上 下
52 / 66
第三章 結婚して新たな人生のスタートには波乱がつきもので!?

第53話 日本でのハネムーンに胸躍らせる!(下)

しおりを挟む
 ――マリリンside――


 実の所、我は悩んでいた。
 カズマとは夜は愛し合っているが、中々子に恵まれない事に。
 家族も欲しがっている、夫であるカズマだって我が子を待ち望んでいる。
 だが、妊娠する気配が無かったのだ。
 故に……カズマが提案してきた「子宝温泉」というのに縋りたくなった。
 温泉に入りながら、本当にこの湯が子宝に効くのだろうかと不安に思いつつも、我は縋るしかなかったのだ。

 もし妊娠しにくい身体と言うのなら、それを直す薬を飲めば済む話だが……女性としてそれは酷な話でもあった。
 出来れば自然に授かりたい。
 そう思いながらも、ついつい後回しにしてしまった我が子への思い。
 無論出来るのなら今すぐ妊娠したい所だが、そう上手くはいかないだろう。


「この異世界の子宝の湯が、我に効いてくれればいいが」


 カズマが出て行ったあと、ついぼやいてしまった。
 彼との子は願ってもない、是が非でも欲しい存在なのに……そう思いながらも、表情は暗い。
 だが、そんな顔を見せる訳には行かぬ!!
 気合を入れ直して着替えて愛する夫の元へと向かい、夜はバーベキューで舌鼓を打ち、こちらの世界では牛肉や豚肉、鶏肉と食べる為に育てているのだと聞いて驚きながらもしっかりと味わって食べた。
 すると――。


「このコテージの子宝の湯はね、源泉かけ流しなんだよ」
「凄いですね」
「たまたま空いてたけど、何時もなら満員御礼のコテージさ」
「「へぇ」」
「ここの湯に入って子宝に恵まれたって人は、俺が知る限りじゃ100%だな」
「「そんなに!?」」
「なんでも、おまじないがあるそうだ」


 おまじない……一体どんなものだろうか?


「寝る前に温泉のお湯を欲しい子供分だけ飲んで寝るんだそうだ。それがご利益あるらしいぜ」
「寝る前に欲しい子供の分だけ温泉の湯を飲む……か」
「マリリン試してみるかい?」
「そうだな! 是非試してみたい!!」
「お湯の出てる龍の口からお湯を取って飲んでみな。みんなそこかららしいからな」
「分かった!」


 こうして片付けまでして帰っていったオーナーと言う人に我たちは別れを告げ、風呂場にコップを持って向かい、ドバドバとドラゴンの口から出ているお湯をコップに入れて5杯程飲んだ。
 ――所詮呪いだ。
 ――効けば御の字。
 だが……子沢山を夢見るカズマの為にも、沢山の子を産みたいのだ。
 フウ……と溜息をつき、もう2杯飲むと我は風呂場を後にした。

 そしてその夜はハッスルした訳だが、翌朝、もう一度お風呂に入り体を清めて温め、風呂から出て大きく背伸びをしてから身支度を済ませる。
 昨夜から体がかなり火照っている気がしたが、きっとこの異世界での気温に慣れていないせいだろう。

 朝ごはんを食べてから車に乗り込み、まずは、おるごーるなる物を見に行く。
 大きな施設の中に今日行く二つは入っているらしく、車を停めてから中に入り、カズマと手を繋いで施設内を歩いていく。

 そして【オルゴールの館】と書かれた趣きある店の中に入ると、木のいい香りがして……色々な箱や陶器、そして見た事も無いものまで並んでいた。
 これが、オルゴールと言う奴だろうか?


 カズマが小さな試供品と書かれたオルゴールを指さし、精密に出きた中身に驚きながらもネジを回して貰い、奏でる音に驚く。


「ほおおおおお……」
「色んな音楽があるんだ。これなんかどう?」


 そう言って聞いた二つの音楽は、一つは何となく物寂し気で、もう一つはこれから次第に未来を明るくさせる音楽だった。
 物悲しいより、これから明るくなる未来が欲しい。
 そう我は思い「こちらの音楽の方が好きだ」と告げると、オルゴールを探すことにした。
 そして、重厚な箱で出来たその音楽のオルゴールの音色に気に入り、カズマがプレゼントしてくれることになった。


「頑丈そうだし、これならマリリンがネジを回しても早々壊れないかな?」
「だといいんだが」
「あとはマリリンが選ばなかった奴で、王様に渡す奴と、ミセス・マッチョスに渡すのを買おう」


 こうして王様には陶器で出来た素晴らしい出来のオルゴールを。
『ミセス・マッチョス』の3人には同じ音楽と見た目のを3つ選んで購入した。


「ニコニコ現金払いで」とかカズマは言っていたが、店員は驚きつつ札束を数えていて、この程度で驚くとは……と我は驚いた。
 我が選んだのがたかだか50万のもの。
 陛下には100万、ミセス・マッチョス達は各自30万の贈り物だった。
 持って帰ると告げると重厚な程に手厚く包装されていたが、店を出て直ぐアイテムボックスに入れ込んだ。

 次に世界のビールが飲めるという場所に向かい、そこでハンドルキーパーなるモノを頼んでからカズマもお酒を楽しんだ。
 昨日の夜から火照っている体が更に火照りそうだった。


「このドイツビールはうまいな。ガツンと来る重さがたまらん」
「いいですよねぇ。僕はベルギーも割と好きです」
「軽めなビールだな。我はドイツの方が好きだ。この太めのソーセージにも合うしな」
「僕はナッツと食べるのも好きだよ」


 そう語り合いつつ食べては飲んで、久しぶりに二人だけの時間を過ごした。
 何時も屋敷やギルドにいると、何かしら仕事だなんだと我やカズマに人が群がるが、この世界では二人だけで、それが幸せで、何よりも贅沢で。


「子が出来たら……また行くところが変わるんだろうか」
「そうだね……。子供を連れてあちこち行けるようになるのはまだ先だろうけど、行く場所は大人が行く場所じゃなくて、子供が楽しめる場所が基準になるだろうね」
「ふふっ そうか」
「きっとマリリンは、最高に良い母親になれるよ」


 本気でそう思っているのだろう。
 我の頭を撫でつつそう語った愛しの夫に、我は照れ笑いをしながら自分の腹を撫でた。
 嗚呼、この中に命が宿っていれば……。


「マリリン、何時か必ず来てくれると信じて、二人で待とう」
「カズマ」
「大丈夫、不安そうな顔をしないで……」


 その言葉に我は頷き、ドイツビールを巨大ジョッキで飲み干したのであった。
 そして夜は無性に肉が食べたくて肉のバーベキューを食べつくし、その日の夜もハッスルし、翌日は――見た事も無いホテルに泊まり、驚きを隠せないまま呆然としつつも、一夜を共に過ごし、翌日カズマの実家に帰ると火照りは収まっていて……。


「なんだか不思議な感じだ」
「マリリンどうしたの?」
「いや、なんでもない。気のせいだろう」
「よし、じゃあ僕たちも帰ろうか」
「ああ、あちらの世界に」


 ――こうして、様々なお土産を持って義理の両親に別れを告げ、鏡を通ってあちらの世界へと戻っていったのである。
 すると……。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

異世界から来た皇太子をヒモとして飼うことになりました。

おのまとぺ
恋愛
ある日玄関の前に倒れていた白タイツコスプレ男を助けた森永メイは、そのまま流れで一緒に暮らすことになってしまう。ロイ・グーテンベルクと名乗る男は実は異世界から来た本物の王子で、その破天荒な行動は徐々にメイの生活を脅かしはじめーーーー 「この俺の周りをウロつくとは大層な度胸だな」 「殿下、それは回転寿司です」 ◆設定ゆるゆる逆転移ラブコメ(予定) ◆ヒーローにときめくようになったら疲れている証拠 ◆作者の息抜き用に書いてるので進展は遅いです 更新時間は変動します 7:20

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。 【あらすじ】 イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。 しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。 ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。 そんな一家はむしろ互いに愛情過多。 あてられた周りだけ食傷気味。 「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」 なんて養女は言う。 今の所、魔法を使った事ないんですけどね。 ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。 僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。 一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。 生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。 でもスローなライフは無理っぽい。 __そんなお話。 ※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。 ※他サイトでも掲載中。 ※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。 ※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。 ※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

対人恐怖症は異世界でも下を向きがち

こう7
ファンタジー
円堂 康太(えんどう こうた)は、小学生時代のトラウマから対人恐怖症に陥っていた。学校にほとんど行かず、最大移動距離は200m先のコンビニ。 そんな彼は、とある事故をきっかけに神様と出会う。 そして、過保護な神様は異世界フィルロードで生きてもらうために多くの力を与える。 人と極力関わりたくない彼を、老若男女のフラグさん達がじわじわと近づいてくる。 容赦なく迫ってくるフラグさん。 康太は回避するのか、それとも受け入れて前へと進むのか。 なるべく間隔を空けず更新しようと思います! よかったら、読んでください

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

処理中です...