上 下
62 / 66
第四章 これからも世紀末覇者で心乙女な君と一緒に!

第63話 【古代人設定】をスンナリ受け入れて事実にする叔父と、そして一時の別れ

しおりを挟む
 俺が古代人設定であることを思い出した時は既に遅し。
 ムギーラ王は僕とアツシ叔父さんを見てこう切り出した。


「カズマ殿から古代人だと聞いております。神々の島は古代文明が発達しているのでしょうか?」


 そう切り出したムギーラ王。
 俺がハッとした時には遅かったが、アツシ叔父さんは動揺することなく「間違いなく古代人ですね」と口にする。


「とは言っても、滅びゆく古代を捨ててこちらにきている訳ですが」
「滅びゆく古代を捨てて……」
「カズマは両親の事がある。だからこそ、古代を捨てきれないのでしょう」
「なるほど」
「古代文明に興味がおありなら、お見せできますよ。神々の島への道を一度だけ作りましょう」


 思わぬ言葉に僕も驚いたがムギーラ王もダリュシアーンも驚き、マギラーニ宰相も驚いたが、「是非に」と伝えると何もない壁に扉を作り上げた。
 その能力も桁違いな訳だが、ドアを開けるとムギーラ王、ダリュシアーン、マギラーニ宰相、そして僕も一緒に行く事となった。


「繋がって居る場所はジュノリス大国の俺の作ったリゾートですが」
「聞いたことありませんな」
「まぁ、夢のある場所ですよ。少しなら案内します」


 そう言って中に消えていくと、僕も中に入り、次々意を決して入ってきたようだ。
 目の前に広がる風景は日本の家の中と左程変わらず……呆然としてしまう。


「叔父さんコレ……」
「後でカズマの家にも作ってやろうか?」
「うん」
「ほおお……ここは?」
「ここは王族、俺の家族がリゾート地に来たら住んでる家ですね。まずは家の中をどうぞ見て回ってください」


 そう言うと三人は驚きの声を上げつつ「このコンロ魔石が使われておりませんぞ!」や「この白い箱は涼しい上に物が腐っておりません!」等、冷蔵庫を見て驚いたりしていた。
 お風呂でも感嘆な声が上がり、あらゆる場所で驚きの声が上がりつつも、一通り見たムギーラ王たちを連れて外に出る。
 そこは――まさに日本。
 ムギーラ王たちは固まり、呆然としている。
 車こそは走ってはいないが、道路は整備され店は近代的だ。


「軽く歩いてから戻りましょうか?」
「いや……ワシは足が動かん」
「俺もです……」
「はわわ」
「ははは! これで、俺とカズマが古代人と言うのが解ったでしょうか?」
「「「確かに」」」


 こうして陛下たちと一緒に何とか歩いて貰って部屋に入り、ドアからムギーラ王国に入ると「あれが古代文明……」と口にして黙り込んだ。
 扉を消したアツシ叔父さんは「古代文明もどきですがね」と口にしたが、ムギーラ王たちの耳に入ったかは分からない。


「確かに……古代人なのですな」
「ええ、その通りです」
「カズマ殿の言葉を疑っていた訳では無いが、実際目にすると……」
「俺はカズマの家に拠点の入り口を作ったので、何時でもお忍びでカズマに会いに来れますけどね。可愛い甥っ子とは仲良くしたい」
「是非、このムギーラ王国とも親しくしていただきたいものですなぁ……」
「そうですね。聞けばカズマが相談役だとか。この子はとても聡明だ。俺は特殊なスキルがある為にあのように古代文明もどきを作れるが、カズマにはそのスキルはない。ただ、国をよりよい未来へと繋げるスキルはある。それをどうぞ、うまく生かしてムギーラ王国が発展するのを祈っております」


 そうアツシ叔父さんが伝えると、三人は強く頷き「カズマ殿、よろしく頼む」と深々と頭を下げた。


「僕に出来る事を少しずつ……ですが」
「という事は、マリリンの子、マリシアは古代人の子という事に」
「そうなりますね」
「俺も子沢山で、子供たちは神々の島にある四季の国の王家に嫁いだり婿に行ったりしているが、とても大事にされている。カズマも負けじと子沢山になるだろうな」
「そうですね。とはいっても、子供たちには自由に恋愛して貰って愛する人と結婚して欲しいと願ってますが」
「婚約はなぁ……色々面倒だからな」


 そうしみじみと伝えると、アツシ叔父さんもまた「一夫一婦なのか」と聞かれ、無論YESだと答えていた。


「妻も古代人なんですよ」
「「「おおおおおお」」」
「なので、俺達の子供は生粋の古代人となりますね」
「それはまた凄い……」
「カズマもたまには奥さんと子供連れてジュノリス大国にきて、ゆっくりするといい」
「ありがとう叔父さん」
「あの家と同じのを作ってやろうか?」
「うん、是非お願いしたい」
「分かった。一室を後で貸してくれ。俺もくつろぎに行きたいしな」
「はい」


 この話のお陰で、後々アツシ叔父さんに会いにムギーラ王とダリュシアーンが度々来るようになるのだけれど、何せレディー・マッスルのリーダーの家ともあれば暗殺等出来るはずもなく、道中の行き帰りだけ気をつければいいという不思議な状況になって行くのだけれど、それはまだ先の話で――。


「そいえば、砂糖などが足りていないと聞いていますが、宜しかったらシュノベザール王国と取引しては? シュノベザール王国でしか手に入らない甘味とは、中々魅力的ですよ」
「おおお、それは是非お願いしたい」
「では、弟に手紙を出しておきましょう。ですが運ぶのが大変ですね」
「そこは専用の扉を特別につけて差し上げます」
「有難い……。是非お願いしたい」


 こうして、シュノベザール王国との交易も今後は盛んになりそうだ。
 ホッと安堵すると、アツシ叔父さんに頭を撫でられ、「良い国だな」と言われ笑顔になれた。

 ――その後、厨房近くの部屋にシュノベザール王国との扉が出来て、会談する時は手紙のやり取りをしてから中に入るという約束の元、扉には王とそれに準ずるダリュシアーンとマギラーニ宰相が入れる設定にしておいたようだ。
 それなら安全だろう。


「これから各国々と仲良くしていきたいものです」
「ええ、是非我々とも仲良くしていただきたい」
「ええ、是非に」


 こうして会談は終わり、一端アツシ叔父さんとシュライを連れて家路に帰ると、赤の扉がジュノリス大国。青の扉が僕専用とまではいかないが、あちらの世界の家の中が作られ、ソファーや家具と言ったものは叔父さんのスキルである『ネットスーパー』で全て賄い、とても広々とした空間が出来た。
 しかも二階建てで二階には部屋が沢山ある。


「ここでも子育てしやすいようにな」
「助かります」
「欲しいのあったら言えよ。ネットスーパーで色々取り揃えてやるから」
「有難いけど、甘えすぎだよ」
「親孝行出来なかったんだ。叔父らしく頼りにして欲しいな」
「ふふ、分かった」


 こうして幾つものあちらの高級御菓子なども用意され、適度に来ては補充してくれることになった。
 有難い。


「じゃあ、後は手紙でやり取りしつつ」
「うん、何時でも遊びに来てね」
「ああ」
「宝石の国ダイヤの私の店とも繋げて欲しかったなぁ」
「ついでだし、シュノベザール王国とダイヤの国のガーネットの店とも繋げておくか。所謂古代人の集会って事で」
「あはははは! それはいいね」
「専用の部屋もあるんだ。そこも作っておくよ」


 こうしてダイヤの国と、シュノベザール王国への扉も出来て、ますます楽しみが増えた。


「今度店に買い物に行きますね」
「ええ、是非観光もして欲しいわ」
「シュノベザール王国にも是非観光に」
「ありがとうございます」


 そう言うと三人はそれぞれ帰っていったが、最後に父と母と握手を交わして帰っていったアツシ叔父さんは、どこか晴れ晴れとしていた。
 そんな大変な事態も終わった頃、実は別の場所では違う問題が発生していたのだ。
 それは――ジャックさんとマイケルさんにある。
 じつは二人には……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下と私の攻防戦

えっちゃん
恋愛
彼氏だと思っていた相手にフラれた最悪な日、傷心の佳穂は考古学者の叔父の部屋で不思議な本を見付けた。 開いた本のページに浮き出てきた文字を口にした瞬間、突然背後に現れた男によって襲われてしまう。 恐怖で震える佳穂へ男は告げる。 「どうやら、お前と俺の心臓が繋がってしまったようだ」とー。 不思議な本の力により、異世界から召喚された冷酷無比な竜帝陛下と心臓が繋がってしまい、不本意ながら共に暮らすことになった佳穂。 運命共同体となった、物騒な思考をする見目麗しい竜帝陛下といたって平凡な女子学生。 相反する二人は、徐々に心を通わせていく。 ✱話によって視点が変わります。 ✱以前、掲載していた作品を改稿加筆しました。違う展開になっています。 ✱表紙絵は洋菓子様作です。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

異世界で突然国王さまの伴侶に選ばれて溺愛されています

波木真帆
BL
美しい宝石のついた指輪を握りしめ生まれてくる次代の王は必ずその指輪がぴったりと嵌まる者を伴侶に選ばなければ国に災いが起こる。それがリスティア王国で大切に守られ続けているしきたりだ。 リスティア王国の王子・ルーファスも色鮮やかでこの世に二つとない美しい宝石のついた指輪を握りしめ生まれたが30になった今も生涯の伴侶は現れない。ルーファスの伴侶はいつになったら見つかるのか? 生涯の伴侶を待ち続ける美形な国王さまと突然異世界に連れてこられてしまった美少年大学生のイチャラブハッピーエンド小説です。 R18には※つけます。

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

【R18】翡翠の鎖

環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。 ※R18描写あり→*

モブだった私、今日からヒロインです!

まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。 このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。 そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。 だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン…… モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして? ※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。 ※印はR部分になります。

【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない

かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。 女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。 設定ゆるいです。 出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。 ちょいR18には※を付けます。 本番R18には☆つけます。 ※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。 苦手な方はお戻りください。 基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

処理中です...