、と開かれた向こう側に広がっていたのは、異様な光景だった。

「我が城へようこそネ。うちはジェリンいうヨ。どうぞよろしくアル」

 独特なイントネーションで喋る彼は、とんでもない美人な蜂魔族だ。反転した目は門番さんと同じだけど、なんというか存在が綺麗だ。そんな彼、ジェリンさんの隣に居る山吹くんは、フリルたっぷりのミニチャイナ服を着て立っていた。胸部分だけハート型に切り取られた服から露出した乳首、そこからプシュプシュと液体を搾られながら。

「あっ、はぅ、うぅん。はず、かし……♡みられ、てる……♡」
「だからもっと早く搾ろうかって言ったネ。断ったのはブッキーなんだから、ちゃ-んといっぱい蜜を搾ってヨ?」
「んうっ、は、あぁ♡」

 もじもじしながらも弄る手を止めない山吹くんは、胸から甘い香りがする蜜を垂れ流している。それは肌を伝った後にふわふわ浮いて、後ろに置いてある瓶の中にひとりでに入っていった。きっとそういう魔法なんだろうけど、搾乳ならぬ搾蜜している山吹くんの姿がえっちでドキドキしてしまう。

「ブッキーの蜜は極上ネ。舐めると、ヤりまくって枯れた喉もうるうるなるヨ」
「え」

 自慢げにそう語るジェリンさんの言葉に思わず反応してしまう。もしかして、銀くんの所で飲んだあの飲み物って……。

「ん、その反応、もしかして飲んだことあるカ?」
「へっ、えっと、そ、そうかもです」
「それは嬉しいことヨ。ブッキーも喜んでるネ」

 いや、可哀想なくらい真っ赤になってプルプルしてるけど……!

 うん、わかる、確かに恥ずかしいよね。乳首から出た蜜をクラスメイトに飲まれていたって知ったら。僕も、灰島くんと一緒に作った回復薬がどんな風に扱われたのか直接聞いたら……、絶対真っ赤になってしまうと思う。

 ……そんな山吹くんの姿に戸惑ったのもあるけど、もっと異様なのは部屋中に飾られている蜜色のおちんちんだ。妙にリアルな形をしていて、勃起した物からふにゃっとした物まで形が様々。硬そうだけど柔らかそうで……美味しそうにも見えてくる。

「ふふふ、気になル?気になっちゃうよネ?これはうちのちんちんをブッキーの蜜で型取りしたものネ。舐めてよし、挿れてよし、ブッキーがひとりさみしい時に使う専用ハニー棒ヨ。やー、毎日何本も使うから生産が追いつかないネ」
「っ、い、言わなくていいからっ♡」

 快活に笑うジェリンさんに抗議する山吹くんだけど、その瞳は嫌がるどころか喜色に溢れていた。ブピュッ、と勢いよくとろりとした蜜が飛ぶ。

 僕も僕で、分離した時のルトラのおちんちんを思い出してしまった。珊瑚くんと一緒に、夢中になってイきまくったことも。

「おやおや、君も興味あるネ?」
「え、いや、その……」

 バレてるかもしれないけど、ルトラのおちんちん型蜂蜜が欲しいなんて……口に出して言えない。な、何か別のことを……っ。

「あ。や、山吹くんの蜜が、その……、どんな感覚なのか気になるなって」
「え?」

 やばい、これもこれで駄目じゃん!普通にセクハラしちゃった……!

「ほら、聞かれてるネ。どんな感覚なのか教えてあげるとヨロシ」
「そう、言われても……。んっ♡熱くて、気持ちよく感じるとしか。体験してもらった方が早いかも」

 眉根を下げながらそう口にした山吹くんに、ジェリンさんの触角がぴこりと揺れる。

「そうそう。やっぱり自分で味わうのが一番ヨ。はい、どーゾ」
「へっ、わ、っ!?」

 ぽんっと放られた物を慌ててキャッチすると、金色六角形の飾りがついた……ピアスのような物だった。

「それを乳首につけるといいヨ。そしたら一時的に蜜が出るようになるネ」
「こ、これを乳首に……!?」

 ピアスなんて耳にすらつけたことがないのに。乳首に穴を空けるなんて、考えただけで痛そうでぞくりとする。

 そんな僕の手の平から、ルトラがそれをひょいっと摘み上げた。

「実際に穴が空く物じゃねぇな」
「え?」
「針の代わりに魔力が通ってるから、クロの敏感乳首が傷つくことはないぜ」
「びんか……っ、それは別に言わなくてもっ!」
「で、どうする?試してみるならつけてやるよ」
「う……」

 興味がないかと言われたら、そんなのあるに決まってる。

 ただの飾りでしかない乳首から、母乳みたいに蜜を噴射するなんて……。考えただけで唾液が湧いてきてしまう。

 ジェリンさんに引き寄せられた山吹くんが、乳首を舐められて喘ぎだした声をBGMに、僕はこくりと頷いた。


*****


 裸になった上半身。胸の先端で色付く乳首の両端を挟むように光る六角形の金色。全く痛くないけど、無性にむずむずする。

 流石にあの謁見の間のような場所で付けてもらうのは憚られたから、促されるままに客室に案内してもらった。

 二つある内のもう片方のベッドの上では、ジェリンさんが山吹くんの乳首を吸いながら手コキされている。

 真似してごらんと言われているようで、僕も自然とルトラの頭を抱き寄せていた。

「ん。甘い香りがするな」
「ほ、本当に出るのか分からないけど……、吸って、ルトラ」

 魔力ピアスでぷくんと膨らんだ乳首が、ルトラの口の中に消えていく。ピアスごとれろりと舐められれば、言いようもない快感が背筋を走った。

 胸がきゅんっと熱くなって、射精する時のようにじわりと滲み出す感覚。

「あ、あぁ、う……っ♡くる、なにか、きちゃ……、ん゛っ♡で、るうぅっ♡」

 喉を仰け反らせながらびくびく震える身体。ぐつぐつ煮立った何かが、乳首に集まっていまにも噴火しそうで……♡

「ひ、ぎゅ、うっ♡♡」

 プシャアッ♡

「ほ、お゛……っ♡♡」

 プシュッ♡プシィッ♡♡

 なに、これ。
 ずっとイってるの、続いてる。乳首、あつい。気持ちいいのが、終わんない……っ♡

「ん゛ぉ、っほおぉ♡♡あ、あぁ、そんな、吸われたら、ぁ♡」
「は……、あっま」

 ぢゅう、と強く乳首を吸われて、甘噛みされながら舌で転がされる。ぱちぱちと弾けるような快感で胸の先端がきゅうっと熱くなって、ドバッと溢れていくのがすごく気持ちいい。気が付けば、ルトラの頭を抱きしめて、もっと吸ってと言わんばかりに乳首をすりすり押し付けていた。

 ジュルッ♡チュウウウッ♡ペロッ♡ジュウウッ♡

「は、あ♡も、う♡きもち、よくてっ♡イっ、ぐ♡」

 おちんちん、触られてないのに♡乳首吸われてイっちゃう♡

 ぶるっと震えた身体から、溜まっていたモノが勢いよく昇っていって……。

 プシャアアアアアアァッ♡♡

 おちんちんから溢れた潮が、びちゃびちゃと床を濡らしていく♡

「ほ、お゛ぉ♡あぇ……っ♡♡」
「ん。気持ちよかったみたいだな」
「ふ、あ……♡よかった、ぁ♡♡」

 ちゅぱ、と離された乳首はぷっくりつやつやしていて、弄られていない左乳首が疼いてしまう。

「ルトラ、こっちも♡ちゅうちゅう吸って、きもちくしてほしい……♡♡」
「ああ、いいぜ」
「んっ♡♡」

 甘い蜂蜜味のキスをした後、発情した僕の乳首をペロペロ舐めてくれるルトラ♡

 お返しにいいこいいこって手コキしてあげたら、おちんちんから精液いっぱい出してもらっちゃった♡おっぱいちゅうちゅうしながらおまんこにも挿れてもらえて、幸せいっぱい♡

 連続絶頂している山吹くんと向かい合って一緒にイった時はすごく気持ちよかった♡お互いの蜜がかかってベタベタになったけど、甘いし気持ちいいから問題ないよね♡

「(あれ……?)」

 チョロチョロと余韻イキしながらおもらしをしていると、なんだか視線を感じた気がした。
 もしかして、誰かから見られてるのかな……♡恥ずかしいけど、もっと感じちゃう♡僕が蜜やおしっこや潮をプシャプシャ漏らすとこ、いっぱい見て♡♡♡


*****


「──う゛……。なんだかまだ乳首がじんじんしてる……」

 翌朝。
 魔力ピアスは外されて、蜜も出なくなったけど、乳輪が大きくなってぷくりと膨らんでしまった気がする。

 昨日はそれこそ乳首だけでイってしまうくらい感度が上がってたし、今後布が擦れただけでイくようになったらどうしよう……♡
 それはそれで、ルトラは喜んでくれそうだけど♡

「(……ルトラは、まだ寝てるみたいだ)」

 すよすよと寝入っているルトラの頬にキスをして、先にベッドから抜け出す。

 ちょっと尿意も感じるし、トイレ借りようかな。
 確かこの部屋の近くにあるって教えてもらったから、案内がなくても迷うことはないはずだ。

 その教え通り、まだ薄暗い廊下の向かい側に、トイレらしきピクトグラムが見えた。まだ早い時間だから足音は立てないようにしよう。

「っ……、く…………」
「(……?何の音だろう……)」

 どこからか、くぐもったような音が聞こえてくる。不思議に思いながらトイレに近づけば、その音がどんどん大きくなっていった。

 ……これ、人の声だ。しかも、これって……、喘ぎ声を我慢している、ような。

「ぐ、ぅ、く、そ……っ、こんなの、おかし、ぃ。あいつらが、あんなっ、ん、いやらしいこと、しやがってたから、ぁ……くぅ、なんで、イけな……っ、は……、らい、ら。らいらぁ……っ。も……、どうにか、しやがれ、ばかっ……」

 どこか聞き覚えのある声と、ニチュニチュと激しくなっていく肉音。
 あ、これ、僕が聞いたら駄目なやつだ。

 バレないようにそっと離れて……。

「おはようございます、クロ殿。お早いですね」
「ひゃいっ!?あ……、も、門番さん……」

 突然声をかけられて変な悲鳴をあげてしまった。振り向くと、そこに居たのは昨日案内をしてくれた門番さんだった。

「ああ、名乗っていませんでしたね。ライラと申します。門番というより警備全般に携わっているので、今は朝の見回り中なんですよ」
「……ライラさん……」

 その名前は、ついさっき聞いたばかりだ。シンと静まり返ってしまった、トイレの扉の中から。

「ところで、モミジ殿を見かけませんでしたか?昨日お話した、異界館から来ている彼のことなんですが……、いつもこの時間は寝ているのに姿が見えなくて」
「えっ。あ……、あー……、ごめんなさい、見てないです……」
「いえ、ありがとうございます。……試用期間がもうすぐ終わってしまうので、出来る限り傍に居たいのですが……ままなりませんね」

 そう言って儚げに微笑むライラさんを、そのままトイレに乱入させたくなってしまう。だってこれ、普通に両想いだよね?
 紅葉さんはあまり素直になれない人……琥珀くんみたいな感じだから、ちょっとだけ余計なお世話をしてみようかな……?

「ライラさんは紅葉さんのことが好きなんですね」
「ええ。異界館で彼を見た時、愛らしく笑っている姿に一目で心を奪われました。気がつけば試用の契約をしていて……。結局、その笑顔が向けられるのは子供達だけでしたがね」
「……まだ、試用期間は終わってないんですよね?それに、駄目だとしてももう一度契約すれば……」
「それは出来ない決まりになっています。彼等にとっては魔界に慣れることが目的ですから、一度試して駄目だった場所へは二度と行けないんですよ。きっとモミジ殿は異界館に戻ってしまうでしょうが……、それまでにせめて私の言葉が伝わればいいなと。勿論、伴侶になっていただけたらこの上ない幸せですが……、無理強いはしたくありませんからね」
「…………」
「あ……、申し訳ありません、クロ殿。少し話し込んでしまいましたね。まだ朝は冷えますので、ゆっくり休まれてください」
「……はい、ありがとうございます」

 キビキビとした動きで見回りに戻っていくライラさんの姿が見えなくなった後、僕は軽くトイレの扉をノックした。反応はない、けど、小さい呻き声のような音が聞こえる。苦しそうなものじゃなくて、悶えているような、そんな音だ。

「…………僕、魔法が使えるようになったんです。紅葉さんが素直に何でも喋ってしまう魔法、かけますね」
「……っ!?」

 魔法が使えるなんて嘘だけど、ルトラが使っている呪文を真似して口にする。強いて言うなら、プラシーボの魔法かな。

 すぐにその場から離れて部屋に戻ると、バンッと勢いよくドアが開く音がした。走り去っていく足音も。

「上手くいくといいけど……。……っ、あ……、そうだ、おしっこ……」

 忘れていた尿意が急に襲ってきた。いや、でもトイレは近かったし間に合うはず。大丈夫。

「クロ……、どこ行ってたんだ……」
「わひっ!?ル、ルトラ、あっ、い、今は離し……、力つよっ……!」

 まだ寝ぼけているような声音のルトラが、背後から僕に抱きついてきた。さっきまで布団の中に居たはずなのに……!

「ま、待って、おしっこ行きたいから……!ひうっ♡あ、おなか、押さないで……っ♡」
「んー……、まだ寝るぞ、クロ……」
「んあっ、も、駄目だって、ば……っ、ひ♡あ、だめ、漏れちゃ……、~~ッッ♡♡」

 抱きしめられたままベッドに逆戻りされて、呆気なく決壊してしまった僕は、恥ずかしさと心地良さで顔を赤くすることしか出来なかった。
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