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後編
じゅう
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*****
主人が……ムムが気絶させられて攫われた後。
おれは必死に走ってあいつの家に突撃した。ムムの家とそう離れていない所にあるから助かった。拳が痛くなるのも構わずにドアを叩けば、死にそうなほど暗い顔をしたあいつが出てきた。
ムムのことを伝えることが出来たのは翻訳チョーカーのおかげだ。一瞬で顔が強張ったそいつは、怒気も露わにムム救出のため動き出した。怒りの対象は相手だけじゃなくて自分自身にもだったらしく、ひたすら悔いているようだった。
そうしてムムを買った相手がスライムだと突き止めて、認識阻害で行われている違法なパーティの存在、そこに潜入するための作戦等々、手際よく進めていった。
おれに出来ることなんてなかったから、アモリと寄り添って通訳しながら事態を見守っていた。
そして、数日後。
あいつに横抱きにされて無事に戻ってきたムムは……、憔悴しているようだけど、どこか吹っ切れたかのようにさっぱりとしていた。
『ただいま。心配かけてごめんね、リリちゃん。リリちゃんがミラくんに助けを求めてくれたんだね。クモリちゃんも、リリちゃんの傍に居てくれてありがとう』
「ん……。ムム、早く休んだ方がよくないか?」
『それもそうだね。じゃあ、帰ろっか。ミラくん、運んでくれてありがとう。もう降ろしてくれて大丈夫だよ』
『は?この流れで帰すわけないだろ。いいからここで休んでけ』
ミラからそんなことを言われれば、ムムは頬を赤く染めて嬉しそうに微笑んだ。嬉しい、大好きミラくん……なんて、そんなことを口にしそうだ。
そう思っていたら。
『駄目だよ、そこまで甘えるのは。隈が出来てる友達にこれ以上負担かけたくないし』
『……は?』
『あ……、あれ?友達……だよね?仲直りは出来たはずだって、思ったんだけど……』
「ムム、何言ってんだ?そいつのこと好きだ好きだってダダ漏れだったのに──」
『うん。だから、それはもうやめることにしたんだ。リリちゃんも、好きじゃない相手から好き好きって言われるの嫌でしょ?』
「それは……、まあ……?」
『それに、僕が低級淫魔だってのは事実だからね。ちゃんと受け止めて、身の振りを考えなきゃって思ったんだ』
ムム、気づけ。
ミラの顔がどんどん怖くなっていってるぞ。
言葉が分からないアモリに状況を説明すると、可哀想なものを見るような目を自分の主人に向けた。
「変に拗れてますね……。ムムさんのことが好きすぎるあまり、帰った途端に悶えて叫んでいるのを見てきた身としては、ちゃんと言葉で伝えればよかったのにと思いますよ」
「え。何言ってたのか分かったのか?」
「いえ、全く。けれど、言葉が通じなくても同じ恋する者だからですかね、なんとなく分かるんです。力をセーブをするために頑張ってもいたようですけど……、変に誤魔化さずに素直になればよかったんですよ。主人の自業自得です」
「きっぱり言うなぁ……」
「……ムムさんには幸せになってほしいですけど、うちの主人がうだうだして傷つけた分、今度は逆に振り回してほしいものです」
「まあ、それはそうだな」
「やっぱり想いは正直に伝えないと。……そういうわけなので、陸くんのこと、そろそろいただいてもいいですか?」
「んっ♡あ、こら……っ♡」
何やら言い合っているムム達の声が寝室に消えていく。あの二人はまた色々拗れそうだけど、なんだかんだ恋人同士になりそうな気がするな。
「大好きです、陸くん♡」
「ふ、あっ♡……ん、……おれも、好き♡」
おれ達用に作られたバスケットの布団の中、密着してキスをする。
そこで初めてまぐわった快感が忘れられなくて毎日のようにアモリを求めてしまうようになることを──、この時のおれはまだ知らない。
【大好きな幼馴染みが僕に冷たい】
(大好きな幼馴染みをあいしたい)
☆☆☆☆☆
今度はミラが好き好きと伝えまくって、『そのうち』無事に両想いになってハピエンになるおはなしでした。
蛇足ですが、タイトル部分は【】がムムの、()がミラの思いでした。
前編の最後もそうなっています。
主人が……ムムが気絶させられて攫われた後。
おれは必死に走ってあいつの家に突撃した。ムムの家とそう離れていない所にあるから助かった。拳が痛くなるのも構わずにドアを叩けば、死にそうなほど暗い顔をしたあいつが出てきた。
ムムのことを伝えることが出来たのは翻訳チョーカーのおかげだ。一瞬で顔が強張ったそいつは、怒気も露わにムム救出のため動き出した。怒りの対象は相手だけじゃなくて自分自身にもだったらしく、ひたすら悔いているようだった。
そうしてムムを買った相手がスライムだと突き止めて、認識阻害で行われている違法なパーティの存在、そこに潜入するための作戦等々、手際よく進めていった。
おれに出来ることなんてなかったから、アモリと寄り添って通訳しながら事態を見守っていた。
そして、数日後。
あいつに横抱きにされて無事に戻ってきたムムは……、憔悴しているようだけど、どこか吹っ切れたかのようにさっぱりとしていた。
『ただいま。心配かけてごめんね、リリちゃん。リリちゃんがミラくんに助けを求めてくれたんだね。クモリちゃんも、リリちゃんの傍に居てくれてありがとう』
「ん……。ムム、早く休んだ方がよくないか?」
『それもそうだね。じゃあ、帰ろっか。ミラくん、運んでくれてありがとう。もう降ろしてくれて大丈夫だよ』
『は?この流れで帰すわけないだろ。いいからここで休んでけ』
ミラからそんなことを言われれば、ムムは頬を赤く染めて嬉しそうに微笑んだ。嬉しい、大好きミラくん……なんて、そんなことを口にしそうだ。
そう思っていたら。
『駄目だよ、そこまで甘えるのは。隈が出来てる友達にこれ以上負担かけたくないし』
『……は?』
『あ……、あれ?友達……だよね?仲直りは出来たはずだって、思ったんだけど……』
「ムム、何言ってんだ?そいつのこと好きだ好きだってダダ漏れだったのに──」
『うん。だから、それはもうやめることにしたんだ。リリちゃんも、好きじゃない相手から好き好きって言われるの嫌でしょ?』
「それは……、まあ……?」
『それに、僕が低級淫魔だってのは事実だからね。ちゃんと受け止めて、身の振りを考えなきゃって思ったんだ』
ムム、気づけ。
ミラの顔がどんどん怖くなっていってるぞ。
言葉が分からないアモリに状況を説明すると、可哀想なものを見るような目を自分の主人に向けた。
「変に拗れてますね……。ムムさんのことが好きすぎるあまり、帰った途端に悶えて叫んでいるのを見てきた身としては、ちゃんと言葉で伝えればよかったのにと思いますよ」
「え。何言ってたのか分かったのか?」
「いえ、全く。けれど、言葉が通じなくても同じ恋する者だからですかね、なんとなく分かるんです。力をセーブをするために頑張ってもいたようですけど……、変に誤魔化さずに素直になればよかったんですよ。主人の自業自得です」
「きっぱり言うなぁ……」
「……ムムさんには幸せになってほしいですけど、うちの主人がうだうだして傷つけた分、今度は逆に振り回してほしいものです」
「まあ、それはそうだな」
「やっぱり想いは正直に伝えないと。……そういうわけなので、陸くんのこと、そろそろいただいてもいいですか?」
「んっ♡あ、こら……っ♡」
何やら言い合っているムム達の声が寝室に消えていく。あの二人はまた色々拗れそうだけど、なんだかんだ恋人同士になりそうな気がするな。
「大好きです、陸くん♡」
「ふ、あっ♡……ん、……おれも、好き♡」
おれ達用に作られたバスケットの布団の中、密着してキスをする。
そこで初めてまぐわった快感が忘れられなくて毎日のようにアモリを求めてしまうようになることを──、この時のおれはまだ知らない。
【大好きな幼馴染みが僕に冷たい】
(大好きな幼馴染みをあいしたい)
☆☆☆☆☆
今度はミラが好き好きと伝えまくって、『そのうち』無事に両想いになってハピエンになるおはなしでした。
蛇足ですが、タイトル部分は【】がムムの、()がミラの思いでした。
前編の最後もそうなっています。
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結おめでとうございます🎊
また新しい主様の作品を
見に行きますね🍀*゜
ではさいならぁ
ありがとうございます!
主様と呼ばれるのが新鮮で照れてしまいますね😊私得な話を閲覧いただき嬉しいです!
ありがとうございます!
時間を割いてこんなに長く嬉しい感想を送っていただき、とても嬉しいです!
脳内補完にお任せするような終わり方にしましたが、ちゃんとミラムムはくっついて、これまでクモリリのいちゃつきを見せられてた分イチャイチャしまくる未来は確定してます✨
もっとちゃんと言葉にしようよ攻め!と思いながらも、受けを悩ませてしまうのが癖なので、好きポイントが一緒で嬉しいです。受けが逆の方向に突っ走ってしまう軌道修正を攻めには頑張ってほしいところです。嫌われてると思い込んで避け続けちゃったりするのもいいですね。
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とても丁寧な感想ありがとうございます!すごく考えていただいてる……!
ハピエンに繋がるバドエンなのでふわっと濁しましたが、完全にバッドなら身体だけ溶かされて服だけが残される……という展開もあったかなと思います。私が悲しくて書けませんが……。
ムムくんやリリちゃんに心を寄せていただいて作者としてとても嬉しいです。あと数話で完結となりますので、まったりお付き合いくださいませ。