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16 朝からやってきたシャース王国第二王子のノヴァ様に言葉の散弾銃が飛ぶ。
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穏やかに過ごしていたある日、ふと思い出したことがあった。
――そろそろノヴァ王太子がダイヤ王国に着いたんじゃないかしら?
随分と放置していたけど恩人でもあるし……そう思い手紙を書いて送ると、直ぐに返事が返ってきた。
現在やはりダイヤ王国の王室内にて生活中らしく、付与魔法を勉強している最中らしい。
軽く「頑張ってくださいね」と送り、ダンさんへの返事も返す。
どうやら戦況は悪くなる一方で、鉄などの鉱石がストップしたそうだ。
だがそれは相手国も同じで、お互いじり貧の戦いが続いているのだと言う。
召喚された勇者たちはどうしたのかと聞いたところ、彼らは人が死ぬシーンを見て戦うのが怖くなってしまったのだとか。
まぁ、当たり前の反応かな? と私は思う。
人を殺してヘラヘラしてたら頭が可笑しいもの。
そんなのサイコパスよ。
「ふぅ……使えない人間はどっちだったのかしらね」
そう言って手紙を仕舞い、そろそろ夕飯の準備をと思って立ち上がろうとすると、再度手紙が届いた。ノヴァ様だった。
近々店に行きたいがと言う話で、「ダリルシェイドにある【ガーネット】に居りますが、居ない時も御座います」と返事を返すと「明日の朝会いに来る」と返事が来た。
明日、明日!?
そう思ったが、来るものは仕方ない。
「何のおもてなしも出来ませんが、それで良ければどうぞ。でも午後は仕事です」と返すと「朝だけ会いに来る」と言う事だったので「お待ちしております」と送り、それ以上返事は書かなかった。
そして、明日シャース王国の第二王子が会いに来ると言う話を夕飯中にすると、皆固まっていたが私は平然と食事をしていた。
すると――。
「ユリは……第二王子と会ったことが?」
「ええ、初めてこの世界に来た時に出て行かされる時、色々手を尽くして下さったのも第二王子ですし」
「そうだったのか……」
「見知らぬ土地に放り出されたら誰だって不安ですけど、まぁ仕方ないですよね」
「シャース王国の王太子は馬鹿だと有名だな」
「ええ、俺も聞いたことがあります」
「確かに馬鹿かも」
「不敬かもしれないが、そう言う話は此方でも城でですら聞いたな」
「第二王子はどのような方なんですか?」
「理性的だと思いますよ。でもそれ以上でもそれ以下でもないですね」
そう答えるとエンジュさんが聞きにくそうに……「好きと言う感情は?」と聞いてきたので即答で「無いです」と答えるとホッとしていた。
しかし、何だろうか。ちょっとムッとした。
「エンジュさん?」
「ん?」
「仮にも貴方は私の婚約者ですよ? もっと堂々として下さい」
「う!」
「確かに助けられましたけど、それ以上でもそれ以下でもないと言ったでしょう? 私は浮気をしないタイプなんです。そこは間違えないで頂きたい!」
「は、はい!!」
「ははははは! エンジュ、しっかり尻に敷かれているな!」
「姉上のお尻なら嬉しいですよね? ですよね、兄上?」
「父上にセンジュ……そういうことを言うな」
「私のお尻では不満だと?」
「最高だと言っておこう!」
顔を真っ赤に染めて親子丼を食べるエンジュさんに、やっとホッと息を吐けた。
こんなに清らかな心の男性って早々いないのに、全く何で自信がないのかしら?
確かにノヴァ様は優しくて理性的かもしれないけれど、清らかって意味では違うのよね。
多分私は心が綺麗で真っ直ぐな人が好きなんだわ。
「まぁ、ユリは心が清らかで真っ直ぐな男性が好みじゃからのう」
「アルジ ソウ カンガエテタヨネー」
「もう……心を読まないで教えないで」
「ふぉっふぉっふぉ! エンジュがちーっと邪な考えもっておっても、本質は変わらんから好きなんじゃろうて」
「邪って!」
「男ゆえの問題じゃよなー?」
「はいはい、男性のそう言った性的な面は私にはサッパリです。余り考えないようにしてるので。ここ男所帯ですし」
「なんか、すまんな」
「すみません」
「俺は恥ずかしい……」
そう言いつつもしっかり親子丼はお代わりして食べてくれたので満足だけれど、洗い物はいつも通り頼んでお茶を飲む時間は憩いの時間……。
今日もある程度の予約数は捌けたので、胃への負担も少なくなった。
二人が一生懸命仕事をしている姿は見ていて幸せだし、やはり仕事を頑張る男性は魅力的だと思う。
まぁ、子育てに協力的な男性も魅力的だけども。
そんな事を考えながらお風呂も入ってゆっくり休んだ次の日、本当に朝から王家の馬車に乗ってノヴァ様がやって来た。
無論その頃には仕事中だったので良かったけれど。
「やぁ、ユリ。久しぶりだね」
「お久し振りですノヴァ様」
「此処が君の就職先か」
「ええ、嫁ぎ先でもあります」
「なんだって?」
素早い疑問への言葉。
この人やっぱり腹黒いから、助けてくれたのは嬉しいけど好みじゃないな~。
「ですから、嫁ぎ先ですってば」
「もう……婚約したのかい?」
「しました」
「でも指輪はしてないじゃないか」
「今度作って貰うんです」
「ユリ……。まさかそんなに早く婚約するとは思って無かったよ」
「そうですか? とっても好みの家族が住んでますし、夫となる方もとってもタイプだったんです。もう行くしかないでしょう!」
「そ、そうか……そうか……。ではその婚約した相手に会わせてくれ」
「此処にいますが?」
と、私たちの会話を聞いていたのか、エンジュさんがスッと出て来て私の隣に立った。
ノヴァ様は目を細くしてエンジュを見た後、「なるほど……」と声を出していたけれど、まぁそこは余り気にしない。多分鑑定はしただろうな、私ですらしてないのに。
ちょっと嫉妬しそうになる。
「君が魔物討伐隊の……【魔物たちの悪魔】か」
「懐かしい呼び名ですが、俺はもう彫金師なので」
「うん、確かに彫金スキルもそれなりに高いね。でも、それで俺の大事なユリを任せられるかと言うとなぁ……」
「俺の大事な……ですか?」
んん? 何やらピリッとしたぞ。
というか、ノヴァ様に大事と言われるとは思っても無かったな。
「私はエンジュとそのご家族が大事ですが」
「む」
「うむ、ユリは俺と俺の家族が大事だよな」
「そうね、皆優しいしよく食べるし、一緒にいて凄く気が楽よ」
「ユリ、俺とでは気は休まらないのかな?」
「流石に身分が違いますからね」
「それはそうだが……」
「諦めてください」
「くっ!?」
「それで、お話は他には何か?」
そう笑顔で聞くとノヴァ様はガックリと肩を落として頭を抱え「いや、そうか、うーん」と答えつつ私を見た。
正直王子の嫁とかぶっちゃけていうと、無い。
私の人生プランの中には絶対に発生しない。
エンジュさんとの未来は想像できるけど、ノヴァ王子との未来は想像できない。
あのクソ王太子にこき使われて終わる未来しかない。
絶対イヤ。
「そうだな、君と一緒に来た異世界人だが……正直使いモノにならないと皆が嘆いている」
「そうですか。私には関係ありませんけど」
「確かに君の事を石ころ呼ばわりしたのは兄上達だが」
「実際どっちが役に立つかは、ノヴァ様が一番お分かりかと。でもシャース王国に帰る気は一切ありません」
「……」
「無いです♡」
「そうか……」
ガックリ項垂れる王子に笑顔で答えて置くと、エンジュさんがどや顔していたのが可愛かった。
そもそも王族と言えど、婚約者のいる相手を奪おうと言うのならこちらも戦争だ!
徹底抗戦してやる。
「君との未来は」
「無いです。全く価値も無いですし可能性0ですね」
「価値がない……可能性0……」
「助けて頂いた恩はありますが、それだけです。私、居心地の良い所じゃないと生きていけないタイプなので。貴方と結婚したら多分3日もせず自害しますね」
「そこまで……」
「是非、こちらで素敵な恋が出来ると良いですね!」
そこまできっちりと言い放つと、流石に諦めたのか苦笑いして起き上がった。
中々タフな精神の持ち主のようだ。
「いや、俺も色々と君にしつこくしたのもあるだろう。今回の事は忘れてくれ」
「はい」
「君とはいい関係でいたい。友人として」
「そうですね、友人としてなら」
「エンジュ、君もそれでいいかい?」
「ええ、ただの、友人としてなら。シツコイ友人でしたら切らせますが」
「ははは……はぁ」
「次の恋を応援しておりますノヴァ王子」
「うん、ありがとうエンジュ。君はユリより優しいね」
そう言うと萎れた葉っぱみたいな感じで馬車に乗って帰って行った。
此処まで徹底して言わないと、私の未来どうなっていたか分からないもの。
石橋は叩いて壊すくらいはしないとね!
「ユリ」
「はい?」
「俺は、君を一生大切にすると誓う」
「ええ、大切にして下さいね?」
そう言って笑顔で返すと、エンジュさんはこの上なく幸せそうに胸を張って前を見つめていた――。
――そろそろノヴァ王太子がダイヤ王国に着いたんじゃないかしら?
随分と放置していたけど恩人でもあるし……そう思い手紙を書いて送ると、直ぐに返事が返ってきた。
現在やはりダイヤ王国の王室内にて生活中らしく、付与魔法を勉強している最中らしい。
軽く「頑張ってくださいね」と送り、ダンさんへの返事も返す。
どうやら戦況は悪くなる一方で、鉄などの鉱石がストップしたそうだ。
だがそれは相手国も同じで、お互いじり貧の戦いが続いているのだと言う。
召喚された勇者たちはどうしたのかと聞いたところ、彼らは人が死ぬシーンを見て戦うのが怖くなってしまったのだとか。
まぁ、当たり前の反応かな? と私は思う。
人を殺してヘラヘラしてたら頭が可笑しいもの。
そんなのサイコパスよ。
「ふぅ……使えない人間はどっちだったのかしらね」
そう言って手紙を仕舞い、そろそろ夕飯の準備をと思って立ち上がろうとすると、再度手紙が届いた。ノヴァ様だった。
近々店に行きたいがと言う話で、「ダリルシェイドにある【ガーネット】に居りますが、居ない時も御座います」と返事を返すと「明日の朝会いに来る」と返事が来た。
明日、明日!?
そう思ったが、来るものは仕方ない。
「何のおもてなしも出来ませんが、それで良ければどうぞ。でも午後は仕事です」と返すと「朝だけ会いに来る」と言う事だったので「お待ちしております」と送り、それ以上返事は書かなかった。
そして、明日シャース王国の第二王子が会いに来ると言う話を夕飯中にすると、皆固まっていたが私は平然と食事をしていた。
すると――。
「ユリは……第二王子と会ったことが?」
「ええ、初めてこの世界に来た時に出て行かされる時、色々手を尽くして下さったのも第二王子ですし」
「そうだったのか……」
「見知らぬ土地に放り出されたら誰だって不安ですけど、まぁ仕方ないですよね」
「シャース王国の王太子は馬鹿だと有名だな」
「ええ、俺も聞いたことがあります」
「確かに馬鹿かも」
「不敬かもしれないが、そう言う話は此方でも城でですら聞いたな」
「第二王子はどのような方なんですか?」
「理性的だと思いますよ。でもそれ以上でもそれ以下でもないですね」
そう答えるとエンジュさんが聞きにくそうに……「好きと言う感情は?」と聞いてきたので即答で「無いです」と答えるとホッとしていた。
しかし、何だろうか。ちょっとムッとした。
「エンジュさん?」
「ん?」
「仮にも貴方は私の婚約者ですよ? もっと堂々として下さい」
「う!」
「確かに助けられましたけど、それ以上でもそれ以下でもないと言ったでしょう? 私は浮気をしないタイプなんです。そこは間違えないで頂きたい!」
「は、はい!!」
「ははははは! エンジュ、しっかり尻に敷かれているな!」
「姉上のお尻なら嬉しいですよね? ですよね、兄上?」
「父上にセンジュ……そういうことを言うな」
「私のお尻では不満だと?」
「最高だと言っておこう!」
顔を真っ赤に染めて親子丼を食べるエンジュさんに、やっとホッと息を吐けた。
こんなに清らかな心の男性って早々いないのに、全く何で自信がないのかしら?
確かにノヴァ様は優しくて理性的かもしれないけれど、清らかって意味では違うのよね。
多分私は心が綺麗で真っ直ぐな人が好きなんだわ。
「まぁ、ユリは心が清らかで真っ直ぐな男性が好みじゃからのう」
「アルジ ソウ カンガエテタヨネー」
「もう……心を読まないで教えないで」
「ふぉっふぉっふぉ! エンジュがちーっと邪な考えもっておっても、本質は変わらんから好きなんじゃろうて」
「邪って!」
「男ゆえの問題じゃよなー?」
「はいはい、男性のそう言った性的な面は私にはサッパリです。余り考えないようにしてるので。ここ男所帯ですし」
「なんか、すまんな」
「すみません」
「俺は恥ずかしい……」
そう言いつつもしっかり親子丼はお代わりして食べてくれたので満足だけれど、洗い物はいつも通り頼んでお茶を飲む時間は憩いの時間……。
今日もある程度の予約数は捌けたので、胃への負担も少なくなった。
二人が一生懸命仕事をしている姿は見ていて幸せだし、やはり仕事を頑張る男性は魅力的だと思う。
まぁ、子育てに協力的な男性も魅力的だけども。
そんな事を考えながらお風呂も入ってゆっくり休んだ次の日、本当に朝から王家の馬車に乗ってノヴァ様がやって来た。
無論その頃には仕事中だったので良かったけれど。
「やぁ、ユリ。久しぶりだね」
「お久し振りですノヴァ様」
「此処が君の就職先か」
「ええ、嫁ぎ先でもあります」
「なんだって?」
素早い疑問への言葉。
この人やっぱり腹黒いから、助けてくれたのは嬉しいけど好みじゃないな~。
「ですから、嫁ぎ先ですってば」
「もう……婚約したのかい?」
「しました」
「でも指輪はしてないじゃないか」
「今度作って貰うんです」
「ユリ……。まさかそんなに早く婚約するとは思って無かったよ」
「そうですか? とっても好みの家族が住んでますし、夫となる方もとってもタイプだったんです。もう行くしかないでしょう!」
「そ、そうか……そうか……。ではその婚約した相手に会わせてくれ」
「此処にいますが?」
と、私たちの会話を聞いていたのか、エンジュさんがスッと出て来て私の隣に立った。
ノヴァ様は目を細くしてエンジュを見た後、「なるほど……」と声を出していたけれど、まぁそこは余り気にしない。多分鑑定はしただろうな、私ですらしてないのに。
ちょっと嫉妬しそうになる。
「君が魔物討伐隊の……【魔物たちの悪魔】か」
「懐かしい呼び名ですが、俺はもう彫金師なので」
「うん、確かに彫金スキルもそれなりに高いね。でも、それで俺の大事なユリを任せられるかと言うとなぁ……」
「俺の大事な……ですか?」
んん? 何やらピリッとしたぞ。
というか、ノヴァ様に大事と言われるとは思っても無かったな。
「私はエンジュとそのご家族が大事ですが」
「む」
「うむ、ユリは俺と俺の家族が大事だよな」
「そうね、皆優しいしよく食べるし、一緒にいて凄く気が楽よ」
「ユリ、俺とでは気は休まらないのかな?」
「流石に身分が違いますからね」
「それはそうだが……」
「諦めてください」
「くっ!?」
「それで、お話は他には何か?」
そう笑顔で聞くとノヴァ様はガックリと肩を落として頭を抱え「いや、そうか、うーん」と答えつつ私を見た。
正直王子の嫁とかぶっちゃけていうと、無い。
私の人生プランの中には絶対に発生しない。
エンジュさんとの未来は想像できるけど、ノヴァ王子との未来は想像できない。
あのクソ王太子にこき使われて終わる未来しかない。
絶対イヤ。
「そうだな、君と一緒に来た異世界人だが……正直使いモノにならないと皆が嘆いている」
「そうですか。私には関係ありませんけど」
「確かに君の事を石ころ呼ばわりしたのは兄上達だが」
「実際どっちが役に立つかは、ノヴァ様が一番お分かりかと。でもシャース王国に帰る気は一切ありません」
「……」
「無いです♡」
「そうか……」
ガックリ項垂れる王子に笑顔で答えて置くと、エンジュさんがどや顔していたのが可愛かった。
そもそも王族と言えど、婚約者のいる相手を奪おうと言うのならこちらも戦争だ!
徹底抗戦してやる。
「君との未来は」
「無いです。全く価値も無いですし可能性0ですね」
「価値がない……可能性0……」
「助けて頂いた恩はありますが、それだけです。私、居心地の良い所じゃないと生きていけないタイプなので。貴方と結婚したら多分3日もせず自害しますね」
「そこまで……」
「是非、こちらで素敵な恋が出来ると良いですね!」
そこまできっちりと言い放つと、流石に諦めたのか苦笑いして起き上がった。
中々タフな精神の持ち主のようだ。
「いや、俺も色々と君にしつこくしたのもあるだろう。今回の事は忘れてくれ」
「はい」
「君とはいい関係でいたい。友人として」
「そうですね、友人としてなら」
「エンジュ、君もそれでいいかい?」
「ええ、ただの、友人としてなら。シツコイ友人でしたら切らせますが」
「ははは……はぁ」
「次の恋を応援しておりますノヴァ王子」
「うん、ありがとうエンジュ。君はユリより優しいね」
そう言うと萎れた葉っぱみたいな感じで馬車に乗って帰って行った。
此処まで徹底して言わないと、私の未来どうなっていたか分からないもの。
石橋は叩いて壊すくらいはしないとね!
「ユリ」
「はい?」
「俺は、君を一生大切にすると誓う」
「ええ、大切にして下さいね?」
そう言って笑顔で返すと、エンジュさんはこの上なく幸せそうに胸を張って前を見つめていた――。
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