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御伽噺は絶頂日和〜卑猥の国の羞恥時姦〜

その⑥【終】

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「──っ!!」

 がばりと跳ね起きたアイリズは、ドクドクとうるさい心臓を押さえながら深く息を吐いた。
 随分と汗をかいていたらしく、じっとりとしていて気持ちが悪い。だが、それ以上に、下半身が濡れていることに気付いて、溜息をつく。今の身体は女などではなく、味気のない男。漏れたのも愛液ではなく精液だ。

「……彼等に、抱かれる夢だなんて……、欲求不満すぎませんか……? しかも、ふ……ふたり、一気に、だなんて」

 鮮明に残ってしまった夢の記憶が、現実の身体をじわりと蝕む。夢とはいえ、はしたないことばかりしてしまったことが恥ずかしい。いっそのこと、振り切ってこのまま彼等を想ってオナニーしまおうか、と。

 そう思った矢先、隣の部屋から何かが落ちる音が響いてきた。どすんともぼすんとも形容しづらいが、例えばそう、ベッドから転がり落ちたような音だ。

「キキョウ……?」

 そしてその音の根源は、ルームシェアをしている幼馴染みの部屋からだった。流石に濡れたまま部屋に向かうのはどうかと思ったが、万が一のことを考えてベッドから抜け出す。念の為、湿っていた寝巻きは、緩いスウェットに変えておいた。

 そして、部屋から出た所で、

「アイリズ。今日は早起きだな」

 もう一人の幼馴染み、ジニアと鉢合わせた。既にしっかりと身嗜みを整えている彼を前にして、咄嗟に寝癖がついていないか頭に手をやった。急いでいたとはいえ、あまり抜けたところを見られたくはない。

「おはようございます、ジニア。キキョウの部屋から騒音がしたので、確認をしようと思ったんですけど……」
「……それならきっと大丈夫だ。キキョウは僕の兄弟だからな」
「え?それは知ってますけど……?」
「きっと、今朝の僕と似た顛末になっているはずだ」

 理由になっているようでなっていない。
 意味が分からず眉を顰めるアイリズを見下ろして、ジニアは小さく口角を上げた。

「ああ、そう時間もかからない内に飛び出してくると思うぞ。……それはそうと、アイリズ」

 そうして、いつも通りの声音で、

「紅茶を淹れたから、『お茶会』をしないか?」

 どこか既視感のある言葉を、そっと囁いた。



『【アリスハウス】自己と対象を同じ夢の世界に閉じ込める、ドールハウス型の魔道具です。対象が主人公となり、自己の意識はその世界のキャラクターとして自動的に動きます。性的に繋がるまで夢から覚めることはありません。なお、対象が嫌だと思うことは出来ない仕様になっています。使用は一回きりです。また、夢の記憶は当人のすけべ度が高いほど残ります。-魔法性具百科より引用-』
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