23 / 47
御伽噺は絶頂日和〜卑猥の国の羞恥時姦〜
その⑥【終】
しおりを挟む
*****
「──っ!!」
がばりと跳ね起きたアイリズは、ドクドクとうるさい心臓を押さえながら深く息を吐いた。
随分と汗をかいていたらしく、じっとりとしていて気持ちが悪い。だが、それ以上に、下半身が濡れていることに気付いて、溜息をつく。今の身体は女などではなく、味気のない男。漏れたのも愛液ではなく精液だ。
「……彼等に、抱かれる夢だなんて……、欲求不満すぎませんか……? しかも、ふ……ふたり、一気に、だなんて」
鮮明に残ってしまった夢の記憶が、現実の身体をじわりと蝕む。夢とはいえ、はしたないことばかりしてしまったことが恥ずかしい。いっそのこと、振り切ってこのまま彼等を想ってオナニーしまおうか、と。
そう思った矢先、隣の部屋から何かが落ちる音が響いてきた。どすんともぼすんとも形容しづらいが、例えばそう、ベッドから転がり落ちたような音だ。
「キキョウ……?」
そしてその音の根源は、ルームシェアをしている幼馴染みの部屋からだった。流石に濡れたまま部屋に向かうのはどうかと思ったが、万が一のことを考えてベッドから抜け出す。念の為、湿っていた寝巻きは、緩いスウェットに変えておいた。
そして、部屋から出た所で、
「アイリズ。今日は早起きだな」
もう一人の幼馴染み、ジニアと鉢合わせた。既にしっかりと身嗜みを整えている彼を前にして、咄嗟に寝癖がついていないか頭に手をやった。急いでいたとはいえ、あまり抜けたところを見られたくはない。
「おはようございます、ジニア。キキョウの部屋から騒音がしたので、確認をしようと思ったんですけど……」
「……それならきっと大丈夫だ。キキョウは僕の兄弟だからな」
「え?それは知ってますけど……?」
「きっと、今朝の僕と似た顛末になっているはずだ」
理由になっているようでなっていない。
意味が分からず眉を顰めるアイリズを見下ろして、ジニアは小さく口角を上げた。
「ああ、そう時間もかからない内に飛び出してくると思うぞ。……それはそうと、アイリズ」
そうして、いつも通りの声音で、
「紅茶を淹れたから、『お茶会』をしないか?」
どこか既視感のある言葉を、そっと囁いた。
『【アリスハウス】自己と対象を同じ夢の世界に閉じ込める、ドールハウス型の魔道具です。対象が主人公となり、自己の意識はその世界のキャラクターとして自動的に動きます。性的に繋がるまで夢から覚めることはありません。なお、対象が嫌だと思うことは出来ない仕様になっています。使用は一回きりです。また、夢の記憶は当人のすけべ度が高いほど残ります。-魔法性具百科より引用-』
「──っ!!」
がばりと跳ね起きたアイリズは、ドクドクとうるさい心臓を押さえながら深く息を吐いた。
随分と汗をかいていたらしく、じっとりとしていて気持ちが悪い。だが、それ以上に、下半身が濡れていることに気付いて、溜息をつく。今の身体は女などではなく、味気のない男。漏れたのも愛液ではなく精液だ。
「……彼等に、抱かれる夢だなんて……、欲求不満すぎませんか……? しかも、ふ……ふたり、一気に、だなんて」
鮮明に残ってしまった夢の記憶が、現実の身体をじわりと蝕む。夢とはいえ、はしたないことばかりしてしまったことが恥ずかしい。いっそのこと、振り切ってこのまま彼等を想ってオナニーしまおうか、と。
そう思った矢先、隣の部屋から何かが落ちる音が響いてきた。どすんともぼすんとも形容しづらいが、例えばそう、ベッドから転がり落ちたような音だ。
「キキョウ……?」
そしてその音の根源は、ルームシェアをしている幼馴染みの部屋からだった。流石に濡れたまま部屋に向かうのはどうかと思ったが、万が一のことを考えてベッドから抜け出す。念の為、湿っていた寝巻きは、緩いスウェットに変えておいた。
そして、部屋から出た所で、
「アイリズ。今日は早起きだな」
もう一人の幼馴染み、ジニアと鉢合わせた。既にしっかりと身嗜みを整えている彼を前にして、咄嗟に寝癖がついていないか頭に手をやった。急いでいたとはいえ、あまり抜けたところを見られたくはない。
「おはようございます、ジニア。キキョウの部屋から騒音がしたので、確認をしようと思ったんですけど……」
「……それならきっと大丈夫だ。キキョウは僕の兄弟だからな」
「え?それは知ってますけど……?」
「きっと、今朝の僕と似た顛末になっているはずだ」
理由になっているようでなっていない。
意味が分からず眉を顰めるアイリズを見下ろして、ジニアは小さく口角を上げた。
「ああ、そう時間もかからない内に飛び出してくると思うぞ。……それはそうと、アイリズ」
そうして、いつも通りの声音で、
「紅茶を淹れたから、『お茶会』をしないか?」
どこか既視感のある言葉を、そっと囁いた。
『【アリスハウス】自己と対象を同じ夢の世界に閉じ込める、ドールハウス型の魔道具です。対象が主人公となり、自己の意識はその世界のキャラクターとして自動的に動きます。性的に繋がるまで夢から覚めることはありません。なお、対象が嫌だと思うことは出来ない仕様になっています。使用は一回きりです。また、夢の記憶は当人のすけべ度が高いほど残ります。-魔法性具百科より引用-』
64
お気に入りに追加
304
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる