上 下
45 / 106

45 私を得ようと動き出す貴族たち。その為には護衛は必須のようでして……。

しおりを挟む
 スキルごとに広い庭に並び、製作分けされて移動し、何時もの面子は慣れている様子で仕事をし、エンジュさんとお父様は慣れていないそちらを教えに行かれました。
 見本は作ってあるので大丈夫でしょう。
 また、各所リーダーを用意した為、リーダーの指示に従ってアイテムを作る事にもなる。
 こういうのって大事よね。
 そんな事を思いつつ二階に上がると――。


「ねぇユリちゃん大変なの。ああ、今日は皆さんお忙しいのよね?」
「どうしたんですかロザリオスさん」
「それがお城からの依頼が凄く殺到してるの。特に財務部から至急眼鏡を80人分ですって。それから万年筆も80人分至急欲しいとの事で。その他にも眼鏡と万年筆は1000単位で来てるわ」
「うわぁ……始動は今日からですよ?」
「そうよね。後、腕時計が欲しいというのも財務省から連絡来てるわ。取り敢えず希望者を募ったら100人希望者が居たそうで、一先ず100人分だそうよ」


 どうやら沢山宣伝してくれたのだろう。
 それにしても今日始動なのに多すぎる!! 嬉しいけれど!!
 問題は直ぐに作れるかどうかなんだけど……。


「それらの期限はいつですか?」
「財務部は数が出来次第で、他は纏まって出来たらでいいそうよ。期限は設けてないみたいだけど、出来るだけ早くとは書いてあるわね」
「分かりました。今日は指導に忙しいと思うので今日の終わりに伝えましょう」
「そうね」
「あの、お客様です」
「お客様? 前もってご連絡はないけど?」
「それが貴族の方で……」
「う……」
「私が対応するわ。ユリちゃんは隠れていなさいな」
「ええ」


 そうロザリオスに言われ事務室に入り聞き耳を立てていると、会計士のウィスパーさんがメモ用紙とガラスペンを手に「会話書き出します」と言ってくれた。そして――。


「なんだね、事務員と話をするつもりはないんだがね?」
「申し訳ありません。前もってご連絡があれば良かったのですが、本日皆様出払っておりまして。わたくしがお伺いします」
「ッチ。これだから庶民の店は嫌なのだ。まぁいい。私はドナージュ伯爵家のゾイドだ。うちも商売をしていてね。どうだろうか? ここの連中に販売権を譲るように言ってくれ」
「販売権ですか?」
「そもそも付与師ごときが特許を取っているのが気に入らん。この店で最も売れている物三つを買い取ってやろうと言ってるんだ」
「はぁ……」
「後はレアスキルを持つ娘がいるんだろう? 情報屋で買ったから確かな情報の筈だ。ほら、着物を着た娘がいるだろ。あの娘を渡せ」
「はぁ……人身売買ですか?」
「そうだな、そうとも言うな!」
「あの方は止めた方が宜しいかと……国王陛下もお忍びで会いに来られる程のお気に入りですので、断頭台に連れて行かされるか、お家お取り潰しか……」
「言わなければ分からん。金で庶民とは動くだろう?」
「なるほど、そう言うお考えなのですね? 良い事をお聞きしました。撤回はなさらない、と言う事ですね?」
「その通りだ。娘が居れば連れて帰ろうかと思ったがいないなら仕方ない。また来るとしよう」


 そう言うと階段を下りていく音が聞こえホッとしていると、ウィスパーさんは聞いていた内容を走り書きしており、それを机に戻って清書し始めるとドアがドン!! と開いて青筋立てたロザリオスさんがツカツカと入ってきてギュッと抱きしめられた。


「全く、あんな貴族がいるから嫌われるのよ、信じられない!!」
「隠れていて良かったです」
「今度受付にお伺い無しの客は帰って貰うように伝えるわ」
「そうですね。オープンにしている開発部も鍵が無いと入れないようにしましょうか」
「それが良いわね」
「清書出来ました。国王陛下にいつでも出せます」
「至急案件の判子は?」
「押しました」
「即連絡を」


 そう言うとウィスパーさんは手紙を遠隔でやり取りできる魔道具に入れ込み、手紙はスッと消えて行った。
 それから十分後、国王陛下から手紙が届き「速やかに対処し、処罰する」と来ていたのでホッとする。
 こういう時後ろ盾じゃないけど、お偉いさんと繋がっていると助かるわね。


「今頃兵士を送りつけてるかもね。ドナージュ伯爵家のゾイドっていうおっさんの家」
「ザマァないですね」
「悪意察知にはビンビン来ておったが、あの手の輩は国王からの言葉の方が効くじゃろうて。ワシ等では手加減が難しい相手じゃったからのう」
「コロシチャウ」
「「「デスヨネー」」」
「取り敢えずこの手の輩はこれからも出てくると思ってたの。だから早く結婚進めてたのよ」
「そうだったんですね」
「自分では気づいてないだろうけど、金の成る木だからね? ガーネットの殆どの商品は貴女のアイディアから生まれてるんだから!」
「分かりました……」


 確かにそう言われると金の成る木ではあるのか、これから気を付けよう。
 取り敢えず開発部の改造をお願いする為に商業ギルドに行ってくると伝えると、「貴方の護衛人も頼んできてね」と言われビックリしたが、「人間の護衛一人は必要だ」と言われた。


「事情は私からオーナーとエンジュさんに話して来るから」
「わ、分かったわ」
「商業ギルドマスターには此方から先ほどの内容送っておきます」
「お気をつけて」
「はい!」


 こうして馬車に乗り込み商業ギルドへと向かう事になり、到着するや否やギルマスが飛んできた。
 険しい表情をしており、「急いで中へ」と言われると私は急ぎ応接室へと入る。
 ドアは静かに閉められ、どうしたのだろうかと思っていると――。


「貴族連中が【ガーネットのユリ】を探してるらしい。一人になった所で連れて帰ろうとする者も今後出てくるだろう。先ほどガーネット二号店からやり取りの手紙が来たが、アレが毎日続くようになる可能性もある」
「うわぁ……」
「この事はギルドを通して陛下にお伝えするが、暫く護衛を付けた方が良いな。貴族用の護衛になるが、一人心当たりはある」
「あるんですか?」
「ただ、少々問題がある人物なんだが……腕は確かだ。仕事のサポートもしっかりするだろう」
「どの様な方なんでしょう?」
「名はサクラギ ドマ。赤い瞳に黒い髪の十五の少年だが、武器なら何でも使う対人用の護衛だな」
「あら、私と同じ苗字なんですね」
「そうなのかい? ただ、相手に対してやり過ぎるタイプなんだ。動き出すと止まらないというか」
「それで人を殺したりは?」
「しない。が、当たり一面血の海になるので、前に雇っていた貴族が怖がって解雇してきたんだ」
「なるほど」
「ケガシテモ ダイジョウブダヨ カイフクスルシ」
「そう言えばタキは回復出来たわね」
「シナナケレバ ダケド」


 同じサクラギと言う名字はちょっと親近感が湧く。
 それに、雇えたとしても一人が精々だわ。


「分かりました、取り敢えずその子を呼んで来て貰えます?」
「分かった、ギルドの三階にいるから呼んで来て貰うよ」


 そう言うと職員に話しをし、暫くすると長い髪を一つに纏めた黒い髪に赤い切れ長の瞳の少年が入ってきた。
 私を見ると護衛対象と分かったのかぺこりと頭を下げてレイルさんの元へと向かう。


「この方が護衛対象でしょうか?」
「そうなるね。煩い貴族連中が騒いでるんだ。ちょっと守って欲しくてね」
「なるほど。今回はどのような契約となるのでしょうか?」
「それは雇い主が決めていいよ」


 そう言われても困るのだが、取り敢えず少し不安げに揺れる瞳が可哀そうだったので、出来るだけ酷い事はしたくない。


「人を護衛として雇うのが初めてですので分からずですが……。それに護衛人とバレないように、偽装もしたいですね。同じ黒髪ですから作務衣とか着物とか着てもらえます?」
「懐かしい……。着れます」
「じゃあ、出来れば私の事を姉みたいに慕って貰えます?」
「姉……ですか?」
「遠方からやって来た弟……ならば相手も一瞬怯んでくれたらいいなと」
「姉弟揃って連れていかれるよ」
「いや、その案は意外と良いかも知れんぞ」
「お爺ちゃん」


 そう声を掛けてきたのはお爺ちゃんだ。
 お爺ちゃんは私と彼を見てウンウンと頷いた後、口を開いた。


「お前さん、ドマと言ったかのう」
「はい」
「鉄の国サカマル帝国から姉を心配してやって来た弟、と言う事にして護衛するんじゃ。寧ろお主たちは同じ髪色で同じ肌色じゃからそっちが自然じゃ」
「「「なるほど」」」
「それに、鉄の国サカマル帝国では、男兄弟は姉や妹をとても大事にする。多少行き過ぎた事をしても、【お国柄故に仕方なかった】と言い訳が出来る」
「オモテムキハネ」
「なるほど、姉弟と言うのがそう言うドマの強さの隠れ蓑になるのね」
「うむ。ドマ、お主はどう思う」
「姉様……ですか」
「そうなりますね、ドマ」


 そう言って微笑むと、ドマは頬を染めて「いいですね、これ。俺、姉がいるのが夢だったんです」と口にした。
 しかし――。


「でもドマ。私は婚約者が既にいますので、その方とその家族に反抗的な態度は駄目ですよ?」
「はい。あの、頑張りますので本当に気に入ったら、本当の姉弟の契約をして貰えないでしょうか?」
「え!?」


 思わぬ言葉に私が目を見開くと、ドマの目は真剣で、レイルさんはうんうんと頷いてから口を開いた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

udonlevel2
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・

マーラッシュ
ファンタジー
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

処理中です...