上 下
47 / 66
第三章 結婚して新たな人生のスタートには波乱がつきもので!?

第48話 難癖付けられて黙って居られる僕ではない

しおりを挟む
 流石にマギラーニ宰相までが僕の味方をしだすと、貴族男性たちは最早諦めた様子で近くから去っていく。
 ザマァないなと思いながらも、マギラーニ宰相はマリリンに向き合った。
 すると――。


「今日の装いのマリリンのドレスは、カズマ様からか?」
「無論ですわお父様」
「こうしてみれば、筋肉は凄いが普通のご令嬢に見えなくもないな」
「マリリンは筋肉があっても無くてもマリリンですよ。だからこそ愛したのです」


 そう僕が告げると女性陣からは黄色い悲鳴が上がった。
 今や『ミセス・マッチョス』の本のお陰で僕とマリリンの言葉はあらゆる面で影響力がある。


「今やお前たちは時の人だ。全く、ジャックがミセス・マッチョス達と連携しているから尚の事だな」
「そうですね。でも、夫婦円満の秘訣は、お互いを尊重し、愛し合う事ですからね、マリリン」


 そう笑顔で告げればマリリンも強く頷き、スリットの入ったドレスを着て美しい姿のマリリンは、僕のいた世界の化粧品で顔を美しく保ち、慈愛に満ちた顔をしている。


「カズマは大抵の事ならば我の事を理解し、そして賛成してくれるし、共感もしてくれる。それは何よりも尊いのだと我は知っている」
「そうか、実にいい夫に巡り合ったのだな……。お前には家で苦労かけたというのに」
「フッ……。その苦労があったからこそ、この様に素晴らしい夫と出会えたことを、誇りに思う!」
「マリリン……」
「お父様も、もう私の事は気にしなくていい。私はもう子供ではない。これからはカズマの護衛をしながら、彼を守り、慈しみ、愛し合って進んでいくのだ」


 そうマリリンが笑顔で伝えると、マギラーニ宰相は涙をハンカチで拭い、「そうか」と口にして笑顔を見せた。
 その様子を見守っていた周囲の人々も涙を拭っており、仲違いしていた親子がやっと前を向けたのだと理解したらしい。


「では、我はカズマの護衛にあたりつつパーティーを楽しもう。カズマ、何か欲しいものはあるか?」
「では、二人で」
「カズマ!!」


 会場がザワリと揺れる。
 そこには複数人の男性陣が怒りの形相で立っており、マリリンは拳を握りしめた。


「貴様の、貴様たちの所為で俺達は各々婚約破棄されたり離婚されたり踏んだり蹴ったりだ!! たかだか愛人を作ったくらいで!!」
「それがいけなかったのではないですか? 女性たちをまるでモノのように、アクセサリー感覚のようにしている男性には、丁度いい【お仕置き】だと思いますが」
「我々はこのままでは領地経営どころか再婚すら出来ない!」
「妻や婚約者ある身でありながら、その相手を大事にしなかったのでしょう?」
「「「それは……」」」
「馬鹿馬鹿しいな!! 実に馬鹿馬鹿しい!! 自業自得ではないか!」


 マリリンの咆哮のような声が響き渡る。
 彼女の身体からは怒りの覇気が流れていて、男性陣は立つことも出来ず腰を抜かして倒れ込んだ。
 一部はお漏らしもしている様だ……。たかだかこの程度の覇気くらいで嘆かわしい。
 マリリン及びジャック、マイケルから別件による他人への怒りの際、致死量の覇気を食らっても、お漏らしだけはしなかった。意識は失ったが。


「マリリン、折角の美しい装いと美しい顔が台無しだよ」
「むう。しかしだな!!」
「たかだかこの程度の覇気でお漏らしする男性なんて、余程肝が小さい癖に自分は大いなる人間だとハリボテを作っていた証拠。嘆かわしいことですね。離れていった女性は真面目だったんでしょう」
「それもそうだな! カズマは我と兄とマイケルの致死量の覇気を食らっても、意識は失ったが漏らしはしなかったからな!!」
「そんな、漏らすなんて人生において恥ずかしい事はしないよ。僕も大人だし、なにより世界最強の冒険者ギルド、レディー・マッスルのリーダーの夫だからね」
「ははは! それもそうだな!」


 クスクス笑いつつ僕が倒れている面々に目を向けると、最早顔色を真っ青にして僕たちを見ていて……僕は笑顔で歩み寄る。


「女性とは賢いのですよ。本能も男性よりも優れているのかも知れないとさえ思う程に。……ご自分たちの力量の無さ、そして女性を馬鹿にした態度が今のご自分を作った……と、言う事実を誰かの所為にしないと面子が保てませんか?」


 そう問いかけると面々は震えつつ顔を俯き、それでいて漏れた下半身を恥じているようにすら見えた。


「その程度の男性では女性は逃げて当たり前です。遊び相手の女性なら下町で見つかる程度かも知れませんが、貴族たるもの、そのような真似はなさいませんよね?」
「そ、それはそうだ」
「無論だとも……」
「貴族女性に相手にされないのは誰の所為です?」
「「「「……」」」」
「返事がありませんね? 理解しているんでしょうか?」


 そう僕が表情の消えた顔で伝えると、男性陣は「ヒ!!」と悲鳴を上げて、一人が「我々の所為です!!」と頭を下げた。


「そう、あなた方の責任ですよね? これ以上マリリンを患わせたくもないんですよ。僕にとって愛しい妻であり愛しいたった一人の愛した女性です。これ以上我々に何かを言ってくるのでしたら、それ相応に対処しますよ?」
「「「も、申し訳ありませんでした……」」」
「いえいえ、では、お帰りになって結構です。その姿では到底パーティーを楽しむ余裕などありませんでしょう?」


 そうクスリと笑うと男性たちは這いながら、それでいて立ち上がれるものは走って外に飛び出していった。
 ザマァないな。


「カズマッ……素敵すぎるっ!! もう、我をこれ以上惚れさせてどうするつもりだ!?」
「どうするつもりかは……」


 そう言って「耳を貸して?」と告げるとマリリンは屈んで耳を貸してくれて、一言僕が告げると顔を真っ赤に染めて鼻血を気合で止めていた。
 その様子が可愛くてニッコリ微笑むと、「愛してるよ、僕のたった一人の奥さん」と伝えて手を取り、僕たちは飲み物や食べ物のあるスペースへと向かったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

奴隷落ち予定の令嬢は公爵家に飼われました

茗裡
恋愛
此処は乙女ゲームに似た世界。 婚約破棄されて平民に落とされる悪役令嬢のルナリア。 生粋のお嬢様であるルナリアは平民として生きていけるわけもなく人買いに捕まり奴隷として売られる。 ゲームのシナリオはそうなるはずだった。だが、婚約破棄されたルナリアの前に現れたのは攻略対象の姉。転生者だという攻略対象の姉に飼われることになったルナリアだが、彼女が仕える主人は攻略対象だった。 侍女侍従を育成する育成科に通う為、通っていた学園に戻る事となってしまう。 元婚約者やヒロインとは違う学科に通うことになるが、同じ学園内の為、目の敵にされてしまう。 それもこれも、ヒロインの本命はルナリアの元婚約者では無かったから。ヒロインの本命はルナリアの主人だった!? 本命キャラを攻略せんと色仕掛けで迫るヒロイン(ヒドイン)だが……?(第一章) 夏休みが明けたら物語は第二部へと移行する。 隣国からの恋の障壁として現れる予定だった留学生達。 生徒会役員も変わり心機一転。 ルナリアに対する害意は沈静化したものの、ルナリアとディオンの間に新たなる問題が発生する。留学生達も加わり刺激的な日々が二人を待ち受ける(第二章) !注意! 見切り発車且つ殴り書きです。 矛盾や隙間をなるべく埋めるようにはしてますが、設定が緩く甘い部分もあるかもしれません。 息抜きで思い立った内容を殴り書いた作品です。 読み手を選ぶ作品かもしれませんので、以上を了承の上ご高覧ください。 ※いじめの表現がありますのでご注意下さい。 ※小さな布石がパラパラと落ちているので後から回収されたり回収され無かったり、一つ一つの言動に意味を持たせてたり持たせてなかったり……書いている時は本人布石になると思ってないので分からんぞって思ったら聞いて下さい。"気紛れ"で答えるかも?

見捨てられた令嬢は、王宮でかえり咲く

堂夏千聖
ファンタジー
年の差のある夫に嫁がされ、捨て置かれていたエレオノーラ。 ある日、夫を尾行したところ、馬車の事故にあい、記憶喪失に。 記憶喪失のまま、隣国の王宮に引き取られることになったものの、だんだんと記憶が戻り、夫がいたことを思い出す。 幼かった少女が成長し、見向きもしてくれなかった夫に復讐したいと近づくが・・・?

恩恵沢山の奴隷紋を良かれと思ってクランの紋章にしていた俺は、突然仲間に追放されました

まったりー
ファンタジー
7つ星PTに昇格したばかりのPTで、サポート役をしていた主人公リケイルは、ある日PTリーダーであったアモスにクランに所属する全員を奴隷にしていたと告げられてしまいます。 当たらずとも遠からずな宣告をされ、説明もさせてもらえないままに追放されました。 クランの紋章として使っていた奴隷紋は、ステータスアップなどの恩恵がある以外奴隷としての扱いの出来ない物で、主人公は分かって貰えずショックを受けてしまい、仲間はもういらないと他のダンジョン都市で奴隷を買い、自分流のダンジョン探索をして暮らすお話です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...