11 / 15
悪魔の贈り物
④こううん【終】
しおりを挟む
「ルルビー。我が伴侶に害を為そうとするとはな。万死に値する」
「ひ、ぎっ、まお、ざま。ちが、おれ゛、は……ッ」
「行くぞ、ミツ。お前にはもっと最適な世話係をつけてやろう」
「だ、駄目です!早く火を消してください、ヴィラル様!これ、このブレスレット、ルルビーさんに関係のある物じゃないんですか?」
「我の物を我がどうしようが、この悪魔には関係ない」
「っ……、そ、それでも、駄目です!ヴィラル様……!」
熱い。肌が焼ける。痛くて堪らない。……でも、それ以上に心が痛い。何の迷いもなく魔王様が俺のことを殺そうとしていることが。贈り物なんて、魔王様にとっては何の意味もなかったことが。
シュウウウウッ……
「あ゛、がはっ、ぐ、へほっ、ひゅ、う、カハッ……!」
唐突に、熱さが引いていった。だけど自分の身体を支えることが出来ずに倒れこむ。生きてる。死んでない。あいつが、人間が、泣きながら頼んだからだ。その事実がより重くのしかかってくる。
「ミツに免じて不問としてやるが、二度とその汚らしい顔を見せるな」
冷たく言い捨てられた言葉を最後に、彼等の気配が部屋から消える。残されたのは、焼かれた一匹の悪魔。魔王様の魔法でつけられた傷は、魔王様にしか治せない。
変色して赤黒くなった手足をどうにか動かして、鏡を覗けば。
「は、はは……、ほん゛と、きったな゛……」
酷く爛れた顔の化け物が、映っていた。
錆び付いたような声が焼かれた喉から軋んで、嫌な音を立てる。
『ルルの顔も声も全部好き。可愛い』
ニードが好きになってくれたモノも、なくなっちゃった。
……どうせ、もうここには居られないんだ。最後にニードに会っても、きっと辛い思いしかしないだろうから。
こんな俺を好きになってくれた御礼に、これだけは残しておきたい。
「ふ、ぐ、うあ゛あぁっ!は、はぁ……」
手にしたそれを、机の上に。赤い文字でニードの名前を添える。
全身がズキズキ痛むけど、動けるようにはなってきた。いつまでもここに居たら、人間がいない時に魔王様に殺されてしまう。
ゆっくり開け放った窓から飛び降りれば、焦げた翼がじくじくと痛んだ。フラフラとした飛行で目指す場所は、とにかく魔王城から離れたところ。
「げほっ、かひゅっ……、ふ、う゛、うあ゛ぁ、ん……っ」
……滲む視界と、深い傷を負った身体で、どこまで行けるか分からないけれど。
*****
「……遅いな。勉強が長引いてるのか?」
いつもなら愚痴りに来てもおかしくないという時分なのに、姿を見せないルルビーに若干の心配が勝つ。
自分のことを意識して来れないという甘い予想を立てながらも、人間に勉強を教えるために使用している蔵書室に向かうことにした。
近付くに連れ、ルルビーのニオイが濃くなっていく。ただ、人間のニオイはしない。ニードは鼻をすんと鳴らして思考する。
「(何か調べものか……、疲れて寝落ちしてるのかな)」
驚かしてやろうかと、そんな悪戯心を胸に秘めてそっと扉を開けるが、愛する悪魔の姿は見えない。奥に居るのかとそのまま足を踏み入れたところで、ニードの目にそれが飛び込んできた。
「は……?」
机の上に書かれた自分の名前、そして、その隣の乾いた血溜まりの中に残されていたのは──、ルルビーの残り香が立ち昇る、黒焦げた角だった。
「ひ、ぎっ、まお、ざま。ちが、おれ゛、は……ッ」
「行くぞ、ミツ。お前にはもっと最適な世話係をつけてやろう」
「だ、駄目です!早く火を消してください、ヴィラル様!これ、このブレスレット、ルルビーさんに関係のある物じゃないんですか?」
「我の物を我がどうしようが、この悪魔には関係ない」
「っ……、そ、それでも、駄目です!ヴィラル様……!」
熱い。肌が焼ける。痛くて堪らない。……でも、それ以上に心が痛い。何の迷いもなく魔王様が俺のことを殺そうとしていることが。贈り物なんて、魔王様にとっては何の意味もなかったことが。
シュウウウウッ……
「あ゛、がはっ、ぐ、へほっ、ひゅ、う、カハッ……!」
唐突に、熱さが引いていった。だけど自分の身体を支えることが出来ずに倒れこむ。生きてる。死んでない。あいつが、人間が、泣きながら頼んだからだ。その事実がより重くのしかかってくる。
「ミツに免じて不問としてやるが、二度とその汚らしい顔を見せるな」
冷たく言い捨てられた言葉を最後に、彼等の気配が部屋から消える。残されたのは、焼かれた一匹の悪魔。魔王様の魔法でつけられた傷は、魔王様にしか治せない。
変色して赤黒くなった手足をどうにか動かして、鏡を覗けば。
「は、はは……、ほん゛と、きったな゛……」
酷く爛れた顔の化け物が、映っていた。
錆び付いたような声が焼かれた喉から軋んで、嫌な音を立てる。
『ルルの顔も声も全部好き。可愛い』
ニードが好きになってくれたモノも、なくなっちゃった。
……どうせ、もうここには居られないんだ。最後にニードに会っても、きっと辛い思いしかしないだろうから。
こんな俺を好きになってくれた御礼に、これだけは残しておきたい。
「ふ、ぐ、うあ゛あぁっ!は、はぁ……」
手にしたそれを、机の上に。赤い文字でニードの名前を添える。
全身がズキズキ痛むけど、動けるようにはなってきた。いつまでもここに居たら、人間がいない時に魔王様に殺されてしまう。
ゆっくり開け放った窓から飛び降りれば、焦げた翼がじくじくと痛んだ。フラフラとした飛行で目指す場所は、とにかく魔王城から離れたところ。
「げほっ、かひゅっ……、ふ、う゛、うあ゛ぁ、ん……っ」
……滲む視界と、深い傷を負った身体で、どこまで行けるか分からないけれど。
*****
「……遅いな。勉強が長引いてるのか?」
いつもなら愚痴りに来てもおかしくないという時分なのに、姿を見せないルルビーに若干の心配が勝つ。
自分のことを意識して来れないという甘い予想を立てながらも、人間に勉強を教えるために使用している蔵書室に向かうことにした。
近付くに連れ、ルルビーのニオイが濃くなっていく。ただ、人間のニオイはしない。ニードは鼻をすんと鳴らして思考する。
「(何か調べものか……、疲れて寝落ちしてるのかな)」
驚かしてやろうかと、そんな悪戯心を胸に秘めてそっと扉を開けるが、愛する悪魔の姿は見えない。奥に居るのかとそのまま足を踏み入れたところで、ニードの目にそれが飛び込んできた。
「は……?」
机の上に書かれた自分の名前、そして、その隣の乾いた血溜まりの中に残されていたのは──、ルルビーの残り香が立ち昇る、黒焦げた角だった。
52
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
ストレスを感じすぎた社畜くんが、急におもらししちゃう話
こじらせた処女
BL
社会人になってから一年が経った健斗(けんと)は、住んでいた部屋が火事で焼けてしまい、大家に突然退去命令を出されてしまう。家具やら引越し費用やらを捻出できず、大学の同期であった祐樹(ゆうき)の家に転がり込むこととなった。
家賃は折半。しかし毎日終電ギリギリまで仕事がある健斗は洗濯も炊事も祐樹に任せっきりになりがちだった。罪悪感に駆られるも、疲弊しきってボロボロの体では家事をすることができない日々。社会人として自立できていない焦燥感、日々の疲れ。体にも心にも余裕がなくなった健斗はある日おねしょをしてしまう。手伝おうとした祐樹に当たり散らしてしまい、喧嘩になってしまい、それが張り詰めていた糸を切るきっかけになったのか、その日の夜、帰宅した健斗は玄関から動けなくなってしまい…?
皇帝の肉便器
眠りん
BL
この国の皇宮では、皇太子付きの肉便器というシステムがある。
男性限定で、死刑となった者に懲罰を与えた後、死ぬまで壁尻となる処刑法である。
懲罰による身体の傷と飢えの中犯され、殆どが三日で絶命する。
皇太子のウェルディスが十二歳となった時に、肉便器部屋で死刑囚を使った自慰行為を教わり、大人になって王位に就いてからも利用していた。
肉便器というのは、人間のとしての価値がなくなって後は処分するしかない存在だと教えられてきて、それに対し何も疑問に思った事がなかった。
死ねば役目を終え、処分されるだけだと──。
ある日、初めて一週間以上も死なずに耐え続けた肉便器がいた。
珍しい肉便器に興味を持ち、彼の処刑を取り消すよう働きかけようとした時、その肉便器が拘束されていた部屋から逃げ出して……。
続編で、『離宮の愛人』を投稿しています。
※ちょっとふざけて書きました。
※誤字脱字は許してください。
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
大好きな先輩に言いなり催眠♡
すももゆず
BL
R18短編です。ご注意ください。
後輩が先輩に催眠をかけて、言うこと聞かせていろいろえちなことをする話。最終的にハッピーエンドです。
基本♡喘ぎ、たまに濁点喘ぎ。
※pixivでも公開中。
「陛下を誑かしたのはこの身体か!」って言われてエッチなポーズを沢山とらされました。もうお婿にいけないから責任を取って下さい!
うずみどり
BL
突発的に異世界転移をした男子高校生がバスローブ姿で縛られて近衛隊長にあちこち弄られていいようにされちゃう話です。
ほぼ全編エロで言葉責め。
無理矢理だけど痛くはないです。
よしよしとろとろエステで嫁にされる話
桜羽根ねね
BL
おっとり系敬語エステティシャン✕少し口が悪めのコンプレックス持ち社畜
催眠マッサージエステ風のエロコメです!
書きたいところを好きなように書いたので、ファンタジーとしてご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる