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第三章 結婚して新たな人生のスタートには波乱がつきもので!?

第55話 直ぐに返り咲くことは可能。だが今は堪える時が始まる……

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 ――マリリンside――


 一連のティティリーとの騒動を語る事になった兄は、怒りを出来るだけ沈め、的確に、一元一句間違えないようにティティリーとのやり取りを伝えた。
 無論【ミセス・マッチョス】の面々は怒りの形相だったが、我は不思議と落ち着いていて顎を撫でていた。
 そして――こう切り出したのだ。


「ふむ、つまり第一位に返り咲くか、【ドゲン・モナカ】を食ってしまえばいいのだな?」
「一位に返り咲くか、あのギルドを……食うのか?」
「いや、物理的には食わないさ。ただ、様子を見る。その間に我々に出来る事を進める」
「どういうことだいマリリン」


 我がここまで冷静何て可笑しい。
 そう思ったが、自然と口から言葉が出ていたようだ。


「その為にはまず、ミセス・マッチョスの面々とうちが提携する必要があるが」
「うちは構わないよ」
「ああ、また前のような地獄になるか、それともマリリンが守ってきた今を取るかと言われたら……ね」
「マリリンを取るに決まってるだろう?」
「ありがとう……感謝する!」


 ビックリするくらい呆気なく、ミセス・マッチョスの面々はレディー・マッスルとの提携に応じてくれた。
 ミセス・マッチョスのギルドは3人ギルドではあるが、全員がSランク。
 すると――。


「実はアタシ達も下の冒険者たちを育てている最中でね」
「その子らにも、近々【ミセス・マッチョス】に入って貰う事になってるんだよ」
「そうだったのか」
「レディー・マッスルとの提携なら喜んでさせて貰うよ。そっちでないと手に入れられない錬金術のアイテムや武器防具は沢山あるからね」
「ちゃんと金を払わせるから、今の自分たちに合う武器とか買わせてあげてくれよ」
「無論だとも! だが数字や文字を教える事にもなるが」
「そこはアンタ達、レディー・マッスルの信条を受け入れるよ」
「冒険者でなくなった場合、アタシ達の手伝いでもして貰おうかね」
「そいつは良いね!!」
「「「あはははははは!」」」


 驚くほどすんなりと彼女たちは冒険者同士として提携してくれることになった。
 無論、タダでとは言わないのが彼女たちだ。
「もっと身近でマリリンとカズマを見たい」と言う案はカズマも我も笑顔で頷いて了承した。


「まず、ミセス・マッチョスの面々との提携はこれで安心だな。直ぐに発表すれば間違いなく一位に返り咲くぞ? 言わないのか?」
「……時を待つ」
「時を?」


 我の言葉に兄とマイケルは怪訝な顔をしたが、カズマは違った。


「現第一位の悪評が広まってからの返り咲きですか」
「うむ、流石カズマ! よくぞ分かったな」
「その上で、打ち捨てられる冒険者の保護。及び勧誘ですね?」
「その通り。辛い思いをさせてしまうが、それが一番手っ取り早い。それに……ティティリーは一つ間違いを犯した」
「と言うと?」


 兄の言葉に我とカズマは顔を見合わせてから二人を見ると――。


「我がレディー・マッスルのギルドマスターと、ムギーラ王国相談役のカズマを怒らせたという間違いを犯したと言ったのだ。我々は質が悪いぞ?」
「そうですね……。僕も国王にどう進言するか……フフフ」


 例え世界第二位に落ちたとしても、国が認めている冒険者ギルド、国が頼りにしているのは、言わずもがな【レディー・マッスル】というギルドだ。
 これを覆さねば、本当の意味で一位とは言えないのである。


「確かに規模的には世界一位になれたとしても、国が認めなければ、国が頼りにしなければ実質の一位とは言えないのですよ」
「――そうか、【王家からの依頼】」
「今や各国の王家は、レディー・マッスルに依存している所もあります。そこに新参者が現れても、直ぐには動かないでしょうね。まずはムギーラ王国の王家がどう動くかを判断材料にするでしょう」
「だが、そのムギーラ王国の相談役が……レディー・マッスルのギルドマスターの夫となると……」
「ましてや、先ほどの【冒険者は捨て駒】と言う発言を副リーダーがしているという現実を国王が知った時、どう判断なさるか……」
「「「「確かに……」」」」
「更に言えば、ミセス・マッチョスと提携を開始したと冒険者ギルドに連絡を入れればどうなるのかは、想像に難くない」


 Sランク冒険者の多いギルドを、世界第二位にしておく冒険者ギルド等、どこにも存在しないのだ。
 つまり、今だけのイキリという奴だろう。
 イキリたいのならイキればいい。
「我こそは世界第一位のギルドである」と自慢したいならすればいい。
 輝かしい第一位たるギルドが、国の依頼を受けられないと言う現実を知った時、彼らはどう動くだろうか。


「国の依頼は国とギルドの信用問題あってこその事。今までレディー・マッスルは民の為国の為に尽くし評価も高い」
「他の我々のようなギルドも、レディー・マッスルを模範とする所が多いからな。【ミセス・マッチョス】ですらそうだ。育てている冒険者の第二の人生まで考えて動く事はしている」
「だが……件のギルドはその真逆」
「冒険者ギルドがその事実を知っていて第一位にしたのなら、責任問題は冒険者ギルドにまで及ぶぞ」
「そのカギを握るのが……カズマか」


 そう兄たちが語ったのち、カズマをじっと見つめると夫は「そうなりますね」と口にして微笑んだ。


「彼らは僕にあまり興味が無いのでしょう。それとも、僕の功績を甘く見ているのかもしれませんね」
「もしそうだとしたら、あちら側は随分と視野が狭いようだ」
「確かにマリリンが率いる、レディー・マッスルを世界第二位に、今は、落としたかもしれない。短くも華やかな世界第一位を喜ぶのは結構ですが、徹底的に教育して文字を覚え、計算ができてそれなりの貴族相手への知識もあり、王室の決まり事にも精通しているとなると……流石に件の第一位では太刀打ちできないでしょうねぇ」
「だからこそ、現実を突きつけてやる時間が必要なのだ」
「レディー・マッスルがする事は、今は静観。耐え時って奴だね」
「そうなるな」


 そう我が伝えると、兄とマイケルは暫く考え込んだ末「マリリンのいう通り、今は静観の時期か……」と苦い顔をしていたが、カズマが「いつも通りで結構です。ただ、打ち捨てられる冒険者がいれば助ければいいだけの事」と告げ、我たちは頷き合った。


「じゃあ、アタシ達【ミセス・マッチョス】も、徐々にこちらに籍を動かそうかね」
「そうだね、ギルド用の家も借りないといけないし」
「ギルド用の家が見つかるまでは、我が屋敷にて受け入れよう」
「そうだね、僕とマリリン二人ではとても今は広すぎるから」
「「「尊い!!」」」


 ――こうして、我たちは静観しつつも動き出したのである。
 苦痛は伴うものの、助けられる命を助けつつ、これこそが【レディー・マッスル】だと知らしめるためにも、苦難で苦痛を感じる時間を、我慢する時が来たのだった――。
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