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悪役令嬢は王妃なんです!

第41話 コンテストの結果が出ましたのよ!

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 それから季節は流れ、コンテストの第一次考査が終わり、第二次考査が終わり、最後の第三次考査が発表されました。
 第三次考査に残った作品は、リコネル商会の書店に本が並ぶのです。
 つまり、この考査に残った小説作家と名乗れる彼らは、リコネル商会で働く切符を手に入れたと言って過言ではありません。
 無論、別の仕事をしている方の場合は、籍だけをリコネル商会に置くことも可能で、その場合は給料は支払われませんが、リコネル商会で小説を書けば売ることも、その時に小説の売り上げ分の支払いが来る権利を得られます。
 無論、歩合は取られますが良心的な価格設定でした。
 絵本作家も同じくコンテストが開かれており、こちらも第三次考査まで終わっており、三次まで残った方々は先ほど語った通りです。


 少しだけ違うのは、挿絵部門の方です。
 今回残った挿絵部門は3人で、挿絵部門の方が狭き門のようですね。
 ただし、彼らはそれに見合った仕事と給料が支払われることになります。
 挿絵部門の3人は、各小説の挿絵、絵本の挿絵を担当することになり、尚且つプロの画家として活動を許されるのです。
 そして、プロの画家として認められた3人には、時代の流れと共に食うに困らないように、手厚い保証もありました。
 それは、絵画教室をリコネル商会の一室で開くことが可能であるという特典です。


 では、小説家の方には保証がないのか? と言われるとそうでもありません。


「誰にでもスランプとはあるものですわ」
「分かります、スランプって辛いですよね」
「何もせずボーっと過ごしたくなるよね」
「絵でもそうだよ、スランプなんて付きものさ」
「「ですよねー」」


 リコネル商会では、スランプ休暇と言う物が存在しました。
 とは言え、数年単位は困りますが、それでも無理のない範囲で、最高の小説、童話、そして絵をかいて貰うための制度です。
 更に言うと、小説なり童話なり絵なり、ファンはつくもので、ファンからのお手紙などは、手紙担当の従業員により中身を確認の後、作家に手渡されます。
 リコネルにも沢山の手紙が届いており、毎回その束を見るたびに、作家とは凄いものだと感心しました。


 そして――今回発足された『セクシー小説部門』ですが、こちらも絵と同じく狭き門のようですね。
 世に大量のエロ小説が流れることを防ぐ意味合いもあるようですが、どんなエロであっても差別なく、それでいて激しすぎる内容はもっとオブラートに包むように指示が出され、書籍化するようです。

 見えるエロより、隠れた所にこそエロさを感じる私としては、エロの良さは人それぞれだなと改めて人間の欲望と言うものを見た気がします。


『見えるエロより隠されたエロ……良きじゃな』
「無機物でも、そう思われるなんて不思議ですわ」
『無機物扱いするでない! 我とて感情はある!』
「ところでクリスタル様は男性ですの? 女性ですの?」
『両方じゃ』
「両生類ですわね」
『ファ!?』


 クリスタルを両生類扱いするリコネルに、クリスタルは目を見開いて固まりましたが……。


『両方あって両方美味しい、お得じゃな』
「そっちですの?」
「どっちですか?」


 思わず突っ込みを入れてしまいました……。
 ここ最近、二人の会話についていけなくなりつつあるのは、私が小説をあまり読んでいないからでしょうか?
 ここはひとつ、時間を作って第三次まで残った小説を読まねばなりませんね……エロ以外。


「取り合えず、第三次まで残った作家さんたちを集めた親睦会もリコネル商会でする予定ですの。わたくしも出席しますわ」
「一国の王妃でありながら会長ですからね、その辺りは必要な事でしょう」
「ええ、それに親睦会が終われば、園から連絡が来ている、魔力操作が安定した方々を花屋で雇い入れる為の面接もしなくてはなりませんもの、まだまだゆっくりは出来ませんわね」
『お子はまだか!』
「「まだです」」
『ジュリアスよ! 今度我のおすすめの小説をプレゼントしてやろう! それで燃えるのじゃ! 激しくファイアーじゃ!』
「元王都を激しくファイアーした人が何を仰ってるんですか」
「全くですわ」


 私たちの突っ込みなど気もしないクリスタルに呆れ果てて突っ込んでしまいましたが、私としても色々と復興が落ち着いたら、そろそろ本格的に……とも思っています。
 ですが、インフラなども麻痺してしまった元王都を元の状態とまではいかずとも、最低限のラインまで持っていけるまで、まだまだ時間はかかりそうです。

 今暫く、忙しい日々が続きそうですが、それもこれも民の為。守るべき国民の為です。
 私やリコネルが頑張らねば誰が頑張ると言うのでしょうね。


「園への視察も定期的にやっておりますし、老人院の方はリコネルが訪問してくださったんですよね?」
「ええ、孤児院や教会だけではなく、老人院も見過ごせない場所ですもの。レゴラスさんはお元気そうでしたわ」
「それは良かった……」
「困っていることはないかと聞いたりもしたんですけど、皆さん現状で満足はしてらっしゃるようですの。ただ、元気なうちに老人院に入った事で暇を持て余しているのも事実みたいで、園で子供たちの面倒を見るボランティアくらいはしてあげてもよろしいという話をちらほら聞きましたわ」
「確かに、園に預けられる子供が増えましたからね」
「ええ」


 そうなのです、リコネル商会の働き方が、園芸店及び花屋を通して周囲に広がり始めた頃から、園を利用する家が増えてきて、只今第二の園を作っている最中なのです。
 無論、この園は焼け落ちた元王都でも建設は進んでおります。
 子供の安全、子供への学業は、将来この国にとって大きな宝となることでしょう。


「けれど、園までは老人院は遠いでしょう?」
「そうですね……では、動ける方々でシフトを組んで頂いて、園までの送迎馬車を用意しましょうか。そうすることでお年寄りにも生き甲斐が出来るのは喜ばしい事ですし」
「素敵な案ですわ!」


 目を輝かせて口にしたリコネルに、私は優しく微笑み彼女の頭を撫でました。
 私にできることと言えば、本当にこのようなお手伝いだけで申し訳なく思いますが、最大限に色々出来るように何とか動きたいものですね。


「早速、明日にでも老人院に向かって話をしてきますわ!」
「あまり無理をなさらないようにして下さいね」
「無論ですわ!」


 生き生きとした表情でリコネルは微笑み、本当に嬉しそうに「今後の案を考えなくては!」とメモ帳とペンを取り出し構想に入りました。
 こうなると、クリスタルでも声をかけることはしません。


『こうなったリコネルにちょっかいを出すと、アイスピックにハンマーを追加してクリスタルを刺してくるからのう……』


 小さく呟いたクリスタルの言葉に、以前玄関で響いた雄叫びを思い出したのでした。


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