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71 スタンピードの所為であちらこちらで素材枯渇の危機。

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「さて、ユリが風呂に入ったらワシ等も寝るかのう……。明日からは暫しの別れじゃエンジュたちよ」
「寂しくなるが……必ず戻って来てくれ」
「ふぁっふぁっふぁ! 言われずとも戻ってくるわい」


 こうしてドマも風呂から上がり、最後に私とお爺ちゃん達がお風呂に入ってから上がって早々に眠りについたけど、お爺ちゃんが居ない生活か……きっと寂しいだろうな。
 そんな事を思いながら眠りについた。

 ――翌朝。
 先に皆がガーネット二号店に行ってから私とドマは戻ってきた馬車に乗り込み城へと向かう。
 流石にお伺いを立てる暇が無かったが、お爺ちゃんの言葉はある意味絶対なので大丈夫だろう。
 城に到着すると慌てた兵士が直ぐに陛下に伝えるように走り回り、暫くしてから「執務室のほうへ」とノロンがやってきて案内された。
 ノロンは急いできてくれたようだが、朝の訓練をしていたのか汗びっしょりだ。


「御免なさいねノロン、急いできてくれたんでしょう?」
「大丈夫です! ご案内出来るのは嬉しいので!」
「ふぉっふぉっふぉ! ノロンは素直な子じゃのう」
「ありがとう御座います!」


 こうして到着した先からは別の兵士に連れられ奥へと入り、陛下の執務室のドアをノックすると私たちは中へと入った。
 既に数名の大臣と宰相、そして陛下が今後の話をしていた様で、軽く挨拶してからお爺ちゃんが口を開いた。


「昨日鉄の国サカマル帝国が、宝石の国ダイヤ王国の魔物討伐隊と鉱石の国ノシュマン王国の魔物討伐隊とは別行動をすると聞いたのじゃが、相違ないか?」
「はい。鉄の国サカマル帝国は金鉱山を先に奪い返すのが得策と考えているようです」
「アホウじゃのう。これから言う事を良く聞いて考えよ。金鉱山にはドラゴンが住み着いておるわ。そのドラゴンを倒すには、元シャース王国に沸いたダンジョンを一つずつ潰して力を削ぐしかない。全てのダンジョンを潰す必要はないが、ある程度の間引きは必要。さて、そんな事も知らず鉄の国サカマル帝国がドラゴンを真っ先に倒そうとすればどうなるかは……想像に難くないじゃろう?」
「なるほど……数あるダンジョンの強さがそのドラゴンの強さに匹敵すると」
「そう言う事じゃ。大中小とあるダンジョンの内、小規模ダンジョンは殲滅したと聞いたが?」
「はい、小規模なのはダンジョンを生成する魔核を壊しております」
「残っておるのは中規模及び大規模ダンジョンじゃな?」
「はい。冒険者も投入しての戦いとなっておりますが、現状厳しい戦いとなっております」
「ふむ。そこでじゃダイヤ国王よ。ワシとタキはある事情で、魔物討伐隊に一時的に所属してダンジョン撃破の手助けをしよう」


 この一言に大臣及び陛下は驚き、陛下など立ち上がって「本当ですか!?」と叫んだ。


「しかし、一つ条件がある」
「何なりと」
「我らが主、ユリとその家族をダイヤ王国で保護せよ。決して鉄の国サカマル帝国に渡してはならぬ。よいな?」
「ユリ殿とその家族と言うと……エンジュやその家族と言う事でしょうか?」
「鉄の国サカマル帝国では、【サクラギ】一族を今も必死に探していると聞く。相違ないな?」
「はい、サクラギ一族とは圧倒的な強さを誇り、何より持っているスキルもとても強く、蛇を払うとさえ言われている神に等しい一族と聞いております」
「ユリは別世界から来たが、ユリの夫、ユリの弟二人は、その【サクラギ】じゃ」


 ざわりと震える部屋。
 ドマを見て陛下は驚き、「サクラギ一族」と呟くとドマは目を閉じて反応を返さなかった。


「何故一夜にして滅び、そしてサクラギ一族が自害したのか、理由は定かではない。じゃが、そうせざるを得ない事態が鉄の国サカマル帝国にはあると言う事じゃ。ユリの大事な家族が【サクラギ】一族の血を持っていたとしても、決して口にせず、そしてこの国に必ず留まるようにせよ。欲しても決して許すな。かの国は病を抱えておる」
「畏まりました」
「うむ、約束を違えばこの国を亡ぼす事もしかと頭に入れて置くといい。これは命令じゃ」
「「「「は!!」」」」
「魔物討伐隊隊長と冒険者を纏める者を呼べ。後はワシが説明する」
「直ぐに!」


 そう言うと陛下たちはバタバタと動き出し、魔道具にて魔物討伐隊隊長と冒険者を纏めるギルマスのドナンさんだろうか? その二人を呼び出す事となった。
 すると――。


「さて、ここから先はワシの仕事じゃて。ユリとドマはガーネットに帰るとええ。なに、怪我人が出たとしてもタキもおるしなんてことはない。被害を最小限に抑えて何とかするわい」
「お爺ちゃん、皆をよろしくね」
「うむ。ワシの庇護はお主とその家族がこの国にある間は庇護をする。金鉱山に住み着いたと言うドラゴンも、そう強い訳ではない。まぁ、早く手を打った方が早いがな」
「分かったわ。気を付けて。帰ってきたらケーキパーティね?」
「ほほほ! 楽しみじゃわい!」
「デキルダケ パパット オワラセチャウヨ! ブンレツー」


 そう言うと二匹のタキが私とドマの頭に乗り、「「ヨロシクネー」」と声を掛けている。


「ブンレツシテモ イツモトイッショ ダカラ キニセズニネ」
「分かったわ」
「じゃあ先に帰っておくといい。陛下もよいな?」
「畏まりました。ユリ殿、ドマ殿、暫しレジェンド様をお借り致します」
「はい、よろしくお願いします」


 こうして私とドマはお爺ちゃんとタキをギュッと抱きしめてから部屋を後にした。
 今後はタキの分裂した二匹とドマが私の護衛となる。
 いや、一匹はラフィに預けるが……。


「オジイチャン ツヨイカラ シンパイナイヨ」
「そうね……でも寂しいとだけ伝えてくれる?」
「イイヨ」


 そう言うと私たちはノロンに案内され馬車に乗ってガーネット二号店へと向かう。
 朝の間はラフィの仕事を手伝いつつ自分の仕事もする為だ。
 到着すると既に仕事は開始されていて、二階に上がるとロザリオスさんが掛けて来た。


「良かったわ、おはようユリちゃん」
「おはようございます」
「悪いけど、冒険者ギルドと商業ギルドから直ぐに来て欲しいと言う要望なの。どちらも素材が足りないそうなのよ。まずは冒険者ギルドだけど全体的に素材の枯渇。あと商業ギルドは金の枯渇らしいわ」
「「あ――……」」
「直ぐに行って貰える?」
「タキちゃんの内一匹はラフィと一緒に居てくれる?」
「ラフィト オルスバン シテクルネ」
「ボクハ ユリノ オテツダイネ!」


 そう言って一匹のタキちゃんがラフィちゃんの元へと向かい、私たちはその足でまずは冒険者ギルドへと向かう。
 アイテムの納品もあった為、到着するとドナンさんがやって来た。
 あれ、ドナンさん呼び出されたのでは?


「ああ、そっちの冒険者のまとめは元シャース王国にいたダンがしている。ダンも書記じゃなくて冒険者を率いて戦うリーダーを今はしているな」
「なるほど」
「で、悪いが2万個ずつは出せるか? 金は直ぐには出せないが」
「各種2万……頑張ります」
「倉庫は二つ使ってくれ」
「分かりました」


 こうして案内された倉庫に、タキちゃんと一緒に銅鉱石と鉄鉱石を2万個生成していく。
 時間的に急がねば昼に二号店に戻れない可能性があるが、只管生成して作って行く。


「あっちこっちアイテムの枯渇ね……」
「鉱石の国ノシュマン王国と鉄の国サカマル帝国から僅かしか入ってこなかったんだ。どの国も自国の兵士や冒険者の装備を整えるで手一杯でな」
「なる程です」
「出来れば明日も来て欲しい。2万あっても直ぐに枯渇するんだ」
「分かりました。明日もお伺いします。昼でも良いですか?」
「ああ、これだけあれば朝までは持つだろう。すまねぇな」
「いえいえ」
「そう言えばあのフェアリードラゴンどこ行った?」
「あ――……あの子レジェンドモンスターでして」
「は!?」
「これから魔物討伐隊と一緒に活動するそうです。暫くの間ですが」
「そりゃまた……確かに魔物討伐隊も冒険者も楽にはなるだろうけど……大丈夫か?」
「お爺ちゃんを怒らせることをしなければ大丈夫かと」


 そう言って苦笑いしつつ次は鉄鉱石だ。
 タキちゃんも一緒に『ものまね』で出してくれる。
 一人1万個ずつなら昼までになんとかなりそうだけどギリギリかな。


「今は鉱石も足りなきゃ回復アイテムも足りてねぇ状態だ。少しは改善すると良いんだがな」
「タキ カイフクマホウ ツカエルカラ ダイジョウブダヨ」
「タキもレジェンドモンスターなんです」
「何時までもベビーだと思ったら……。まぁ回復魔法使えるのはありがてぇ!」
「ホメテ ホメテー」
「鉄の国サカマル帝国がいない隙間は埋めてくれると思いますので」
「期待してるって伝えて置いてくれ」
「イイヨー」


 こうして昼過ぎには何とか2万個ずつアイテムを出し切り、その足で戻ったんだけど昼には間に合わず。
 私とドマとタキちゃんは仕方なく開発部にて【お取り寄せ】でサンドイッチと飲み物を出して食べることになったのだけど、午後から直ぐに商業ギルドに向かう事になり――。
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